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最強クラフトで異次元無双  作者: 御自賛
11/22

その10

「さて、インナーサイトとやらを、やってみようじゃないの。」


ベッドの上に座りながら結跏趺坐を組み、背筋を伸ばした。顎を引き、瞼を閉じ、額の霊眼に意識を集中する。


「では、いくよ。」


サットの声が聞こえ、スッと無音になった。視界が一瞬変化し、丁度霊眼の位置辺りには淡く光るトンネルのようなものが見える。


「今見えているその光の空間を、前に突き進んで行くイメージをしてごらん。」


トンネルの先に向かって、高速で移動する。やがて光が強くなってくると同時に、無音のはずなのに細く高い響きのような音が聞こえてくる。より音と光が強くなり、やがて光の雲海を光速で進むような情景になった。


これだけ明るいのに、逆に精神は安定しリラックスしてくる。でも眠くはない。寧ろ意識だけは覚醒状態になり、冷徹なまでに状況が把握できるようになっている。


やがて更にまばゆいばかりの光量になり、それの影響で意識の境界線の様なものが薄くなっていくのが分かった。


自分という意識やアイデンティティが稀薄になっていく。なにも考えられなくなり、何でも分かる。眠ってはおらず、ただ、そこに在った。真白き光の奔流となって...


どれくらい時間がたっただろうか?数分かもしれないし数年かもしれない。とにかく境界線が、「俺」が戻ってきた。感覚がもとに戻り始め、手足が硬直しているのがわかる。まだ思う通りに体を動かせない。ゆっくりと手を握り開き、足を動かし、目を開ける。


朝方らしい。なんと言ったら良いか、ものすごく懐かしい感じがした。同時に、みなぎる活力と意識のあり方が変化している事がはっきり認識できる。体内を冷気のような、痺れの様な、総毛立つエネルギーが絶えず循環している。


「お帰り、まるっと10時間位溶け込んでいたね。」


「ただいま。久しぶりだなあ。」


「もうわかっていると思うけど、君の波動がこの次元では相当な高レベルに推移している。今感じている総毛立つ感じが、霊波とマナの奔流だよ。高次元のチャンネルに、繋がった証拠さ。」


「さっきまで、俺は消えていたな。」


「個我が霊的エネルギーの海に溶け込み、海水そのものになっていたんだよ。君は、霊的生命体のエネルギーソースと一体化していたのさ。生命の泉と呼ばれる次元だね。そこでは、そもそも自分なんてちっぽけなペルソナは剥がれ落ちて消えるのさ。」


「それじゃあ今俺と言ってるこれは?」


「神は、人間としての君の使命が終わるまで、残酷にも元の肉塊と個我の檻に戻さざるを得ないのさ。もっと修行が進んで、君のペルソナ自体が無限の海に順応できるように、つまり「俺」が「我々」になった時に、あちらでも意識をより明瞭に保って居られるようになる。さっきは真っ白で只々「在った」だけだったろう?」


「ああ、そんな感じだったな。」


「まあこれで、君は目的を達成できた。霊波とマナは君の中に溢れているぞ。」


クラフト画面を確認してみると、コンテンツが大分増えている。把握しきるには時間がかかるだろう。


何々、霊波バリアーだって?レイスフォーム?収束式超電磁力加速ライフル?超魔兵器クラフト?それから凄い件数の素材画像が。


なんだこりゃあ、なんか超ヤバイやつだ。(爆) 霊的進化って、こうなるんだなあ。


「後回しにしたら?さっきからお客さんが待ってるよ?」


ふと横を見ると、床に正座した状態のマニが、半泣きしながらこちらの様子を覗き込んでいた。


「おおおおーっ、ビックリしたあ!」


マニはスッと懐に入ってきて俺を抱きしめながら小さく震えていた。泣いているらしい。ちょっと呆然としてしまったが、俺は大体察して彼女を引き寄せ、抱きしめながら頭を撫でた。


「ああ、生きてて良かったわ。明け方前に、どうしても気になることがあって眠れなくて、相談しようとメッセージを送ろうとしたんだけど...あなたの何かが急激に変化している様に感じたから来てみたら、座った状態で息をしてないし、体を揺さぶっても返事もしなかったので、いきなり死んじゃったのかと思ったわ。」


「ああ、心配かけてごめんな。でも、何でそのまま放置してくれてたんだい?」


「あのね、信じてもらえるか分からないけど、神様の声が聞こえたの。大丈夫だから、そっとしておきなさいってね...」


マニは、不安そうな顔をしていた。神様?おいまさか...。


「ああすまんね。彼女は私が巻き込んだ。(笑)」


お前なあ、何て事してくれたんだよっ!俺のプロセスってもんがだなあ...


