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16 初めての生徒会室(4)

 心臓がバクバクする。


 私、ここに居ていいんだろうか。


 目の前には、剣様の今までの伝説が記されし書物が広げられている。

 それを手にできるどころか、読んだ上で、重要な報告書としてまとめる事が出来るなんて……!


 ほら見て!!!!

 去年の文化祭の活動はすごい。剣様の提言で、文化祭のホールでのイベントが一段と人目を引くものになっている。そんな大きなイベントがない時でも、この図書館の貸し出しシステムの新画面のデザインをしたのが剣様だというのだから、多才という他ないのでは?合間を縫ってボランティアのゴミ拾いに行くなんて、この人が生徒会長にならずして、誰がなるというのか。


 あまりの活動内容に息が荒くなり、顔を上げると剣様の存在が視界に入る。

 どうしてこの場所では天界の様子がこんなにも間近に見る事が出来るの?私、もしかして気付かないうちに死んだ?

 もし、死んでいないとしても、これでは、命がいくつあっても足りない。


 活動日誌を見ながら、ノートパソコンに入った写真と照らし合わせ、他を圧倒する程の活動内容をまとめていく。


 ふと顔を挙げると、相変わらずソファで書類と睨めっこしている剣様のお姿が見えた。

 さらりとその流れるような黒髪をかきあげると、すらっとした横顔が見える。

 見惚れていると剣様が振り返り、こちらを見てにこっと笑った。


「あ…………」


 顔を上げただけで……?

 剣様に微笑んでもらえるだなんて。

 これはもう結婚していると言っていいのでは?


 気持ちが高揚し、報告書にまた向かったところで、ポタ……と、テーブルに何かが落ちた事に気付いた。

 あ、いけない。

 鼻を抑える。

 そこに落ちたのは真っ赤な鼻血だった。

 興奮しすぎて頭に血が昇ってしまったのかも。


「あら、大丈夫?」

 心配はあまりしていなさそうな声で、隣で見てくれていた杜若先輩に声をかけられる。


「らいおううれす……」

 言いながら、大事な報告書が汚れていないか確かめる。


 その騒ぎに全員が振り向く。


 予想通り、というかなんというか、菖蒲先輩は杜若先輩と同じ、心配するでもないクールな顔をしている。

 小節先輩の方がかなり感情が表に出るタイプらしい。「あわわわ」とでも言いそうな顔をした。


 肝心の剣様は、

「どうしたの?」

 と立ち上がってくれた。


「ちょっと鼻血が出ちゃって」

 なんとか喋れるようになると、大丈夫である事をアピールするのに、「へへ」と笑ってみせる。

 剣様に注目してもらえるなら、出血多量で干からびてもいいくらいだ。


「体調が悪いなら先に言いなさい」

 そう言いながら剣様は、真っ白なハンカチを私の鼻に押し当てた。


 ビクン、と心臓が跳ね上がる。

 心臓だけじゃない。

 私は多分、物理的に数センチは跳ね上がった。


「違うんです……っ!ちょっと……緊張しちゃって……!」


 慌てると、剣様は私の鼻にハンカチを押し当て続けながら、眉を寄せ、苦い顔をした。


「…………仕方がない子ね」

興奮しすぎたね!

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