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4話 過去と未来

マリカと別れた後、ヤコブはマジックカーを走らせ、ダビデが向かっているであろう魔法マニアが住む東の地へと急いだのだった。



馬よりスピードは速いのでダビデより先に到着することは可能だが、彼女がたった1人で見知らぬ土地に向かっているのだと思うと心配になり気が気ではなかった。早く会いたい気持ちを抑えながら必死に車を走らせたのである。



(ダビデ……やはりお前は1人で悩んでいたのだな。もっと気にかけてやれば良かった。それに……)


ヤコブは昨夜、夕飯時にダビデにかけた言葉を思い出す。



『男みたいにガサツだな』


なぜあんなことを言ってしまったのだろう・・・いくら冗談だからと言って、言っていいことと悪いことがあると後悔していたのである。

あの時ちゃんと謝っておけばこんなことにはならなかったのではないかとつい考えてしまうのだ。



(私はまだお前に謝ってないぞ!謝らせてくれ、ダビデ…!)



そう強く願うように思いながら彼はアクセルを踏み込み続けたのである……。



***


数時間ほど車を走らせた頃だろうか?ようやく目的地に到着したようだ。


そこは小さな町だったが、辺り一面荒野が広がり人通りも少なく寂れた印象を受けた。

建物はほとんどが廃墟になっており、住人がいるのかどうかすら分からない有様だ。唯一残っている建物も古くて今にも崩れそうなものばかりだった。



(ここが魔法マニアの家なのか?)


そう思いつつも一応確認してみることにして近くの家を訪ねてみたのだが、どうやら目的地らしい。



ダビデが夜中に出発したとして、馬ならここまで1日以上はかかるだろう。途中で休憩もするだろうし、おそらく明日彼女がここに辿り着く計算になるはずだと考えたのだ。



「よし、ここで待ってみるか……」


そう思いながら何気なく空を見上げるとそこには満天の星空が広がっているのが見えた。


「綺麗だな……」


思わずそう呟きながらしばらく眺めていたが、ふと生前の愛妻ラケルのことが頭に浮かぶ。



(ラケル………)




ダビデを愛していることを自覚し、彼女に求婚することを決めたが、それでもラケルの存在は心に残響のように残っていた。

おそらく忘れることはできないだろう。


だがそれでもーーーダビデに対する想いが大きいのは確かだった。



(もう迷わないと決めたんだ。お前への愛は永遠に忘れないし忘れるつもりはないが、私は未来をダビデと生きていくために全力を尽くすつもりだ。だからどうか見守っていてくれ、ラケル)



心の中で愛する妻の冥福を祈りつつ、ヤコブはしばし感傷に浸っていたがやがて気を取り直したように立ち上がると再び空を仰ぎ見るのだった。

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