「もう、後戻りは出来ないね。彼女、私の存在を知っちゃったものね。」


「...結局俺の選択肢とか無いじゃん。」


「これに関しては良き友人のお節介と思ってほしい。彼女は、君にぴったりの伴侶になるよ。というか、この出来事抜きでこの次元に来た意味はないと確信してる。だから、強引に巻き込んだ。」


えええ、そんなに?そこまで重要な存在とは露知らずだった。...まあ、俺も好きだし可愛いからいいけどさ...。


「クラフターさん?」


「ああ、すまない。俺の事は、これからはマサと呼んでくれ。クラフターは偽名だ。」


「やっぱり。偽名は最初から分かってたわ。」


「マサと言うのも前の次元でのあだ名なんだけどな。でも君には、本当の名前に近い名を呼んで欲しいんだよ。家族とサヴィネ以外には内緒な。」


「何で本名は言えないの?」


「うーん、俺のコンプレックスだからかな。」


「名前が?どういう事なの?」


「俺のいた次元はね、名前自体に意味があるんだ。でも、つけられた意味が自分に合わないと感じる場合もあるんだ。君にはちょっと分かりづらいだろうけど。いつか、話せるときが来たら教えるさ。」


「分かったわ。さっきから次元とか言ってるけど、何の事?」


「まずその前に、紹介したい奴がいるのさ。ねえ、神様。」


「私は神とは言っていないのだがね。はじめまして、可愛いお嬢さん。サットと呼んでくれたまえ。」


二人の中に、サットの会話が響く。マニは俺の胸の中で驚いて大きくビクッと反応した。


「さっきの声だわ...マサさん、これはどういう現象なの...?」


俺はサットと喋るときのように、マニに念話で話しかける。


「マニ、喋らなくても会話が聞こえるだろう?俺達は体が触れ合っていれば、会話よりはるかにコミュニケーションがとれる様にしたんだ。」


「ああ、じゃあさっきから聞こえたり感じているのはマサさんの感情とか精神そのものなのね。情報量がメッセージの比じゃないわ。」


無言でマニは返してきた。飲み込みが早いのはメッセージのお陰だろう。


「それと俺の事はマサって呼び捨てでいいよ。」


「マニさん、彼と私は、君の今いる次元とは違う世界からやって来たのさ。私は高次元生命体だ。私の一部は彼の脳と同化していてね、そこに住んでいる。君が彼を愛するなら、私とセットだと言うことさ。分離は不可能なんだよ。これを見て。」


彼女の視覚を通して、前次元の風景や立体的な人体模型が投影され、サットの説明がビジュアライズされる。マニの新陳代謝が、ボッと燃えるように高くなる。彼女が、激しく俺を求めているのが伝わってくる。同時に、異物に困惑する感情も。


「私は人類の親のようなものだ。君達の霊的な進化以外のことではあまり口出ししないから安心して欲しい。普段はインナーサイト状態でね。彼の脳の内部に籠っているので、滅多なことでは外界を覗いたりしないから。

君が彼と生活するようになれば、何れは分かってくる事なのでね。最初から隠さないことにしたんだよ。」


「ええ、そうですわね。専門の言葉は分からないけど、伝わってくるから分かるわ。これでは時間の問題でしょうし何も隠しようもない事。サットさんの気持ちも伝わってくるから、嘘でないのも分かるわ。」


「ここまで知って、それでも君は俺のことを愛し続けられるかい?俺は、君が可愛くて仕方がないんだ。今すぐに食べてしまいたいくらいだよ。」


マニが喜びでうち震えていた。心臓が破裂する勢いで脈打ち、思いが伝わった事、相思相愛だった事、熱意、不安、過去、欲望、あらゆる情報が触れ合っているだけでお互いに混ざりあって行くのが感じられる。


