表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/120

69 まるでデートみたいな(5)

 残りの3人は、双子がそれぞれ水着を選び、小節先輩が意見を言っている。

 小節先輩は双子が試着した姿にフムフムと意見を言う。

 それは仲が良すぎなんじゃないかと思いつつ、奈子は残った剣先輩と二人で、水着を選ぶ事になった。


 とはいえ、剣先輩は、全身タイツを拒否してしまったので、私の提案はおあずけだ。


「これはどうかしら」


 試着室から出てきた剣様は、黒いハイレグの水着を着ている。


「プフッ!!」


 あまりの驚きで、つい、噴き出してしまう。


「つっ……!」


 剣様を隠す為、周りを確認しながら手をバタバタさせる。そのまま剣様を試着室へ押し込んだ。


「なんて格好してるんですか!」


 バクバクという心臓を抑えつつ、声をあげた。


「何って、水着を買いに来たのだけど」

 しらっとした声。


 なんでそんなにそっけないんだ!

 肌色が多すぎる!

 脚が見えちゃってるし!

 そんな格好で外を歩くなんて、問題外でしょ!!


「ダメです!肌が出過ぎです!焼けたら大変なんですよ!?そんな白い肌、痛くなっちゃうんですからね!!」

 顔を真っ赤にしながら、もっともらしい理由を付け加えた。


「日焼け止めつければ大丈夫よ」


 そんな格好でいられたら、私だってきっと正気じゃいられない。


 目をギュッとつむり、試着室のドアを押さえた。

 そんな奈子の事など気にも止めず、剣様がまた、別の水着を試着して試着室から出てくる。


「剣……様」


 深い色の水着。

 上はヒラヒラとしたフリルが付いていて、下はショートパンツ。色と相まって適度な大人らしさを見せる。


 正直、似合っている。


 けど。


「それは……お腹が出ているじゃないですか」

 つい、不機嫌な声になってしまう。


「……似合ってない?」


「え?」


 顔を上げると、剣様が一歩、こちらへ近付いて来ていた。

 その真っ直ぐに見てくる視線にゾクリとする。

 少し動けば触れてしまいそうな距離に、気持ちが高揚するのが分かった。


 瞳の深い色。

 揶揄うような瞳の奥に、どこか冷めた色を見せる人。


 剣様は、こんな視線に反抗する力を、私が持っていない事を知っている。


「似合ってます」

 声は小さくなった。

 聞かれたくない言葉だった。

 けれど、本心だ。


「じゃあ、これにするわ」

 ニッコリと、笑っていない顔で笑う。


 剣様の水着姿なんて、誰にも見られたくないのに。


 私は、そんな気持ちを伝える言葉を持たない。




 結局剣様は、その水着を買った。


 双子は相変わらず違うデザインの水着を買っていた。

 杜若先輩はビキニに薄いTシャツを羽織る。菖蒲先輩は腰にパレオを巻いていた。

 違うデザインではあるけれど、どちらも上品で、どことなく対になっている感じがした。


 小節先輩は、なんと普通のハーフパンツ的な水着を買っていた。

 絶対全身タイツか、それでなければブーメランでも穿いていそうな雰囲気なのに。


 そんな風に、少し裏切られた感じがしつつも、買い物は全て完了したのである。

ナチュラルに女子にまじれる小節くん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もしかして、剣様も『奈子ちゃんに着て欲しい気持ち』と『他人にみせたくない気持ち』の間で悩んでいらしたのかしら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