表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/120

70 まるでデートみたいな(6)

「お茶でも飲んで行きましょうか」

 と提案したのは、剣様だった。


 一緒にまだ居られるという高揚感と共に、一緒に居て不快ではないんだということに安堵する。

 剣様は、こんな時でも会長なのだ。

 みんなの様子を見て、みんなをまとめようとする。必要な物を用意しようとする。

 この場合は、休憩だ。


 確かに2時間ほど買い物をして、ちょうど休憩が必要な時間ではあった。


 ちょっとオシャレなカフェに入る。

 ……こういう場所は、剣様や東堂先輩達が似合う。

 あの小節先輩でさえ、じっとしていれば馴染んでいるように見えるので、一人浮いているんじゃないかと、つい、心配になる。


 それぞれが、ケーキとアイスティーやアイスコーヒーでお茶の時間になった。


 目の前に、剣様が座っている。

 小さなチーズケーキも、明るい色のアイスティーも、剣様の魅力を引き立たせる。

 時間を止めて、ずっと眺めていたいと思う。


 けれど、すぐ目の前に居て、見てばかりもいられない。

 ふとした事で、剣様の目がこちらを向く。


 すると私は、剣様の目にどんな風に映っているのか不安に思ってしまうのだ。

 不安のあまり、死んでしまいたくなる。


「朝川は、春日野町のファンクラブに入っていたんだろう?どんな活動をしていたんだ?」


 そう言ったのは、隣に座っていた小節先輩だった。

 唐突だった。


「な、なんですか藪から棒に!」


「いや、あれでも学園内組織の中では発言力が強いからな。生徒会の一員として、知っておいて損はないだろう」


「はぁ……」

 そこで、全員の視線がこちらを向いてしまったので、ファンクラブの頃の話をしないわけにはいかなかった。


「私は、ファンクラブでは基本的な活動をしていた方だと思うんですけど。集会の時、一番前でハチマキしめて、うちわ掲げたり」

 そこで、誰かがふっと小さく笑った。


 ご友人のSNSを巡回したり、写真にキスしたり……という事は流石に言わない方がいいだろう。


「あとは、お手紙を書いたり」


 そこでふっと、剣様が優しい目をした、ような気がした。

 手紙、は嬉しいんだろうか。もしかすると。


「私ではないんですけど、剣様に捧げる歌を作ったり、お祈りしたり、というのも見た事がありますね」


 そう言うと、剣様はあからさまに眉をひそめた。

「どんな歌なんだ?」

 と小節先輩が言ったので、うろ覚えながらも歌ってみせた。


 一番盛り上がる、

「剣様〜!ハ〜〜〜〜〜〜〜〜ア〜〜〜〜〜〜〜〜…………ア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 を歌ったところで、剣様以外にはなかなかウケが良かった。


 流石に、これはちょっと恥ずかしかったかな……。

 剣様の顔を横目で見ながら、思う。


 そんなわけで、そこからはほとんどがファンクラブの話になってしまった。


 こんな話して、失礼じゃなかっただろうか。

 なんて、思ったところでもう遅い。




 最終的に、

「じゃあ帰るか、朝川」

 なんていう小節先輩の言葉で解散となった。


 一緒に帰るなんて、匂わせてるんじゃないかと思われそうな言葉だけれど、言われた本人は、まるでお父さんに言われたような気分だ。


 帰ろうとする小節先輩が、

「うおっと」

 と、転びそうになる。

 剣先輩が足をかけたせいらしかった。


「どうして一緒に帰るのよ」

 剣様がしらっと聞くと、

「同じ方向だからな」

 と、小節先輩が、優越感が漏れていそうなドヤ顔で剣様に笑ってみせた。

次は、夏合宿ですね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 用意周到なファンズ会員 「剣様にささげる歌を作ったわ。転調なしで誰にでも歌いやすくしてあるの」 「『剣様、剣様は~~マジ女神』……、覚えやすくて良い歌詞ですね!」 「ふふふ、そのうち幸運が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