そして俺のエネルギー状態が変化した影響で、彼女にとっては強すぎるパワーが直接注がれた。マニの体は次第に沸騰し、意識が混濁するほどの悦楽が彼女を襲った。


「ああ、マサ...言葉は要らないわ...何て、何て幸せなの...こんなにも...愛して...いた...溶け...ひとつ...に...」


マニは悦びの表情で身体中から体液を流し痙攣しながら、俺の胸の中で昇天して意識を失った。


性的とかいう次元の生温いエクスタシーではない。着衣のまま、ただ強く抱き合っているだけで、檻の中に閉じ込められていた魂同士のダイレクトな邂逅、境界を越えて、まぐわい、同化し、融合する。


人間が持ちうる全てのチャンネルでの凄まじい喜悦が、マニの自我を溶かし、生命の海(小宇宙)の一部に彼女を埋没させた。


存在は辛うじてこちらに残ってはいるが、しばらく戻ってこないだろう。俺がサットと同化したときと同じだ。


「あーあ、やっちまったなあ...もう、この子は普通の生活が出来ないぞ。どうするんだよ親父。(笑)」


「君だって今までで一番幸せそうだよ。顔が緩んでいるぞ?気をつけなよ、もうすぐ誰かがやって来る。」


気付けばもう早朝だ。俺の可愛いマニは、ホルモン代謝でテカテカになった体と、上下から体液を流して全身ぐしょ濡れになってしまった状態で、かろうじて虫の息を保っている。


えーと、この状態は親御さんには絶対見せられないな。(笑)


「身体洗浄、清潔化、着衣乾燥。」


クラフトモードで身だしなみだけは整え、ベッドへ寝かせた。あとはこの状態をどう説明するかだな。


無理矢理起こすと、今は外的な衝撃に対する抵抗力が皆無なのでおかしくなってしまうだろう。


出来れば誰にも触れられずに隔離しておきたい...。そもそも、俺の居る部屋のベッドに横たわっているだけで、メッチャ怪しいじゃないか。


マルタが部屋にやって来た。一目見るなり、何故か嬉しそうな声をあげた。


「まあまあまあ、幸せそうな顔をして!マニにもやっと春が来たのね...」


「あのー、今朝がたマニがベッドの脇に座っていてね...」


「知ってるわ。あなたが死んだのではとか言ってたから、私も見に来ましたからね。」


「どうせ分かるので告白しますが、マニと結婚する約束(?)をしました。その流れで抱き合ったら、彼女があまりの事だったのか気を失ってしまったんですよ...」


ま、嘘はついてないぞ。何をしたかまでは言ってないが。(笑)


「これは御父様には見せられないわね。こっちへ。」


マルタが機転を効かせてくれた。こっそりマニの部屋へ連れていき、ベッドに寝かせる。


マニの部屋は、意外にも女子の部屋だった。白色の家具が並び、花瓶に花が活けてある。大きな花柄の刺繍が入った絨毯が敷かれ、ベッドには手作りの馬?のぬいぐるみが置いてある。


サンドテクタイト壁の薄灰色とのギャップがあるが、案外まとまっていてお洒落だ。


「医者としての見立てでは、単に気を失っているだけかとは思いますが、あまり無理矢理起こしたり、動かさない方がよいかも。」


「大丈夫よ、病的ならこんなに艶々して満足そうな顔なんてしませんよ。まあ了解しましたわ。」


俺はそそくさと部屋を出て、ベッドに戻る。身支度をして、まだ誰もいない客間に移動した。マルタがお茶をいれて持ってきてくれた。彼女も珍しくティーカップを持って隣の席に座った。


「娘は元から結婚願望がとても強い子だったの。小さい頃は、勇者様が迎えに来てくれると本気で信じていたのよ。今の見た目からは、想像つかないでしょう?」


今は彼女が勇者みたいだがと、不謹慎なことを考えてしまった。(笑)


