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14 初めての生徒会室(2)

 そのまま息を殺していると、東堂先輩がチラリとこちらに視線を寄越した。

 そうだよ、ね。気付いてないはずない。


「ご機嫌よう」

 挨拶をすると、

「ご機嫌よう」

 と、やはり冷めた声で、返事が返ってきた。


 その東堂先輩も校舎の外へ行ってしまい、沈黙が訪れる。


 音を立てないように、階段を登った。


 とはいえ、ここは上履きに履き替えず、外の靴で歩く校舎だ。


 この学園には、メインの教室が集まる、高等部校舎、中等部校舎を中心に、幾つかの校舎がある。

 高等部校舎、中等部校舎、それに繋がる体育館は上履きに履き替えるのだけれど、それ以外は履き替える必要がない。

 図書館、教員棟、音楽堂、そしてこの特別教室が集まる校舎は外を歩く革靴のままで入る。


 上履きよりも硬い革靴で歩くという事は、上履きで歩く時よりも音が出やすいという事だった。


 息を殺す息を殺す息を殺す息を殺す……。


 ゆっくりと、階段の一段目に足の先を乗せ、体重をかける。手すりに掴まり、おかしな力が入らないようにする。出来るだけ早くそれを繰り返す。


 そんな風に2階の廊下の突き当たりまで歩くと、やっとどこかの社長室でもあるかのような扉の前に辿り着く。

 もちろんそこが、この学園唯一の生徒会室だ。


 中等部にも生徒会のような組織はもちろんあるのだけれど、中等部生徒会には肝心の“決定権”がない。生徒の代表として活動する権限がないのだ。

 何か企画を上げれば、それをまた高等部の……つまりこの生徒会に提案書を持ってこなければならない。


 つまり剣様がいらっしゃるこの生徒会が、このなかなかに大きな学園を背負って立つ場所だという事なのである。


 大きな濃い茶色の扉をノックする。

 見た目通りのなんだか高級感のある、響くノックの音がした。

「どうぞ」

 と声がかかる。


 ガチャリ。


「高等部1年2組。朝川奈子です」


 これが、朝川奈子にとって、初めて生徒会室に立ち入る瞬間だった。


 明るい日差しの中に、本当に社長室か校長室ででもあるかのような部屋が現れる。

 思ったよりも小さい。

 普通の教室ほどの大きさはないように思える。

 一番奥には会長の席。

 中央には作業をする為の大きな机が据えられ、手前にはお客様用かと思える応接セットが並んでいる。


 そんな応接セットのソファに座っているのが、剣様だ。


 バクン、と心臓が高鳴る。

 こんな奇跡、あってもいいのだろうか。

 ツンとした顔でこちらを見ている剣様。

 まさか、剣様が生徒会室にいるお姿を拝見できる日が来るなんて……!

 心のフィルムに焼き付けなくては!

 パシャリパシャリパシャリパシャリパシャリパシャパシャパシャパシャ。


 そんな中央の作業机から立ち上がったのは、キュッと結んだサイドテールの髪をキュッとした三つ編みに結んだ、他でもない東堂先輩だった。


 ……さっき、校舎の外へ出て行ったはず。

 そんな事を一瞬思ったけれど。

 そうだ。

 東堂先輩は……。


 生徒会室の扉から、見知った先輩が入ってくる。


 東堂先輩……。


 そう、東堂先輩は、あまりにもそっくりな双子なのだ。

まずは新キャラの双子さん。

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― 新着の感想 ―
[一言] 心の中で高速シャッターだと……! さすが学園三十傑が一人、朝川奈子よのぅ。
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