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25.戦士の咆哮2(レイサスside)

「グヲヲヲヲヲヲ!!」

「ガアアアアアア!!」


 ガンドフが叫ぶと同時に巨大な恐竜が飛び出してきた。守護魔だ。魔粒子を撒き散らしているので間違いない。


 大王亀の上に乗っている僕とさほど変わらない背丈。前回戦った岩の魔物と同じくらいのサイズだった。皮膚は至るところが焼けており、ダメージを負っているのがわかるが、致命傷ではないことも見て取れる。


 守護魔はまず近くにいたガンドフを獲物と認めたようで、巨体に似合わぬ動きで飛び掛かっていった。鋭い爪の生えた手で薙ぎ払う。


 一撃で決まるだろう。


 普通の人間が相手ならば。




 だが相手はガンドフ。幾多の戦いを乗り越えてきた猛者だ。しかも今は「戦鬼丸」を服用している。獲物は人間の方ではない。それに気付けなかった守護魔の負けだろう。


 魔物が繰り出した爪は腕ごと切り飛ばされて宙に舞った。自分の手がなくなったことに気付いたのか、悲鳴とも雄叫びともつかない声を上げる。


「グルルアアアアアア!」

 ガンドフも咆哮する。

 目は血走り、肌は黒っぽく変色。よだれを垂らしながら我を忘れたかのように恐竜へ次の一撃を繰り出す。ガンドフの攻撃は普段とは比べ物にならないくらい速く、強く、そして荒々しい。


 魔物は躱しきれず腹を横一文字に切られた。守護魔は反撃しようと反対の手を振るが、ガンドフは難なく避けてしまう。続けて繰り出された大きな尻尾による攻撃も地面すれすれを駆け抜けて躱した。


 尻尾を使った大きな動きで、守護魔が体勢を立て直す瞬間に僅かな隙ができた。人間では見つけることはできても対応できないくらい僅かな時間である。


 だが今のガンドフは一瞬を逃さない。普段ではありえないほどの跳躍を見せ、守護魔の脳天に斧の強烈な一撃を食らわせる。




 守護魔は頭を真っ二つに裂かれていた。


 即死だ。


 しかしガンドフは死んでいる守護魔になおも斧を叩きつける。訳のわからない唸り声を上げながら死体を攻撃する姿は普通の人が見たら恐怖するかもしれない。


 僕やスカイラー、ドナはその姿を悲しそうに見つめていた。少しするとガンドフの咆哮は収まり、肌の色も戻ってきた。戦鬼丸の効果が切れたのだ。スカイラーは駆け寄って、崩れ落ちそうになるガンドフの身体を抱きとめた。


「スカイちゃんか。すまねえな、薬が切れた直後は力が入らねえんだ」

「大丈夫よ。そんなことより守護魔は死んだわ。ガンドフ、あなたがやったのよ」

「ハハハハハ。別に記憶がなくなるわけじゃないって前にも言ったろ。倒したのは覚えてるって」

 会話をしながら狼の背にガンドフを乗せ、大王亀の上に運ぶ。普段はスカイラーしか乗せない狼の魔物だったはずなのに、ぐったりしている人間はちゃんと運んでくれるんだと場違いなことを思った。


 ともかく守護魔には勝利した。あっという間だった。


 作戦は完全にハマり、予定していた通りの結果になった。身体を動かすことはできそうにないガンドフだったが、口はよく回るらしく、ドナやスカイラーと勝利を喜んでいる。今回守護魔を倒せたのはガンドフとその切り札のおかげだ。




 ガンドフの切り札、戦鬼丸。



 毒薬である。



 僕たちがいる大陸の北東部から一ヶ月以上も南に行った南東部に小さな国がある。そこに研究所を構えている人物。古今東西様々な毒を研究している老人で変人が住んでいる。



 名をフリストスという。


 変人ではあるが魔物にも勝てる人間を造ろうという目的で研究をしているらしい。その過程でできたものが戦鬼丸だということだ。


 戦鬼丸は戦闘力を数倍に高めてくれる。その代わり多くの問題点を抱えていた上に高額であるため、流通するには至らなかったものだ。

 戦鬼丸を使っても強くなれるのはたった二分程度。

 使い終わると最低丸一日はまともに歩くことすらできなくなる。

 意識があるのに戦闘意欲には逆らえず、味方を攻撃することもある。

 毒により内臓を痛めるため、何回も服用しているといずれ食事も摂れなくなって死ぬことになる。


 戦鬼丸の存在をガンドフに教えたのは僕だ。


 ガンドフも強くなれるならと、一も二もなく使うことを選んだ。幸い、強靭な精神力を持つガンドフは味方を一切攻撃しない。二分間だけ敵を殲滅する狂戦士になるのだ。


 僕は皆に何かを犠牲にして強くなる方法を提示した。きっと誰も断らないだろうということをわかっていながら。皆は禁術や危険な薬に手を染めることになった。



 自分の命を削って強くなるのはドナもガンドフも同じ。これからも彼らは何の躊躇いもなく使っていくだろう。それを見届けなければならない。罪深い僕ができることはそれだけだ。



 僕の作戦のせいで引き起こした山の火災はまだ続いている。炎のせいで前に進むこともできない。ここより下や山頂付近は草木がない状態だから燃え広がることはないだろう。一晩もすれば鎮火する規模なので、今日はここで一泊することにした。

 ガンドフも動けないのでちょうどいい。スカイラーだって狼と共に炎の中を駆け抜けてきた。無傷とはいかないだろう。ドナも森を焼くため相当な魔力を消費したはずだ。


 守護魔を倒したからすぐに襲われる可能性は低い。



 まだ昼間だが、全員にここで一日休み、出発は明日の昼頃にすることを伝えた。


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