表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/120

59 勉強をいたしましょう(1)

 私、朝川奈子は、教室で教科書を眺めながら、じっと考え事をしていた。


 もうすぐ、期末考査がある。


 大体、梅雨の時期に試験勉強をして、梅雨が開ければカラッと晴れていざ夏休みという寸法だ。

 確かに梅雨の時期は、それほど外に出ようという気も起きなくて、勉強には最適。


 私も、別に成績は悪くはないのだけれど、平均も平均なのが私だ。


 これは……困った。


 剣様はもちろんいつだって学年1位。

 だけでなく、副会長の小節先輩は基本的に学年5位以内。前回、前々回に至っては、学年2位をキープしている。

 杜若先輩と菖蒲先輩は、基本的に学年10位以内。

 100人そこそこの人間の中で、10番以内だってかなりすごい。


 私はといえば……、高等部初めての中間考査は42位。


 生徒会に入ったからには、この順位はヤバい…………。


 先生が、黒板に試験範囲を書いていく。

 ノートに書き写す学生達のペンを走らせる音がする。


 緊張が、身体の中を走った。




 その日から、奈子は、生徒会室に参考書を大量に持って入った。

 数学に、歴史、英語……。教科書も入れれば、実に20冊以上だ。

 これを……試験までの2週間みっちりやれば、私だって……。


 生徒会メンバーの反応はまちまちだった。


 杜若先輩と菖蒲先輩は、作業机の場所を空けてくれながら、

「すごいやる気ね」

 とシンクロした声で微笑んでくれた。


 小節先輩は、わざわざ立ち上がると、

「負けられないなぁ」

 と眼鏡をクイクイしてみせる。


 そして肝心の剣様はというと、……特に何の関心も示さなかった。

 チラリと本を抱えた私を一瞥しただけだ。


 …………やっぱりこれは、結果を出すしかなさそうだ。

 結果を出せば、きっとこっちを見てくれるから。




 実際、生徒会室での勉強は思った以上に上手くいった。


 試験前というだけあって、生徒会にはあまり問題が持ち込まれる事がなかった。

 みんな真面目に勉強するタイプなので、それぞれがそれぞれの場所で、勉強に取り組んだ。


 杜若先輩と菖蒲先輩は作業机の近い席に座ってくれたし、小節先輩は離れた席でなんだか派手に勉強していた。

 派手に勉強をしていたというと、なんだかおかしな感じだ。

 特に小節先輩が、鼻歌を歌いながら勉強していたとか、音楽を聴きながら勉強していたとかいうわけではないので、余計におかしい。

 ただ、気付けば鼻をフンスフンス鳴らしていたし、問題でハッとした部分があればあからさまに顔に出た。とにかく存在自体が煩いという事だ。


 剣様は相変わらず会長の席で、書類作業でもするように座っていた。


 静かな時間は居心地が良かった。


 …………あれ?

 ここ、公式あったんだっけ……。


 参考書を探しにかかったところで、小節先輩がザッと立ち上がる。


「!?」


 オールバックをスッスッと撫でつける小節先輩なのだけれど、驚いた事にその小節先輩に注目したのは奈子だけだった。


 くにくにとした歩調で向こう側から歩いてくる。

 驚く奈子の目の前まで来て、眼鏡クイッを披露すると、

「何か困ってるんじゃないか?」

 と声をかけてくれた。


 小節先輩や、杜若先輩、菖蒲先輩は面倒見がよく、なんでも教えてくれた。


 幸せだった。


 剣様と同じ空気を吸いながら勉強するだけで、いつもより勉強も捗る気がした。

 目が合うわけじゃないし、話が出来るわけでもない。


 ただ、みんなで勉強しているその空間が、私にとっては宝物なのだ。

生徒会はいい人ばっかりですね〜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 小節先輩って、あだ名が『さわやかマルフォイ』だったりしませんか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