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2話 逃げる女 追う男

その頃ダビデはというとーー


馬に乗り、森の中を駆け抜けていた。誰も追いかけてなどいないのにまるで何かから逃げるかのように必死に走り続ける。


(ご先祖さま……ごめんなさい。私は何て弱いのだろう。本当のことを打ち明けて拒絶されるのが怖い…怖くてたまらないからと言って、逃げるように去ることしかできないなんて…)


ヤコブの優しく笑う顔が頭に浮かび、ダビデの瞳から涙が流れた。

それでも走ることはやめなかった。ひたすら前だけを向いて馬を駆り続ける。一刻も早く遠くへ逃げたかったから。


もうここにはいられないと思ったからーーだから逃げたのだ。



ダビデの行き先はもう決まっていた。


(男に……戻ろう。そうして新しい人生を生きよう。男に戻れば誰も私だと気付かぬだろう……)



そう思いながら涙を零しながらひた走る彼女だった。寂しさと孤独に胸が押し潰されそうになるのを感じながらも、止まることはできなかったのである……。



***


一方、ダビデを追うことを決めたヤコブはまず冷静になることにした。彼女の行き先は見当がつかないのだ。闇雲に動くのは得策とは言えない。



そこで隣国の女諜報員であるマリカに助けを求めることにしたのだ。経験豊富で情報に長けている彼女であれば、何かしら手がかりを掴んでくれるかもしれないと考えたからである。



「あら…ダビデちゃんが突然出ていってしまったの…。その手紙の内容じゃ失踪しようとしてるみたいね」


マリカは同情するように言うと気の毒そうに眉を顰めた。だがその表情はすぐに険しくなる。


「もしかして…あの男が関係しているかもしれないわ」

「あの男?」

「私、目撃したの。貴方と会った夜に、ダビデちゃんが男と会ってるところ。その男は私も知ってる男で魔術の講師をしてる男よ」

「何…!?まさかその男はサイラスというエルフ族の男ではないか?我々はその男から特殊魔法を習ったばかりなんだ」

「ええそうよ。そいつで間違いないと思うわ!」



それを聞き、ヤコブの中で複雑な思いが駆け巡るが、ダビデは素直な性格なのでおそらくサイラスがたぶらかそうと誘惑してきたのだろうと考える。だが今はダビデを探すための手がかりを探すことが先だ。


「よし、その男なら何か知っているかもしれんな。我々も向かうぞ」


こうして2人はサイラスの元に向かうことになったのだった……。

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