4,迷子たち
黒岩三太郎もショッピングセンターの中を歩いていました。
彼もやっぱりオモチャ屋やゲーム屋や本屋や服屋やお菓子屋など、子供たちが喜んで来そうなところを選んで歩いています。そうして、
「うわ〜ん、買って買って〜! 買ってくれなきゃやだあ〜〜っ!!」
と、駄々をこねて、床に寝ころんで暴れているような子供を見つけると、実に嬉しそうにニンマリ白い歯を見せました。
そんな駄々をこねるような子にはお父さんお母さんは怒って、呆れ返って、
「おまえみたいな悪い子は知りません! いつまでもそこでそうしてなさい!」
と、プンプンしながら行ってしまうふりをしました。そうしてしばらく放っておけば心配になって慌てて追いかけてくるだろうと考えての作戦です。
ところが、追いかけてくるはずの子供がいつまでたっても追いかけてきません。
お父さんお母さんの方が慌てて元のところに帰っても、自分たちの子供は見あたりません。
どうしよう、どこに行っちゃったんだろうと心配していると、
ピンポンパンポーン。
『迷子のお知らせです。どこどこよりお越しのまるまるちゃんがお待ちです。お父さまお母さまはお近くのサービスカウンターにお声掛けください』
と、我が子の迷子を知らせるアナウンスが流れるではありませんか!
お父さんお母さんはびっくりして、恥ずかしくて、急いでサービスカウンターを探して駆けつけました。
うちの子が迷子になっていると言うと、受け付けのお姉さんはにっこり笑って言いました。
「はい。たしかにまるまるちゃんはお預かりしています。迷子センターにいますので、どうぞ迎えに行ってあげてください」
お父さんお母さんは迷子センターの場所をきいて慌てて向かいました。ところで、お姉さんの制服もクリスマス向けなのでしょうか、赤い服に白いふわふわの襟を付け、頭にも赤と白の帽子をかぶっていますが・・・・。
迷子センターは3階のちょうど真ん中の広場の吹き抜けの奥に入ったところにありました。
表のカウンターで名前を確認して、ガラスのドアの奥へ案内されました。
青いかべの通路が続きます。子供が心配なお父さんお母さんはずいぶん長い通路だなとやきもきしました。
やっと通路が終わって部屋に出ました。
滑り台や大きなブロックのあるカラフルで楽しい部屋です。それに大きな動物のぬいぐるみがたくさんあります。
「ヒロキちゃん!」
お父さんお母さんは自分の子供の後ろ姿を見つけてほっとして駆け寄りました。
「こら。もう、心配かけて・・」
ヒロキくんの顔を見てお父さんもお母さんも「うわー」「きゃー」と悲鳴を上げました。ヒロキくんの顔がぬいぐるみのお猿さんになっていたからです。はっと上を見るとまた「うわー」「きゃー」と悲鳴を上げました。青いお空の天井にふわふわ、大きなシャボン玉に入った小さな女の子がいっぱい浮かんでいたからです。
お父さんもお母さんも「う〜〜ん」とうなって気を失ってしまいました。
黒岩三太郎がのっしのっしとカウンターのお姉さんのところに来て言いました。
「さて、悪い子どもの家族は集まったかな?」
サンタ姿のお嬢さんはにっこり笑って言いました。
「ええ。もうじゅうぶん」
「そうか」
三太郎は実に悪そうな笑いを浮かべて言いました。
「では準備の本番にかかるとするか」