「御母様に認めて貰えるか分かりませんが、俺にとってマニは可愛い女性です。」


「少なくとも私はね、あなたとはぴったりだと思ってましたから。あの子の事を、愛してくださってありがとうございます。私も、とても幸せな気分よ。」


「親父様には、ちゃんと後で申し上げますので。」


「けじめだものね。でもね、多分あちらの方が私より喜ぶと思うわよ?ほら...」


「話は聞いたよ。よく決心してくれたね。」


村長が嬉しさ満面の笑みで、部屋に入ってきた。照れ臭そうに鼻頭を指で掻きながら、近づいてきてハグをした。


「今日まで生きてきて、これだけ肩の荷が下りたことはないだろうよ。あのじゃじゃ馬に夫が出来るなんて、今まで想像もつかなかった。」


「マニが気絶してしまってるので。二人一緒に相談するつもりでしたが、こうなっては先に報告だけさせてください。御父様、御母様、俺とマニは結婚する約束をしました。どうか、認めていただけないでしょうか?」


「我が一族に優秀な男を迎えることが出来て、我々は嬉しさで飛んでいきそうだ。ようこそ、我が息子よ。マニの手綱を操れるのは、お前以外いないだろう。しかしそれくらいで気絶してしまうとは、よっぽど君のことを...。」


事情はマルタからメッセージで聞いてる様だ。思わず今日はめでたい日になった。


肝心の相方が昇天してしまってはいるが、それとは別にこっちの夫婦も昇天しそうな喜び様だ。(笑) 一体どんだけ気苦労させてたんだよ俺のマニ子よ。


マデュレも部屋に入ってきて、空気を察して大喜びした。「とうとう決心してくれたんですね!義兄さん!」


「なんか照れるなあ、これからも宜しくね、マデュレ。こんなやつだけど世話になるよ。」


マニが大人しくなることでも期待しているのだろうか?(笑)まあ切実だったのだろうなあ...。


しかし問題は、まだ山積みだ。これから先の未来や俺のスタンスを、マニと相談しながら確立していかなければならない。決めなければならないことが多すぎる。焦っても仕方ないよな...。



ふらつきながら、マニが部屋に入ってきた。酩酊している様で、さっきの艶かしいまんまで顔がのぼせたように赤く、浅い呼吸で何かを探すように俺に近づいて来た。


座っている俺の膝の上にまたがり、相向かいになった状態から手と足でしがみつくように抱きついて、ねっとり絡みつくようにディープキスを始めた。おーい、マニ子よー、家族がドン引きしてるぞー。(笑)


流石にマルタが怒った。鬼の形相でマニを引き剥がすと、有無を言わさず襟首を掴んで引きずっていった。男三人は唖然としてそれを見ていた。何かうわ言のように「まだキスもしてないうちからー」とか言ってた気が。今してたんだが。(笑) 


初体験であのレベルの快楽を味わったのだし、そりゃおかしくなるかな。故意ではないんだが、ああいう刺激は人によって脳内物質や内分泌が乱れ、麻薬みたいな状態になるとサットが情報をくれた。


「ま、まああんな娘ではあるが...」


その先の言葉は出てこなかった。村長、正気を保ってください。(笑)あれはサットと俺のせいですから。


「ちょっと普通ではないようなので、様子を見てきます。もしかすると、ホルモンのバランスが一時的におかしいのかも知れないから。」


「そ、そうだな。私も行こう。」


あーほらあ、一気にお通夜みたくなっちゃったぞマニ子よ。部屋を出るとき、マデュレは両手で顔を覆い下を向いていた。


何か叫びが聞こえて来るので、そちらへ向かった。台所に入ると、マルタがマニを折檻している最中だった。鬼の形相でマニに平手打ちを食らわせている。


「あなたをそんな子に育てた覚えはありませんよ!大事な話の時に、あんなことをしでかして母さん情けないわ!」


すごい勢いで往復ビンタを食らわしているんですがそれは。何故だろう、マニの腫れあがった顔がより恍惚となり、気持ち良さそうに見えるのは俺だけだろうか?(笑)


村長と一緒にマルタを羽交い締めにする。御母様、彼女は犯罪をした訳じゃありませんからと、メチャクチャな説得をして落ち着かせる。


マルタに深呼吸を勧め、俺はそれでも彼女を愛していますと言うと、その場でへたりこんでしまった。


マニは倒れて鼻血を流したまま、仰向けに転がっている。


とりあえずマルタを抱え起こし、御母様を頼みますと村長に預け、治療しますから安心してと言い残してマニを彼女の部屋に運ぶ。


まず叩かれた外傷を治療しようとして驚く。既に傷も腫れも退いている。


あっ、まさかこれは...


