その1
数秒か...数十秒かもしれない。とにかくそれほど長くない感覚だが、フッと我に帰った。
真っ白い景色が見える限り果てしなく続く空間。360度見回しても障害物が全く無い。
いや、正確には足元に黒いペットボトルのキャップが直径50cm位になった様な円柱型の物体がある。
足でつついてみたが固定されているらしく微動だにしない。
そういえば何で裸足...あれ?俺って全裸じゃないか。(笑)
「ここは...?」そう思った瞬間、声が響く。
「世界の狭間、というかつなぐ世界。ここを介して違う次元の世界へ行けるんだよ。」
サットは俺の内部に居候している高次元生命体で、超博識だ。
内部と言ったが、実際は脳の一部に領域を作って居るらしい。
何でも数億年の間宇宙の記憶を蓄え続けていたと言ってたな。自我が芽生えたのはつい数千年前の事だと言うが。
あまり普段発言しないのだが、流石にナビゲーションしてくれるらしい。
「これからどこへ行くのかな?」
「君が行かなければならない世界へ。君の望む世界へ。」
なんのこっちゃ。意味不明なんですけど。え?行かなくちゃいけない世界?自由はないの?
「黒い突起に乗ってみて。」
サットは俺の思考を無視してそう言った。説明するより行った方が早いかな?
ここは何もないしな...。彼の今までの実績込みでそう思い直し、キャップの上に乗る。
今度は、全身を虫が這いずり回るような不快感が襲ってきた。
「うっわわわわわああああああー、気持ち悪いヤメロオオオオオオオオオオ...」
意識が遠退いて行く。どうやら肉体を再構築しているようだ。
サットの嘘つき野郎め。金縛りみたいに全身が動かない。
眼球だけ動かせるので、立った状態で必死に体の方を見ると体表がうっすら光っており、ぐにゃぐにゃに波打っているのが見えた。
それを確認した瞬間意識が飛んだ。