☆負けてないよ
ロープバイパーを狩りに行くアル達を見送ると、わたし達も早速採集アイテムを求めて採集ポイントを探しに出掛ける。
麻も丸太も、さっき通ってきた辺りで拾えるらしく、来た道を戻る感じだ。
採集ポイントの近くにはアクティブモンスターはいないし、楽しく採集に集中できそう。
こう、なんていうのか。
地味な作業の繰り返しって、結構好きなんだよね。
「アスタール君は不満そうだったなぁ。」
採集ポイントを探して歩きながら、ポツンとイカ下足君が呟く。
「そだねぇ。
アルは、私と会う為だけにこれやってるみたいだから。」
その言葉に、後ろ髪引かれながら狩りに向かうアルの姿を思い出す。
アレは不満と言うよりも、ひなが母鳥から引き離されるような感じだったような気がする。
数歩進んではこちらを振り向く姿にキュンとしたと言うのは、アルには内緒だ。
「あれ、りりんちゃん達って夫婦だったんじゃないん?」
何度も振り返ってたアルの事を思い出していたら、イカ下足君に不思議そうな顔でそんなことを言われてしまった。
「イカ下足君にそんな事言ったっけ?」
――全然、記憶にない。
アルと夫婦だなんて話したっけ??
そんな話をしたのはいつだったかと首をひねっていると、イカ下足君は笑いながらわたし達の口から直接聞いたわけじゃないのだと種明かしをする。
「こないだ、アスタール君に絡んでた女の子に言ってるのが聞こえてきたんだわ。」
「ああ~……。」
「あの時のアスタール君、めっちゃ嬉しそうだったのが可愛かったんだわ。」
――あったあった。
なんか、アルがすごく嬉しそうにしてたっけ。
「リアルだと、住んでる場所が遠すぎてねぇ……。」
「ありゃま。
遠距離は大変だわなぁ。」
ちょっぴりイカ下足君は気まずそうに、同情の籠ったコメントを口にした。
「しかし、夫婦者ゲーマー仲間だと思ったのに、残念だわ。」
「んー……。
まぁ、気持ちの上では夫婦だって事で♪」
わたしはそう言って、その話題を打ちきる。
流石に、アルが異世界人らしいなんて言っても通じないし、下手に話しちゃったら変な人扱いされるだけだ。
流石に黙っておこう。
町中からフィールドに出ると、クエストを請ける前にはなかったはずの場所に、普通の採集ポイントとは違う黄色のポイントがあちこちに現れていた。
「お。
黄色いのがイベントアイテムのポイントかな?」
「そうみたいだわ。
んじゃ、僕はあっちで丸太集めるわ。」
「りょうかーい!
よろしく~♪」
イカ下足君とわたしの採集ポイントは微妙に違う。
まぁ、丸太と麻だから当然と言えば当然か。
早速、二手に分かれてせっせと採集を始める。
ポイントに手を入れると、あっという間に採れる採れる!
スキルが低すぎるから一度に採れるのは1束づつだけれども、他のモノが獲れないから良いペースで目的のモノが集まって行くのが何とも楽しい。
――アルの方も、こんなペースで集まってたらすぐにこっちにやってきそうだな。
と、今は側に居ない彼の事を思い出すと思わず笑みが浮かぶ。
まぁ、あっちの方が集める数が少なかったから、集めるのが少し厄介な条件があったりするのかもしれないけど。
もし、わたしの方が終っても来ないようだったらこっちから探しに行ってあげるかね。
驚くのか喜ぶのか、どっちかな?
「僕の方、終ったけどりりんちゃんはどうかな?」
「あー。
スキルレベルが低いから、まだ半分も集まってないや。
ハニーちゃんの方はどうかね?」
流石にイカ下足君はスキルが高いらしくて、あっという間に集まった。
わたしの方はやっと3分の1位かな。
あ、糸採集のスキルがあがった♪
コレで効率が少し上がりそう。
イカ下足君の持っているのは木材採集。
糸の採集は取ってないから、わたしの手伝いはをするのは無理だ。
アル達の方の進捗を聞いてもらって、あちらがてこずっているようだったらそっちに行ってもらおう。
「なんか、手こずってるらしいわ。」
「なら、そっちに行ってあげて。」
「了解。
悪いけどそうさせて貰うわ。
がんばってな?」
「ほいほい。」
イカ下足君を見送った後もせっせと麻を集め続けて、やっと既定量集まった頃には、糸採集のレベルがもう一つ上がって3になってた。
500本の採集って、やっぱり結構な量だよね。
沢山集めたなーと思いながら腰を伸ばしているところに、アル達の方もロープバイパーを狩り終わったとの連絡が入る。
「よっこらせ。」
嵩張る袋を肩に掛け、いそいそと納品場所に向かう。
ババ臭い掛け声はご愛敬ってやつだ。
てくてく歩いて行くと、目的地の近くでアルが伸びあがってわたしの姿を探しているのが見えてくる。
――何あの可愛い生物。
無意識のうちに、口の端が上がってしまう。
わたしの姿を見付けた彼が、ちぎれんばかりに手を振ってくるその姿が余りにも可愛く見えて、わたしは足を動かす速度を上げて彼の腕の中に飛び込んだ。
「早く終わらせて、君のところに行きたかったのだが……。」
「わたしの方こそ、遅くなっちゃってゴメンね?」
抱き合って鼻先を触れ合わせていると、ハニーちゃんがイカ下足君に同じ事をねだってた。
リアルでも出来るだろうに、ラブラブだと言うのは本当らしい。
ふふーん。
ラブラブ度だったら、わたしもアルも負けてないんだから!




