後編
そこにはサルジがいた。変わり果てた姿のサルジが。
サルジの首から胸にかけての部分が巨大な爪痕のように切り裂かれていた。遺体は仰向けで恐ろしい表情で虚空を見つめている。大量の血が彼の上半身の周りを水溜まりのように真っ赤に染めていた。
「ああ! なんてことだ……」
レイは思わずよろめいて建物の壁にもたれかかる。僕はそれに構うことなくすぐさまサルジの遺体の側に近寄った。
首から胸にかけて四つの傷があり、それは均一な間隔で刻まれている。致命傷になったのは首の傷だろう。恐らくこのせいでサルジは声を上げて呻く事もできず事切れてしまったのだ。右手は左腰にかかっている剣に触れていたが、剣は鞘から抜かれておらず恐らくは不意を突かれたのだと考えられる。
「そ、そのおぞましい爪の痕…! あぁ、やはり噂は本当だったのか!」
レイは頭を抱えて地面に崩れ落ちる。
「こ、このままでは、私たちも恐ろしいドラゴンに殺されてしまう!」
レイは哀れにも身を震わせながら地面にうずくまっている。
僕は大きな恐怖に駆られながらも、あくまで平静を装いレイの側にそっと近寄った。
そして、僕は彼に剣先を向けた。
「……え、な、なんの悪ふざけですか? ロイドさん?」
僕は確信を持った表情で変わらずレイに刃を向け続ける。
「レイさん……あなたが二人を殺したんですよね」
僕がそう言うと、レイは何を言っているのか分からないと言わんばかりの表情で僕を見つめる。
「な、なにを狂ったことを! あなたも見ているでしょう! ボルドが突然恐ろしい炎で殺されたことも、サルジが大きな爪で引き裂かれている事も!」
この期に及んで必死に無実をアピールするレイに苛立ちながらも僕は話を続けた。
「僕はボルドさんの時からこれは人による殺人である可能性を考えていました。そして今回のサルジさんの件で、あなたが犯人であると確信を持ちました」
レイがまだ何か弁明を言おうとしているので僕はそれを遮り説明を続けた。
「まずボルドさんの件。あのとき、僕が一人で現場を調べていたことは覚えてますよね? 燃え跡をくまなく調べていたら大きな発見があったんです。……それがこの植物の燃えかすです」
僕はポケットから植物の燃えかすを取りだしレイに見せた。
「それのどこが大きな発見なんですか? あの一帯には植物なんてそこら中にあったじゃないですか!」
「この燃えかすは炎の中心から少し離れた場所にまとまった状態でありました。これは枯れた植物の葉や繊維をいくつも重ねたものであったものが燃えることでまとまった灰になったと推測できます。つまり、火を点けるための火種として用いられた可能性がるのです」
レイの眉間が少しピクリと動いた。僕はそれを見逃さなかった。
「……しかし、ロイドさんも調べたのなら分かっていると思いますが、あの周りに人を燃やせるような燃料が使われた形跡なんて見当たりませんでしたよね? 火種だけではあの規模の炎はできませんよ?」
「その通りです。でも、燃料は使われていたのですよ。アルコールです」
「……!」
「レイさんは言ってましたよね。あのときボルドさんは体を洗うために備蓄の水の入った樽をもって持ち場を離れた、と。もしその樽がアルコールの入った樽にすり替えられていたとしたら? そんなことを想定していないボルドさんは気づかず頭からアルコールを被り、その直後に火種を放り込めば火を燃え上がらせることは可能です」
「アルコールや水などの食料品は初日からレイさんが率先して全て管理していましたよね。僕らはそれに任せっきりだった。すり替えを行うことができる可能性が高いのはレイさんです」
「……そこまで言うってことは、アルコールの樽が使われた証拠も握っているのでしょうね?」
