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25-6. ログハウス

B・T・W(By the way)! 色々話したしィ そろそろお開きィ にでもしないかいィ?」

「あぁ、そうだな。そろそろ」

「オザクさんのお仕事の邪魔にもなっちゃうしね」


その後もMMMことマクローリン魔道具工房でついつい話し込んでしまった僕達。

気づくと壁の掛け時計の短針が1歩進んでいた。



「済まんな小作くん、こんな時間とっちゃって」

D・(Don't)N・(Worry)W! ちょうどいい休息ゥ マックス集中力ゥ 働けるぜ超速ゥ!」

「ハハッ、そう言ってくれるとありがたいよ。お師匠様にもよろしく」

「Y・U・P!」


工房の店長でもある、彼のお師匠様。折角ならご挨拶でも……とも思っていたが、今日はあいにく外出中。また今度こよう。

さて、湯呑みに残ったお茶を飲み干して立ち上がる――――



「うぉっととと」

「L・O・L! お前の両足がァ まるで小鹿ァ!」


体重を載せた途端、思い出したようにプルプル震える両足。よろける身体。溜まりに溜まった疲労と筋肉痛が悲鳴を上げている。

関節という関節からもバキバキ音が鳴りそうだ。



「ふぁー。やっぱ疲れてんな」

「C・S・C! 今日はぐっすりィ 寝ろよGood sleep!」

「おぅ。……ところで小作くん、例の泊まり先の件ですが……?」

「O・F・C! お前の手紙の通りィ しといたぜ用意ィ 部屋も超広いィ!」

「おっ! 待ってました!」


これは嬉しい!

実はフーリエを出発する前、小作くんには手紙でオススメのホテルの予約をお願いしていたのだ。ユークリド鉱石採掘の件で正直お財布は潤っているし、何より今回の旅はウルフ隊総出の大所帯。ってことで、金額には糸目をつけず広い部屋のあるホテルをリクエストしておいた。

その言動から変わり者と扱われがちな小作くんですが、やる時はやってくれる人間。さすがだ。



「O・Z・K! お前ら場所分かんないィ から俺も行くぜ案内ィ 俺に任さんかィ!」

「よろしく!」

「んじゃ行くぞォ Yes let's goォ!」











という事で、すっかりお昼寝モードだったククさん達(幼犬モード)を起こして僕達はマクローリン魔道具工房を出発。

扉を施錠、それと『外出中 すぐ戻ります』の木札を掛けた小作くんと一緒に大通りの流れに加わった。



「小作くん。仕事中なのに何から何までお願いしちゃって申し訳ない」

「Y・W・C! 心配なし! Problem Nothing! 俺もしたいからなオモテナシ!」

「ハハハッ、ありがとう。もし師匠に『お前サボってたな!』って怒られたら僕のせいにしといてよ」

「L・O・L! 出張ォ 中の師匠ォ サボリ少々ォ なんて気付かんっしょォ?」

「確かに」


むしろ師匠の出張と日が重なってラッキーだったな。

じゃなきゃこんなに話したりなんかできなかっただろうし。






さて、昼時の大通り。

職人の街ともあって、通りを歩く人の中でも工具を携えた職人率が非常に高い。何十パーセントくらいだろうか。

しかも面白いのはゴツいおっさん職人ばかりじゃなく、裁縫得意そうなお姉さん職人だったり、額ゴーグルの見習い青年職人、ヨボヨボながら謎の貫禄を放つおばあちゃん職人などなど……老若男女も職種も様々なことだ。本当に街全体が職人街なんだろう。

あとは商品の仕入れに遥々やってきた商人や馬車。ほんのわずかな武器を携えた同業者を見つけた時には嬉しさすら感じてしまったよ。


それはともかく、ホテルだホテル。

小作くんの選んでくれたオススメ、どんな所だろ。マクローリンにはそこそこの日数滞在する予定だし、ゆっくり寛げる部屋だと良いんだけどなー。






……なんて事を考えつつ、大通りを歩くこと5分。

前を歩く小作くんの足が止まった。


「C・S・C! 着いたぜ!」

「ん、ココ?」

「Y・U・P!」


小作くんが指差す先には、これまた同じくログハウスの一軒家。左の建物とも右の建物とも変わらない、街中に並んでいるスタンダードなログハウスだ。


しかし、まるで人気(ひとけ)がない。部屋の電気も点いていないし、なんなら看板すら掛かっていない。

ここ、ホテル?



「小作くん。もしかして……幽霊的なやつ?」

「N・O・T! 違うぜバッキャロー! こいつぁバンガロー! 一棟貸しのバンガローだぜC・S・C!」

「「「「「バンガロー!!」」」」


まさかまさかの一棟丸ごと!

……そうか、その手があったか!



「アレか、貸し別荘ってヤツじゃんか!」

「Y・E・S! 俺考えたァ どこのホテルもお前らじゃ手狭ァ ならバンガローでええやァン コレ名案ァン!」

「えーやんえーやん!」

「確かに。名案ね」


この家が僕達の滞在拠点……いい。最高だ。広さもあるし、大通り沿いで立地も良い。

予想を裏切られた驚きと、喜びと、貸し別荘という言葉の響きが生み出す背徳感。ちょっと震えた。



「K・E・Y! 借りといたぜ!」

「おっ、ありがとう」


小作くんから手渡された鍵を受け取り、早速玄関へ。

前方後円墳形の穴に鍵を差し込み、グルリと半回転。ガチャリと年季の入った音とともに扉を開く――――




「「おぉぉ!」」

「もうココ住めるぞ!」

「家そのまんまじゃないですか!」

「しかも広ぉーい!」


玄関の先に広がっていたのは、僕がまさに思い描いていた通りの『別荘』だった。


木材をふんだんに使った、大自然の温かみを感じる室内。

広々としたリビングにはテーブルと椅子、ソファにカーペット。壁際のキッチンには冷蔵庫もあり、食器棚には皿やコップがずらり。

リビングの扉から繋がる部屋は、ベッド3台が置かれた寝室。しかもベッド1個1個が大きい。

見上げてみれば、少年の好奇心をくすぐるロフト。梯子を登るとコチラにもベッドが3台。おまけにロフトの真上はガラス張りの採光窓のようで、夜ならきっと寝ながら星空が見えるんだろう。採光窓ォ最高かよォ、なんちゃって。

もちろん、バンガローには欠かせない屋根付きテラスもしっかり完備。椅子とテーブルでアフタヌーンティーも楽しめる。


「文句つけようがない。至れり尽くせりだ」

「Y・E・S! これがO・Z・Kクオリティ!」


その通りだ。やっぱりやる時ゃやってくれる男、信じて良かった。


そして確信した。この別荘なら、最高のマクローリン生活を送れるに違いない。

この作戦基地があれば――――『目的』も果たせる。取り返せる。



「小作くん。お前マジ神かよ」

「G・O・D!」






こうして、貸し別荘を拠点とした僕達の山岳都市・マクローリン生活が幕を開いた。

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