表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したら、妹が増えた  作者: 鈴木すばる
6/8

6話 トマト凄い!


                       6話



「ようこそ来てくれた、吾輩の畑へ!」

おい、なんだよこのおじさん。

俺たちの目の前にとんでもない人がいた。両目で眼帯をつけて、腕の全体に包帯が巻いて、まさに中二病の典型だった。

「かっこういい!」

「その腕、どうしたの? 何で眼帯が二枚もあるの?」

妹たちが感動しつつ、目がキラキラと輝いた。

「知りたいか、吾輩がまだ冒険者だった頃の話? 長くなるよ?」

「知りたい!」

「凄く知りたい!」

「なら、語ろう! 吾輩の名はサバスティアン・フォン・ギデゥルバーグ。高レベル冒険者だったが、ドラゴンにこの傷が与えた。それから、ずっと農業の道を歩いた」

早い!


「じゃ、その傷は本物なのか?」

よく考えると、これは異世界だ。俺たちだってゾウに襲われたことがある。ドラゴンだっていたら、不思議ではない。でも、俺の問いに、サバスティアンは首を傾げる。

「本物な訳ないじゃないか? 頭、大丈夫か?」

「お前にだけは言われたくない!」


俺はため息をついて、頭を冷やした。

「ギルドの依頼を受けて、ここに来たけど、具体的にどうすればいいのか?」

「そうだよね、本当に助かる。農業ってつまらなくて、冒険の方が金になると思う人が多いから、人手が足りないな。ギルドから聞いたけど、お前らはまだ初心者だよね? 先ずは魔法の基本を覚えなきゃいけない。農業といえば魔法! 魔法といえば農業!」

突っ込みたい所がいくつあるけど、とにかく、やっと魔法を覚えるね! さすが異世界だ!


「じゃ、お前らの魔法属性は何だ?」

センは決めポーズを取った。

「私は水魔法の使い手で、冒険者レベル2だ!」

「俺の属性は土魔法みたいだけど、魔法を使ったことがないから、よく分からない。それで、ハナは……」

「えーと、魔法の才能はないみたい……」

ハナは目を逸らした。

「それでも問題ない。安心して! 収穫の方を手伝ってけれたらいいんだ。他の二人は吾輩が魔法の正しい使い方を教えてあげる。よく見てくれ」

と、サバスティアンは左の眼帯を外した。

「魔法を使う時に眼帯の封印を解くよね? なるほど、なるほど」

センが憧れの目で見つめていた。

「いや、こうしないと何も見えないから」

「そうだよね」

センはがっかりして、顔を伏せた。


「では、始めよう! 【プルプルプルリン、トマトが食べたい】!」

その詠唱、すごく恥ずかしいけど⁈

そう思うと、俺たちの周りにトマトが一瞬で生えた。

「すごい!」

俺だって感動した。その痛々しい言葉だけで、こんなにトマトが生えたとは。前の世界では絶対に不可能だったけど、この世界では何だって可能だ。少なくとも、その気がした。


サバスティアンはトマトを手に取って、俺に投げた。

「あああぁぁあ! 目が! 目が!」

そう、俺の顔はトマトジュースにまみれた。

「何でトマトなんて投げたんだんだよ⁈ ふざけんな!」

「冒険者にとってトマトはとても大事だよ。これは第一の授業から、よく聞け。もし、お前がモンスターだったら、トマトのにおいに耐えられなくて、逃げたのだろう。トマトはモンスターの天敵だ。だから冒険者にとってトマトは大事な道具である」

「本当に? トマト凄い!」

と、センがトマトを手にした。

「ちなみに、先のお嬢ちゃんはどうした? お前には双子がいたよね?」

フッと気づいたけど、ハナはどこにも見当たらない。

トマトって、凄まじい。

「き、きっと、トイレにいただけで、すぐに戻るだろう……」

俺は全力で誤魔化そうとした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