レイは淡々とした口調で僕に問い詰める。レイの表情もその口調に合わせるように段々と冷酷なものへと変貌していった。
「はい。今日の夜の見張りのとき、備蓄の樽を確認しました。『右から三番目と四番目の樽にアルコールが入ってる』んでしたよね? 三番目の樽には水しか入ってなかったですよ。無論他の樽に紛れてもなかった。つまり、アルコールの樽丸々一つ分が備蓄から無くなっていたんです。おかしいですよね? あのボルドさんがいくら大酒飲みだったとしても、二日で樽を消費するほど飲んでる様子はなかったですよ」
「他にも違和感を感じる点があります。僕は残されていたもう一つの樽のアルコールを試しに口にしてみたんです。明らかにこの国で飲まれているものより度数がはるかに高いものであることが分かりました。あくまで食料用のものなのにここまで純度の高いアルコールを用意する理由が分かりません。そもそも水とアルコールの樽に区別しやすい目印を付けていないのも管理をする上では不自然ですし…」
「ま、待ってくれ! サルジは? サルジの死体はどう説明するんだ? 見ろよ、明らかに大きな爪で切り裂かれたようにしか見えないだろ! 人間の私には不可能だ!」
レイはサルジの遺体を雑に指し喚いている。僕は募る怒りを抑えるようにしあくまで冷静に説明を続けた。
「サルジさんのあの傷跡を僕はさっき近くで確認しました。確かにこの傷跡は一見巨大な生物の爪痕のように見えます。しかし、この首から胸にかけての四つの傷をよく見ると、傷の深さや大きさがほぼ同じなんです。変ですよね、これが生物の爪によるものならそれぞれの指や爪の長さに対応して傷の付き方が違うはずなのに。そう考えると四つの傷がほぼ均一にできているのはおかしいですよ」
「で、でも! 一度に四箇所を剣か何かで切り裂くのは不可能に決まっているだろう!」
「何も一度に傷を残す必要はないです。サルジさんの致命傷になったのは恐らく首の傷です。先に首を切り裂いて、絶命した後に残りの三ヶ所に同じような傷が残るように切ればいいのですから。だからこそ、どれも似たような傷跡になってしまったのだと思います」
「足跡! ここにサルジ以外の足跡がないのはどう説明する?」
「ガーディス山一帯はこの季節酷く乾燥していて足跡が残りにくいです。おまけにそこら中に枯れ木の葉や枝が地面を覆っているので、隠したり工作することも可能だと思います。史跡に入る時も、靴やズボンに多少付着した葉や枝を払えば痕跡は残りにくいですし、そもそもこれが計画された殺人ならスペアの靴を用意してそれを用いることもできます」
「……」
「僕の説明は終わりです。二人はドラゴンに殺されたんじゃない、これは殺人だ! レイさん、あなた以外に怪しい人がいるならどうか教えてください」
僕は心のどこかでまだレイを仲間だと信じたい思いがある。しかし、僕の推理が正しければ殺人の実行犯はレイだ。そして、このドラゴン討伐の本当の目的は…。
「……全く、何であの時あなたは早く起きてしまったのですか?」
レイは僕に笑顔を向けてそう言った。それは今まで見たことのないような冷徹で歪んだ笑みだった。
「見張りの交代の時間まで素直に寝ていれば、まだ苦しまずに死ねたものを…」
レイは勢いよく立ち上がると、目にも止まらぬスピードで鞘から剣を抜刀し僕に構える。そのあまりにも無駄のない機敏な動きに怖じ気づき、僕は思わず数歩後ずさってしまった。
「やっぱり…あのときキャンプに戻ってきたのは、最後の一人である僕を寝てる間に殺すつもりだったからなんですね…!」
レイは問答無用で剣を振り下ろす。僕はそれを何とか回避して自分の剣で応戦するが、僕の攻撃は読まれているのか軽々と流されてしまう。
