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32 選挙演説(2)

 立候補者は4人。


 剣様。

 そして、生徒会のもう一つのグループの立候補者、2年の飯塚先輩。

 それに、同じく2年生の帰国子女の先輩と、元バスケ部の先輩だ。


 もともといつもなら、6、7人は立候補者がいるらしい。

 何しろうちの学園の生徒会長を務めたとあれば、大学受験に有利なのはもちろんのこと、その後の人生にも影響があるので人気があるのだ。


 今回は、生徒会が二分され、強敵が二人もいる状況に負けたのか、それとも立候補者の一人が剣様だからなのか、今回の立候補者は少ない方だった。


 順番は、くじ引きで決めた、ということだったけれど、剣様が3番目、生徒会のもう一つのグループが最後に控えてるという順番で、どうしてもつい、裏工作を疑ってしまう。


 そして、1番目を飾る元バスケ部の先輩の演説が始まった。


 同じくバスケ部の後輩の応援演説。

 内容は、いつでも面倒を見てもらったので、シュートの確率がこんなに上がりました、というものだ。


 立候補者当人は、なかなか元気の良さそうな人物で、女子人気というよりは、男子人気が大きい人物だ。

 声は大きく注目しやすい人物ではあるけれど、それだけだ。

 剣様のよく通る声に比べればまだまだ。


 2人目は、帰国子女の女子生徒。金髪のお姉さんだ。

 仲の良い友達だという応援演説を聞く限り、かなり人柄の良いお姉さんのよう。

 海外に居たという中学時代の写真をモニターに映しながらの演説だけれども、みんな写真に気を取られてしまい、あまり話は聞けてなさそうだ。




 そして、とうとう剣様の番がまわってきた。


 5人で舞台袖に入る。

 剣先輩も、応援演説の小節先輩も、特別緊張している様子はない。

 小節先輩の顔は、すっきりいつもの調子に戻っていた。

 ……さっきの力の入った顔は何だったのかと思ってしまうくらいだ。

 剣様の応援をしなければいけないというプレッシャーでもあるんだろうか。


 けれど、腹を括ったのかなんなのか、ステージを真っ直ぐに見る小節先輩はなかなか頼もしい顔をしている。


 まずは、応援演説だ。


「いってらっしゃい、先輩」

「ああ、行ってくる」


 いつものうにうにした不審な言動とは違い、芯の通った背筋だ。


「2年3組、小節龍樹です。これから、春日野町剣の応援演説を始めます」


 なんだ、なかなか堂々と話せるんじゃないか。

 剣様が補佐に置いているのも、ああいう度胸が理由なのかもしれないと思わせる。


「まず何より、春日野町の観察眼は目を見張るものがあります。みなさんも覚えがあるでしょう。何か悪い事をして止められたとか、いい事を褒められたとか、視線を感じる、とか」


 そこでほのかに笑いが起こる。

 確かに、いじめを止めてくれたのは中学生の頃の剣様だった。

 他でもああいう活動をしているという話はファンクラブの中でもいくつか聞いた話だ。

 そう、私だけが特別じゃない。


 ファンクラブメンバーの顔を全部覚えてるんじゃないかなんていう噂もあったっけ。


「そして、何よりも強い!」


 小節先輩の喋りは、見た目通り、真面目一直線な話し振りなんだけれど、どこか面白いと思ってしまうのはやはり普段からの奇人ぶりが原因だろうか。

 まあ、悪い人柄ではない。


「学年1位の頭が強い!腕っぷしも強い!そして、顔も強い!」


 あっ……!


 気合いが入りすぎてしまうのか、徐々にあのイケメンの顔が変顔になりつつあるのを目撃してしまう。

 どうどう!どうどう……!


「その強さが……!強さが!我々のトップに立ち生徒達を牽引できると自信を持って言える春日野町の姿なのです!」


 心の中で落ち着かせようとしたのが伝わったのか、変顔は微々たる歪みで終わったのだった。

小節くんはおちゃめですねぇ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先輩にとっては「強さ」が評価基準なんだ……(脳内で男塾化してゆく桜花蒼奏学園)
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