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~かつて失われし魔法をこの手に~
かつて失われた異能力があった。
普通魔法とは概念が異なる。いわゆる特殊に分類されるその異能は、戦いし者を戦意喪失させた。
幾ら戦えど、その異能は倒れることなく、進軍を行った。幾ら防衛してもその壁が破られることは無かった。
何万もの魔法を扱えど、その異能を破ることは不可能であった。
だが、その異能は数百万年に一度の厄災によって根源もろとも廃れてしまった。
最恐だと言われた異能が世界から抹消された瞬間であった。
瞬く間にその異能が消滅したという事実が噂として世界各地に広がっていった。
かつての支配者はこう言った。
『幻想異能が失われしこの刻こそ、我ら魔法士が旅立つときだ。存分に暴れろ。この地が、我が命が果てるまで……』
この先の言葉は何者かにもって隠滅された。
支配者が殺された瞬間でもあった。
しかし、この時は誰も知らなかった。
数万年後にその異能の再生者が現れることを……。