「ああ、全くとんだ誤算だったよ。一番間抜けそうなお前がまさかここまでのキレ者だったとはな。最初に殺しておくべきだったのは、あのデブじゃなくてド腐れウィル族のお前だったんだなぁ!」
レイの反撃を僕は何とか剣で弾くが、その威力はけた違いで僕は大きく押されてしまう。
「な、なんで、僕らを狙ったんだ! 目的は何なんだ!」
レイはニヤリと笑うと強烈な斬撃を繰り出した。僕は弾き飛ばされるように後方に転倒してしまう。
「キレ者のお前ならもう大体は察しが着くだろう。まぁ、冥土の土産に教えてやるよ」
レイが不気味に笑いながらコツコツと近づく。僕は慌てて起き上がり攻撃に身構える。しかし、今の一撃で右肩を強く打ってしまい剣を持つ手に上手く力が入らない。
「ドラゴン討伐なんてただの建前だ。この任務の本当の目的は、ガランド国にとって邪魔物でしかないお前達を秘密裏に抹殺することだ。そのためにドラゴンの噂を利用してお前達を集め、この史跡を処刑場にしたってわけさ。つまり、俺の本当の正体はお前達の死刑執行人ってわけだ」
やはりサルジの読みは正しかった。この任務には裏があった。それもとてもおぞましい裏が。僕は怒りと悲しみで涙が滲むのを必死に拭ぎ払った。
「一体なんで…なんでこんな酷い仕打ちを……!」
レイが再び激しく攻撃を繰り出す。僕は先程のように弾いて応戦しようとするが、肩を痛め上手く力が入らないためすぐにまた後方へと弾き飛ばされてしまった。僕は後方にある建物の壁に体を激しくぶつけ地面に倒れる。全身に耐えがたい鈍痛が走る。
「お前達は我が国の裏切り者だ。特にお前のウィル族は独立の名目でテロ行為を国内で繰り返している。ロイド・キャルベン。お前は衛兵の身でありながら度々同胞の罪に目を瞑っていたらしいな。やつらの肩を持つお前などもうこの国には不要だ」
僕は全身の痛みに抗うよう歯を食い縛りながら立ち上がり、再びレイに剣を向ける。正直、このままでは勝てる見込みはない。それでも、僕はこんなところで諦めるわけにはいかないのだ。
「こんな身勝手に人を殺しておいて、絶対に許してたまるかよ!」
僕は雄叫びを上げレイに飛びかかる。僕の渾身の攻撃にレイは多少気圧されるが、すぐに体制を立て直し僕の攻撃は軽々しく弾き返されてしまった。
弾き返されたことで僕はとうとう手を剣から離してしまい、僕の剣は大きく宙を舞い遠く離れた地面に突き刺さる。これで僕は丸腰。レイはまだ余力すらあるだろう。いよいよ絶体絶命だ。
「おかしなやつだ。仮に俺から逃れたとしても、我が国はお前を逃しはしないだろう。どうせ逃げても死あるのみだというのに、なぜ未だに抗おうとする?」
「諦めたくないからだ。無惨に裏切られ、殺された二人のためにも。家で僕の帰りを待つ家族のためにも。僕は諦めたくないから戦うんだ!」
レイは呆れたように溜め息を吐くと、大きく剣を構える。恐らく、最後の一撃を放つつもりだろう。僕はどうするべきか考えを張り巡らせるが……。
その時だった。
何かが落ちたような音が突然辺りに響くと、僕たちの立つ地面が地震のように大きく揺れた。その衝撃で僕もレイも体制を崩してしまう。
「な、なんだ?」
すると今度は重たい地鳴りのような足音が段々とこちらに近づいて来る。それは、すぐ近くの森の方から来ているようだ。
「そ、そんな…… 嘘だ! 嘘に決まってる!」
明らかに動揺しているレイの視線の先に目をやると、そこには信じがたい光景が広がっていた。
その全容は今まで見たことのあるどの大型の生物よりも巨大で、顔だけでも僕らの何周りも大きかった。長い尻尾は森のはるか奥まで続いているように見え、左右の手には僕らを八つ裂きにするには十分であろうほど鋭利な鉤爪が備わっていた。背中の立派な両翼は広げるとこの空を覆わんとするほどで、僕とレイはそれが落とす影に包まれた。
