6,夜の演奏会
ツインクル・ストリングスの三人がぼーっと目をさますと、暗い中にちかちかたくさんの光が三角形に並んで青赤黄色に色を変えていました。なんだろうと思うと、それは大きなクリスマスツリーでした。ああなんだ、さっきコンサートをやったステージのとなりに立っていたツリーじゃないかと思い出すと・・
「ハッピー
「「「メリー・クリスマス・デセンバー!」ー!」ー!」
大勢の声が言って、パッと明るい灯りがついて、ワアーーーッ、と大きな拍手が降ってきました。
三人はびっくりしましたが、そこはやっぱりさっきコンサートをした広場で、吹き抜けの2階と3階の手すりにおおぜいの
サンタクロースたちがいました。
「しょくん、アテンション・プリーズ」
黒い大きな背中、あの怪しい黒岩三太郎がステージに立って両手を上げてサンタクロースたちの注目を求めました。
「世界のサンタクロースしょくん、遠路はるばるお集まりいただきごくろうさん。
さて今年もいよいよ我々サンタクロースの本番、忙しい12月がやってくる。そこで今夜、
『恒例 今年のクリスマスもガンバロー!会』
を行いたいと思います。今夜は存分に楽しんで、クリスマス本番に向けて忙しい1ヶ月を頑張ってくれたまえ。
司会はわたくし、今年のガンバロー会幹事、日本の黒サンタ、黒岩三太郎がつとめさせていただきます。どうぞよろしく」
ていねいにおじぎする三太郎にサンタたちの中から
「いよっ、極悪サンタ!」
と声援(?)が飛んで、どっと笑いが起きました。手すりに鈴なりのサンタクロースにはちらほら黒いサンタも混じっていて、どの黒サンタも三太郎みたいに悪そうな顔をしていました。
三太郎はニヤッと笑って、まあまあと手で合図し、
「それではしょくん、今年のスペシャルゲストをご紹介しよう、美しきヴァイオリン弾きの三人娘、
『ツインクル・ストリングス』
のコンサートだ。
さあ、よろしくどうぞ!」
わあーーっと拍手と歓声がいっぱいに広がり、三人はまだ夢を見ている気分でしたが、三太郎にさあとうながされてステージに上がりました。いつの間にやらまた赤いドレスのステージ衣装に着替えてヴァイオリンを持っています。
三人はなんだかだまされているような気がしましたが、期待に顔を輝かせているおおぜいのサンタたちを前にしては演奏しないわけにはいきません。三人がヴァイオリンをかまえると、スピーカーからシンセサイザーのリズムが流れてきました。何度も演奏しているお得意の曲ですから三人は自然と弓を弦にすべらせ、それぞれのパートを演奏しました。
演奏が始まると、ステージの後ろからぞろぞろと人間の子供の大きさの動物のぬいぐるみたち、サルやトラやライオンやゾウやクマやカバが現れて、ステージの前で演奏に合わせて愉快なダンスを始めました。
ぬいぐるみたちばかりではありません、羽をぱたぱた羽ばたかせて小さな女の子の天使たちが現れ、天井近くまで飛んでいくと、半分が缶からハケでペンキをまき散らし、するとそれはゆらゆら揺らめくオーロラの光になりました。もう半分の天使たちは魔法のバトンを振ってキラキラ輝く雪を降らせました。
演奏する三人は目の前に広がる夢のような光景にびっくりし、うっとりし、とても気持ちよく演奏しました。
ツインクル・ストリングスのコンサートは6曲30分続き、サンタたちの盛大な拍手にもう1曲クリスマスの音楽をアンコール演奏しました。