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26 メガネの先輩

 翌日、生徒会室に入ると、そこには一人だけしかいなかった。

 小節先輩だ。


 いつも通りの眼鏡に、オールバックの頭。

 どうやらパソコンに向かって、昨日の写真の整理をしているらしい。


「おはようございます」

「ん。おはよう」


 正直、二人きりにはなりたくない相手だ。


 嫌なのだ。

 剣様と同じクラスというだけでも嫌なのに。

 成績は学年1位の剣様に続いて学年2位。

 同じ生徒会の仲間。

 それも、剣様が会長選に出るとなれば、こうして同じチームに入り、サポートをするような距離の近さ。


 きっと仲が悪いわけじゃない。


 けど、もし二人がやんごとなき関係になったら……なんて思うと気が気ではない。

 剣様はあんなに美しく非の打ち所のない方だもの。

 ……惚れない理由はない。


 この人だって……。


 横目でちらりと見る。


 私には、不審な眼鏡としか映らないけども、周りの女の子達の評価はちょっと違う。

 将来は官僚になるだろうだとか、眼鏡を外せばイケメンだとか、言われている。


 確かに、客観的に見れば、顔はいいと言えるだろう。


 眼鏡を外せばイケメンだとか言われているけれど、それは違う。

 言動が不審なだけで、普通に顔はいいのだ。

 自慢げな眼鏡クイッだの、パソコンに被さるような作業の仕方だのがただただ不審なだけ。


「…………」


 手持ち無沙汰で、小節先輩のパソコン画面を覗く。

 昨日の剣様がたくさん並んでいる。

 ああ、目がやられそう……!

 美しい剣様があっちにもこっちにも……!


 それにしても。


「綺麗な写真ですね」


 素直に褒める。


 すると、小節先輩は、こちらをちらりとみやると、少し恥ずかしそうに、眼鏡をクイッと上げた。


 呆れつつも言葉を続ける。


「春日野町先輩の、キリッとしてるけど明るい表情が、魅力的に捉えられてていい写真だと思います」


 そう言うと、小節先輩は、ハッとした顔をした。


「そう思うか」


「…………はい」


 別に嘘を言うつもりはない。


 すると、小節先輩は、こちらを向いて二カッと笑顔を見せた。

 少し、面食らう。

 被写体になっている剣様に見惚れるとかないなら、興味がないということでいいのだろうか。


「そう言ってくれたのは、君が初めてだ」


「そう……ですか」


「夢なんだ」

「え?」


「写真家だよ。世界を飛び回りながら、世界に落ちている一瞬一瞬を写真に収めるのが夢なんだ」


「え……」


 なんだ、この人。

 夢の話をしてるときは、あんまり不審じゃないじゃないか……。

 むしろ……。

 ちゃんとカッコいいとさえ思う。


「夢、叶うと思います」


 言いながら、奈子は口をとんがらかせた。


 普通にカッコいいなんて、本当に嫌な奴。

 剣様の前から居なくなってほしい。

 もし、こんなのが好みだったらどうしよう。


 奈子は、不機嫌に小節先輩の隣の席を陣取った。

 不満だけれど、剣様の写真見放題ゾーンには違いない。


「でも、なんでそんなガリ勉なんですか」


「ふむ、」

 と、小節先輩は考える仕草をする。

「親の希望なんだ。"いい大学"に入って、"いい職"につくのが」


 ははん。

 それが官僚ってことか。


「けど、今の君の言葉で、自信が持てたよ」


 そう言った小節先輩は、やはり自信有りげな眼鏡クイッを披露する。


 むぅぅぅん。


 やっぱりやるんだ、眼鏡クイッ。


 やっぱりこんな奴、カッコいいなんて言葉は撤回してやるんだから。

メガネ先輩回でした〜!

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