「こ、これがドラゴン……!」
僕が呆気にとられていると、その巨体からは想像できないほどのスピードでドラゴンは振りかぶり、レイをその鋭利な爪で引き裂いた。
「グボッ……た、だずけ…」
言い切る前にレイの体はバラバラと崩れ落ち、無惨な肉塊と化した。
ドラゴンは体の芯まで響くほどの低い唸り声を上げながら僕を睨み付ける。
「くっ、次は僕の番か…」
為す術もなく僕は地面に座り込んだまま力なく目を瞑る。ああ、僕もレイのように殺されてしまうのだろう…。
<ウィル族の青年よ、恐れるでない>
僕の頭の中で聞き覚えのない声が響く。恐怖のあまり幻聴でも聞こえてるのだろうか。
恐る恐る目を開けると、ドラゴンは僕を見ているだけで、何もしようとはしていない様子だった。
<私は君の味方だ。もっとも、ウィル族の人間と会うのはもう何時以来かすら覚えていないが……>
再び僕の頭の中で声がする。まさか、このドラゴンが僕に語りかけているのだろうか。
「今、君が僕に話しかけているのか…?」
<ウィル族の特権だ。友よ>
「ど、どういうことだ?」
<混乱するのも仕方ない。まずは場所を変えよう。私の背中に乗るといい>
ドラゴンは自分の背中に乗るようにと目線で合図を送っている。
僕はその大きな体を何とかよじ登り、両翼の間の背中に体を置いた。
<飛ぶぞ。振り落とされないようしっかりと掴まっていてくれ>
ドラゴンはその大きな翼をさらに大きく広げ、僕を乗せたまま空へと飛び立った。
風の抵抗から必死に耐えながら僕は辺りを見渡す。
ガランドの色彩豊かな美しい山々が遥か上空から一望できる。まるでこの世のもとは思えないほどの絶景に、僕は言葉が出なかった。
しばらくすると、ドラゴンはガーディス山の山頂の一角に向けゆっくりと降下を始めた。
最初はそこには何もないように見えたが、降りるにつれ小規模な遺跡のような建物が現れ始めた。
遺跡の前の比較的なだらかな地表に着陸すると、ドラゴンは降りるよう目配せをしたので僕は背中から降り、目の前の遺跡に近寄った。
この遺跡は何かを祭る祠のようにも見える。そのすぐ隣には記念牌のようなものが建てられており、長い年月によって掠れてはいるが、昔のものと思われる文字が刻まれている。
「これは! 昔のウィル族が使っていた文字だ!」
<そうだ。書いてある内容は分かるか?>
「……『我ら誇り高きウィル族と、偉大なるドラゴンの永遠の友情の証をここに記す』と書いてあると思う」
<その通りだ。君達ウィル族と私は、その記念牌の書かれてある通り深い絆で結ばれている>
僕は振り返りドラゴンを見つめる。先程までとは違い、ドラゴンは幾分か穏やかな表情で遺跡を眺めているように見える。
「僕はそんな話、初めて聞いたよ。昔に何があったんだい?」
<遠い昔、私は幼い竜の子だった。私を産んだ両親は人に災いをもたらす竜と恐れられ、様々な人間から攻撃を受けて段々と衰弱していった。両親が居なくなると、私は孤独と飢えと人間への恐れに苦しみながら山の中で身を潜めた。ある日、私はこの一帯に住んでいたウィル族達に見つかった。私は両親のように殺されるのではないかと恐れていたが、彼らは私を傷つけるどころか優しく保護してくれた。私は大人になるまでの大半を、君が居たあの遺跡の都市で過ごしたんだよ>
なんとも信じがたい話だ。この遺跡も、僕たちが調査していたあの都市もウィル族によるものだったというのだから。しかも、遥か先祖のウィル族はこのドラゴンと共に生活を営んでいたと言うのだ。まるでおとぎ話の世界の話に聞こえる。
「その後、僕の先祖達とあなたはどうなったの?」
