(5)私はミアキ
部屋で着替えを用意して脱衣所に飛び込むとあっという間に浴室へ。
私はお湯に浸かりながら、きっとこんな会話があったに違いないとそっと目を閉じてその事を想像していたらウトウトとして
何か記憶にあるようでないような病院の病室。10歳ぐらいの見た事のある女の子がベッドの母親が抱いている赤ちゃんを見ていた。側にはお父さんもいた。
「私はこの子を夏の子だって思えない。秋、秋がいい。秋なら私と隣り合わせだし、春とも似てるからお母さんに似た子に育つと思うし。いいでしょ、お母さん、お父さん」
「私はミナツでもナツミでもアキでもいいと思うからお父さんとミフユで決めて」とお母さん。
「二人がそういうなら僕が今更反対しにくいな。秋も風情があっていいと思うからそうしようか」とお父さん。
「じゃ、ミアキでいい?」
微笑みながら頷く両親。
「いいけど、お姉ちゃんのせいで夏から秋に変わったって言われたくないだろう?それはどうするんだい、ミフユ」
慌てて取り繕う姉。
「あ、ミアキには内緒ね」
お母さんが姉を見た。
「良いけどこの子聞いてるじゃない?」
笑う両親。困り顔の姉。すると赤ちゃんが泣き始めた。そう、これは私だ。
「!」
顔にお湯が浸かりそうになってバシャバシャ慌ててしまう。寝ちゃったみたい。その騒ぎを聞きつけた姉が駆けつけて浴室のドアを開けて顔を突っ込んできた。
「ミアキ、大丈夫?お風呂の中で寝ちゃったんでしょう。そんな事してたら危ないからさっさと洗ったら出なよ」
「だ、大丈夫だよ。お姉ちゃん」
「気をつけなよ」
「はーい」
私は口のあたりまで湯船に浸かってブクブクさせたのだった。