5,人さらい
7時になりました。
ツインクル・ストリングスのお姉さん三人はヴァイオリンを持って約束通り屋上の駐車場に来ました。
空はすっかり夜になっていますが、ショッピングセンターは9時までやっているので屋上にもまだ半分くらい車は残っていました。でもその中でもすごく目立つ一台がありました。黒くて、四角くて、縦も横もすごく大きい、外国の車が出口を出てすぐのところに止めてありました。
その前に黒岩三太郎も立っています。こんな車に乗っているなんて、実はすごくお金持ちなのかも知れませんが、やっぱり怖そうです。ああ、きっとこの人はどこかお金持ちのお屋敷の執事さんなのかも知れないわと三人は考えました。
「ではどうぞお乗りください」
後ろのドアが開かれると、中はすごく広くて、座席はふかふかのソファーでした。三人は夢のように思いながら乗り込みました。
三太郎がききました。
「お食事はされましたか?」
「はい」
演奏するのがお屋敷のパーティーだったらすごいごちそうが出るかも知れないわとちょっと残念に思いました。
「それならけっこう」
三太郎は後ろのドアを閉めました。
三人の座ったソファーは小さなテーブルが着いていて、そこにマンガのトナカイの顔の飾り物が置かれていました。豪華な室内にあまり似合わないマンガのトナカイを見ていると、寝ている目が開いて、角が青色に光って、ピアノの「トロイメライ」の曲が流れ出しました。その優しい音楽をきいているうち、トナカイの目がぴかぴか光って、それを見ているうち三人の目がとろんとしてきて、お互いの肩に寄りかかりながら眠ってしまいました。
黒いガラス戸の外からのぞいて三太郎は言いました。
「パーティーまでもうしばらく時間があるのでね、しばらく眠って待っていてくれたまえな」
そうして三太郎はまたショッピングセンターの中へ戻っていきました。
暗いところにパッと明るい光が灯って、お父さんお母さんたちはまぶしそうに目をさましました。
会議室みたいな殺風景な部屋に30人くらいのお父さんお母さんたちが連れ込まれていました。
「ここはどこなんだ?」
「うちの子はどこにいるんだ?」
不安とあせりにざわざわすると、ドアのところから三太郎が歩いてきて言いました。
「お父さんお母さんしょくん、居残りごくろうさま。
さて、しょくんたちのお子さんはどうしようもない悪い子たちばかりだ。そこで、
この俺が魔法をかけてみんな動物や天使に変えてやった。
ははは、
これで悪い子に手がかからなくなってよかっただろう?」
お父さんお母さんたちは怒って、子供に会わせろと騒ぎました。
「うるっさあ〜〜〜〜いっ!!!」
三太郎の大声にみんな震え上がりました。
「おっと失敬。なんだいいじゃないか、あんなわがままな悪い子ども?
うふふふふ、
あんな悪い子でも返してほしいか? では俺の言うことを聞け」
三太郎は大きな袋の中から白い服を取り出しました。上と下そろいの、白いサンタの服です。帽子もあります。
「それを着ろ。そうしてあるゲームの手伝いをしてもらいたい。しょくんらが頑張って我々を楽しませてくれたら、お子さんたちをちゃあんと元の姿に戻してお返ししよう。よろしいな?」
三太郎はまたまたすごーく意地悪に笑いました。