<しばらくは平穏で幸せな生活が続いていたよ。しかし、長くは続かなかった。ウィル族がドラゴンを匿っているのではないかという噂が広まると、ウィル族は次第に迫害されていった。現在のガランドを支配している帝国が顕在すると、彼等は噂を利用し圧倒的な武力をもって侵略を開始した。私とウィル族は彼らの武力の前には歯が立たず敗北は避けられなかった。私はウィル族に私を置いて逃げてほしいと提案した。共に行動してしまえば離れた土地でもまた迫害を受けてしまうからだ。彼等は何度も拒否したが、最終的には納得してくれた。そして彼等は都市を放棄しガーディス山から離れると共に、私とも別れを告げたのだ>
「僕の先祖と君の間にそんな過去があっただなんて…。まるで伝説を聞かされてるみたいだよ」
ドラゴンは視線を下に降ろし、目を細める。当時を思い出しているのだろうと僕は感じた。
<その後は私も帝国軍に狙われぬように山から離れ、人の及ばぬ地で暫く暮らしていた。しかし、私はこの山で過ごしたあの暖かい日々を忘れられなかった。ほとぼりが冷めた最近になって、私はウィル族との思い出を懐かしみたいと考え、再びこのガーディス山に戻ったのだ>
この話が本当なら、最近になってドラゴンの目撃情報が相次ぐようになった事とも話が合う。しかし、このドラゴンはとても人を惨殺するような性質ではない。人が殺された噂は後に付いてきたものか、もしくは僕たちの暗殺を実行するための作り話だったのだろう。
<再びこうしてウィル族の末裔と巡り会えるとは夢にも思わなかったよ。運命とは数奇なものだな。さて、友人よ、私が君の味方であることはこれで信じてもらえそうかな?>
「もちろん、信じるよ。ところで、僕の方の自己紹介はまだだったよね。僕の名前はロイド・キャルベン。君の事はなんて呼べばいい?」
<昔のウィル族は私の事をアリスターと名付けてくれた。ロイド、君もぜひそう呼んでくれると嬉しい>
「オーケー。よろしくね、アリスター」
一瞬気が緩みかけたが、僕はふと今日までの事を思いだし我に帰った。仲間が国に騙され殺されたこと、そして生き残った僕も今後命を狙われるであろうという現実に強い恐怖と憤りが沸き上がる。
<顔色が良くないぞ、ロイド。さっきまで殺されかけていたんだ、無理もないな。私に何かできることはあるか?>
「…アリスター。僕は今、国から命を狙われている。さっきは君のお陰で何とか助かったが、今後は国中の刺客から命を狙われることになるだろう。そうなると、とてもじゃないが僕だけじゃ太刀打ちができない。出会ってばかりなのに図々しいかもしれない、でもどうか助けてくれないか」
僕は真っ直ぐアリスターに目を向けて訴える。アリスターは優しく目で微笑むと、再び背中に乗るよう僕に合図を送った。
<もちろんだ。ならば、まずはここから離れなければな。いずれ追っ手がやってくるだろう>
僕も静かに微笑んで頷くと、再び大きなアリスターの背中に身を乗せた。
<さて、どこへ行く? 何か考えはあるのか?>
「まずは、僕の身を案じてくれてる家族のもとに帰りたいな。その街はウィル族の街だから、まだ比較的帝国の目からは逃れやすいはずなんだ。それに、仲間のみんなにアリスターの事を教えてあげなくちゃね。きっと仲良くなれるはずだから」
<何とも複雑な気分になるが、ぜひ私もその街に行きたいな>
「それは良かったよ。それじゃあ行こうか、アリスター」
こうして僕はアリスターのお陰で命ある状態でガーディス山から脱出する事ができた。今後どこまで帝国の恐ろしい魔の手から逃れる事ができるのかは分からない。しかし、犠牲になった二人のためにも抗うことをやめはしないだろう。生きて生きて、生き抜いてやる。
気づけば眩しい朝日が僕とアリスターを照らしていた。その中で、僕とアリスターは街を目指してどこまでも空を駆けていくのだった。