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それは、黒と白の世界。
境目は曖昧。
君に導かれて辿り着くことが出来た、唯一の場所。
存在を許された空間。
そういえば、もう随分前から意識がはっきりとしない。
感覚は、まるでない。
まるで夢を見ているよう。
あれから一体どれくらいの間、自分はこうしているのだろう。
鮮やかな空の青。
緩やかな白の流れ。
世界を染め上げる紅い光。
闇の中を瞬く、ささやかな輝き。
まるで、海の中にいるかのよう。
泳ぐ事もなく、ただ、ゆらゆらと揺れて、水面に映る景色の変化を眺めている。
薄桃色の花びらが舞い。
猛烈に照りつける日差しを浴び。
色鮮やかに発色したかと思えば、徐々に色を無くしていく植物達。
やがて。
灰色の空から降りてくる真白に成す術もなく染め上げられてゆく。
当然であるかのように一つの狂いもなく順に繰り返す。
まるで、終わりの無い紙芝居のよう。
泳ぐ事も出来ずに、ただ、ゆらゆらと揺れて、水面に映る風景の移り変わりを眺めている。
光は差すのに、温かさを感じない。
揺れる緑は映るのに、大好きな風の匂いも感じられない。
なにもかもが薄ぼんやりとした退屈な世界の中で、しかし、何故か音だけは、はっきりとしている。
声だけが、ここまで届く。
だから自分は、気だるさにも似た穏やかな流れに身を任せながらも、大好きな彼らの喧騒をこうして眺めている。
君の声が聞こえる。
響いては、心魂を打つ。
だからまだ、この願いは途絶える事もなく。
自分は、ここに在るのだと思う。




