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――――ティマクス王国。
周囲を大草原に囲まれた、王都・ティマクス。
その街の、遥か遥か南。
見晴らしの良い草原が、次第に林となり森となり、鬱蒼と茂った樹海となり。
そんな深い森の奥に佇む、とある巨大な城。
その最上階、城主の部屋。
豪華な椅子に腰掛け、膝を組みながら――――城の主は、とある書物を手にしていた。
「これが奴の、力の根源か……」
紺色がかった濃青の表紙、タイトルと思わしき白色の文字。
所々にあしらわれた赤色の模様。
何百枚と続くページには、幾度も読まれて皺や折れが入る。
「……ふむ」
おもむろに表紙を開き、一枚一枚ページを捲る。
童話や御伽噺ではない。絵本でもない。
所々に挿絵こそあるものの、却って謎が謎を呼ぶだけ。
著された難しい内容に、彼の理解は追いつくはずも無い。
しかし、それでも城主はページを捲る手を止めなかった。
「……面白い」
そして、城主は――――あるページで手を止めた。
「これは……」
そのページもまた、他のページと何ら変わりのないただのページだった。
しかし、城主の目には確かに何かが映っていた。
「ほう…………」
何かしらの挿絵があるわけでもない、文字だけのページ。
何が書いてあるかは、彼には理解できない。
しかし、彼は確信した。
彼の、彼自身の力となりうる――――何かを。
「ククッ……ハッハッハ……ハッハッハッハッハ!!!」
深い森に佇む、巨大な城――――魔王城。
城主の部屋――――謁見の間に。
城の主――――魔王の笑い声が、こだました。
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