「おい、これはもしかして俺と同じに?」


「そうだよ。クラフトは使えないけど寿命やマナ・チャネリングのレベル等は同じにした。」


「この現象はどういう事なんだろう?」


「彼女の体質を君に近づけると同時に今可能な情報の共有化をしたのだけど、感覚共有した時にこの人種の性質上デリケートらしく、すべての刺激が快楽的な方にスイッチしたのだよ。」


「まあクラフトで何とかなるかな。」


そう言っている間にも彼女は両腕を俺の首に回し、無言で口づけをせがんでくる。理性は飛んでしまっているようだ。


俺は彼女を強く抱きしめると、長くディープキスをした。彼女は一瞬目を見開き、それから涙を流しながら強く抱きしめ返してきた。


触れ合った彼女からは、1度溶け合って離れていった自分の半身(俺)を探し求める彼女の切実な精神状態が喪失感と欲望と共に伝わってきた。これはもう、メンタルの問題なのかも知れない。


「とりあえず彼女の欲求を満たしてあげればと思う。俺とつがいでなければ満たされないんだ、この人は。後は徐々に感覚をリアル方向に誘導するようにしよう。ナビゲーションは任せた。」


「任された。」


彼女を抱いたまま、分子クラフトで都合の良さそうな隔離部屋を作ろうと探した。ここでは流石に、色々まずいだろうから。


すると「次元倉庫拡張」と、「次元空間利用」というカテゴリーが増えていた。空間利用の方で「次元部屋」というのがあったので、アクティベートしてみた。


すると、部屋の中央に光るエネルギーの扉が出てきた。近づくと、自動で横スライドする。


彼女を抱えて中に入ると、日本式の賃貸マンションみたいで花柄の壁紙が綺麗な、まだ家具もない8畳位の部屋だった。


トイレや風呂、クローゼット、小さい台所も完備されている。靴を脱いで部屋に上がり、クラフトでベッドを作って寝かせる。扉を見ると、既に消えている。


次元の扉なので、俺が許可しないと扉が現れない。そうだ、家族に言っておかないと。


部屋を出ようとすると、マニが離してくれない。耳元で静かに「マニ、愛してる。すぐ戻ってくるから、待ってて。」と囁くと、力が抜けた。


赤ん坊のように、離れていく俺に手を伸ばそうとする。手の甲にキスをしたら、満足そうに笑っていた。


玄関に立つと、さっきの扉が。元の部屋に戻ると、客間まで移動する。三人が朝食もとらずに座っていた。俺に懇願するような眼差しを向けてくる。


「やっぱり、内分泌が一時的に不調なようだね。今は安定していますよ。これから、新鮮な空気を吸わせて落ち着かせるために外出して来る。20分位だから、安心して。お腹も空いているだろうし、食事でもされてはいかがです?」


「よくわからないけど、あの子は大丈夫なのですか?」


マルタが心配そうに質問してきた。さっきよりは落ち着いたようで、理性的な眼光になっている。


「多分もうすぐ正気に戻りますよ。御母様、俺に任せて。」


マルタの手を両手でそっと握りしめた。少し安心した様子で頷くと、台所に戻っていった。食事を作るつもりなのだろう。村長とマデュレが同時に「お願いします。」と言った。俺は部屋を出ながら振り向いて「大丈夫。」と返事した。


次元部屋に戻る。マニは大人しく待っていた。理性が緩んで、子供みたいになっているだけなんだな。汗まみれの服を脱がせて、一緒にシャワーを浴びて体を洗い、ベッドに入る。実は再婚なので、こんなこと造作もない。


二人でひとつになりながら、もう一度彼女の体を調節するための治療をする。抱きしめた掌を背中の副腎の位置に当ててエネルギーを流す。


この空間は、丸一日過ごしても外では5分位しか経っていないらしい。20分と言っておいたから、4日間は二人きりで過ごせるな。マニが元に戻ったら、この部屋の事は何て説明しようかなあ。

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