表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先輩の彼女  作者: 槇 慎一
3/12

3 それは絶対、彼女でしょ


 音楽大学の近くには、ランチができる店はたくさんある。駅の向こうまで行けば別の大学もあり、食べることには困らない。俺は練習時間や勉強時間を考えて、ほとんど学食に行った。


 音大はクラス単位の授業が多い。男子皆で学食に行くと、槇先輩がいた。一緒にいるのは先輩方だろう。

「あ、高橋」

「槇先輩、こんにちは」

「こっち来れば」

「ありがとうございます」 

 槇先輩と仲良くなりたがっていたクラスメートが、たちまち元気になって先輩方のテーブルの近くに席を取った。槇先輩はもちろん他の先輩方も、俺達皆に優しかった。

「男同士仲良くしないとな。二年生も、ピアノ科男子はこの学年でこれだけだし」

 やはり、共通認識なんだと皆で笑った。


 それからまた女達がやって来て「槇君!槇君!」と、学食はたちまち賑やかになった。槇先輩は「ごちそう様、お先に」と、サッと席を立って何処かに行った。行動が早いな。


 

 放課後に大学内にある楽器店に行くと、槇先輩がいた。まるで後をつけ回しているみたいだ。流石に恥ずかしくなって、真面目に挨拶をした。

「こんにちは」

「あぁ、よく会うな」

 槇先輩は笑った。俺は何と言っていいかわからなかった。

「先輩は何を?」

「あぁ……生徒の楽譜を、ちょっとね。僕とはタイプが違うし」

「レベル的には、どんな感じなんですか?」

「この辺りか?まぁ、趣味だから。専門には進まないだろう」

「そうなんですか?意外です」

「普通の家はピアノより勉強を優先させるんだろ?」

「あ、そうですね。てっきりピアニストを目指すのかと」

「そうだと、僕も嬉しいけどね。手も大きいし、音色が豊かで表現力がある」

「最高の彼女じゃないですか」

「『彼女』じゃないから」

 先輩は、モシュコフスキーの上級者向け練習曲の楽譜を買って出て行った。趣味でもそれだけ弾けるレベルの生徒なのか……。


 聴いてみたい。そんな機会はあるだろうか……。俺が好きな槇先輩の彼女。興味をそそられた。















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