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13 初めての生徒会室(1)

「それで『うん』と言ってしまったわけね。辞めておきなさいよ」

 というのは、真穂ちゃんの言葉だ。


 経緯を説明すると、まずそう言われた。

 とはいえ、真穂ちゃんの苦い顔を見ると、私が辞める気などない事まで分かっているようだった。

 私が逆らえるはずないのだ。他でもない剣様に。


「わかってる」


 相談したくせに、何を言われてもどうしても飲み込めなくて、その一言だけ口にして終わりにした。


『うん』と言ってしまった日の放課後、既に朝川奈子は生徒会室に呼び出されていた。

 ただ、生徒会長選挙の手伝いをして欲しいという言葉以外の情報を与えてももらえず、生徒会室に向かうしかなかった。




 放課後の廊下。

 誰も居ない事を確認して。確認の上に更に確認して。生徒会室のある、クラスの教室群からは少し離れた校舎へ向かう。

 第三音楽室や理科室など、必要な時にしか使われない教室が幾つか入っている校舎で、体育館や音楽堂、カフェテリアなどとは逆方向にあるので、基本的に人は少ない。


 この校舎の奥には図書館があるけれど、この校舎の前側を通って行った方がよほど近いので、この校舎にわざわざ入って来る者は少なかった。


 生徒会室は、そんな校舎の2階にある。


 階段を登る前に、ベンチが数か所に置いてある小さなホールで、一人女生徒が座っているのを見かけた。


 ……危ない……!


 念の為、足音を殺して歩いてきてよかった。

 あれは、ファンクラブのメンバー。ファンズサーティーの一人だ。

 まだ中3だと記憶しているけれど、この離れた校舎まで来るなんて流石としか言いようがない。


 幸い、階段は校舎の中に一つきりではない。

 音を立てないよう、後退りする。


 大丈夫。

 大丈夫。


 けれど、そんな風に緊張している時こそ失敗するもので、革靴がキュ、と響く音で鳴り響いた。

 それは小さな音だった。

 けれど、まごう事なき人間が居るという合図に違いなかった。

 ここで、一般的な漫画などであれば『にゃー』なんて言って『なんだ猫か』なんて場が収まるものだけれど、今この時ばかりは、靴が靴にしか立てる事のできない音を立ててしまったし、残念ながら猫は一般的に靴など履いてはいないのだ。


 陰に隠れる。

 心臓がドクドクと波打つ。

 息を潜めなくちゃ。

 けど、どう考えてもこれは人間の音。

 覗かれたらアウトだ……。


 緊張する中で、ふいっとそこに、一人の生徒が現れた。


「……!」


 それは、そこに座っていたファンズサーティーの子ではない。


 キュッと縛ったサイドテールを、キュッと三つ編みにしている。

 それは、高校2年、東堂先輩だ。

 なぜわかったかというと、生徒会のメンバーだから。


 流石に生徒会のメンバーは知っている。

 剣様ファンクラブとしては、基本情報に他ならない。


「ご機嫌よう」

 離れた場所から声が掛かる。さっきの中学生の声だ。

「ご機嫌よう」

 東堂先輩の冷めた返事の後すぐ、パタパタと逃げるように足音が遠ざかった。


 助か……った。

まだ辿り着けてもない!

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