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☆アルの選ぶ服

 置かれてあるミシンを使って、一通り試し縫いをして見せて上げると、アルは鼻息荒くミシンの構造を検め出した。

解体せんばかりの勢いに驚いたんだけど、壊さないでくれる事を祈る!

まぁ、ゲームデータだから大丈夫か。


 私は私で、服作りを開始!

さっき取り出しかけてた生地を全部取り出すと、中央に鎮座する2つの台の上に2枚別々に並べて裁断を開始する。

スキル『並行作業 2種』裁断時にコレが出来るように、裁断台が2つあるらしい。

丁度、2つの台の間に人が一人通れる位の通り道があるし。

同時に他スキルも使用しないと、意味のないスキルなので今回は『裁断』を使う。


 作成予定の服の型紙から、生地に直接ハサミが入る……と言う言い方だと語弊があるね。

作る過程を説明するのは初めてだし、詳しく説明しておこう☆

服のレシピの場合、レシピを購入もしくはサービス品ゲットすると、作り方は『頭』の中へ。

『型紙』はバックパックとは別口のレシピ倉庫的なヤツに入るっぽい。

っぽいって言うのは、バックパックの中にも存在しない挙句に、スキルとかの確認が出来るデータウィンドウ(一応あるのよ)の中にも無いくせに、『裁断』を使う時にはどこからともなく出てくるから。

んでもって、だ。

そのどこからともなく出てきた型紙が生地の上に乗っかると、余分な生地がどこへともなく消え去って必要な分だけが残る訳だ。

ついつい、リアルの癖でハサミが入るなんて言っちゃうんだけどね。

ただ、端切れで出来る事も色々あるのにと思うと、ちょっとどこへともなく消えてしまう余分な生地の行方にもの悲しくなる光景だったりもする。

ちなみに、端切れを作りたい場合はスキルを使わずに自分でハサミを使うと作れるんだけどね。

スキル『裁断』を使わないで、型紙を当ててて切る事も出来るのです。

時間が掛かるから、今回はスキル様にお願いしちゃうけど!


 買ってきた生地を、全部『裁断』様にお願いしてパーツ分けが終ったところでアルに声を掛ける。


「アルー?

 そろそろ、ロックミシンと直線ミシン使わせて~?」

「む?

 ……それ以外の物は見てても良いのかね?」

「どうぞお好きに♪」

「では、他の物を……。」


 私の事を見てれば暇なんて……。

って言ってたのはどこへやら?

アルは、すっかりミシンの構造を調べる事に夢中になってる。

表情は相変わらず殆ど動いてないんだけど、お目々はキラキラ。

お耳はパタパタと忙しなく上下していて、その興奮の度合いを伝えてくる。

正直、笑わないでいるのが難しい位可愛い!



――あー!

  噛みつきたい~!!!



 色々と衝動を抑えつつ、ミシンの前に腰掛けて作業を始めた。

見てると齧りたくなるからね。

目の毒なのです。

『並行作業 2種』と『ニット縫製』のダブルスキルで作業を開始すると、目の前にあったロックミシンが2台に増えて生地がセットされ、縫い合わされ始める。



――むむむむむ。

  スキルを使うと、本体の私は作業できないのか。



 ちょっと不満感を感じるけど、作業は2つ同時に行われてて、実質倍速。

速度には文句は無い。

でも、でもだよ!



――早く出来るのは良いけど、私も縫いたい!!!

  スキル使用中は、フリーズしてるとか、これってどんな拷問?!



 ちょっと不満はあるものの、全部出来上がった頃にはアルも落ち着いてて、機嫌よさげに私の方を見ながら薬草の乾燥作業をしていた。


「あれ、指輪作るんじゃなかったっけ?」

「材料が無くなったのだ。」


 優雅な手つきで新しい薬草を乾燥させて、バックパックに仕舞う。

アルってば、動作一つ、仕草一つとってもガサツな所が無いんだよね。

きっと、良いところのお坊ちゃんなんだろうなぁと、改めて思う。


「アルのお家って、お金持ち?」

「?

 金銭と言う面では、あるにはあるが……何故かね?」

「んー。

 喋り方もそうだけど、動作にガサツな所が無いから。」

「ふむ……。

 その類に関しては、特別な教育があった訳でもないのだが……。」


 首を傾げる姿も、そういう目で見ると綺麗な仕草なんだよねぇ。

まぁ、いっか。

裁断台の上に、出来上がった服を積み上げると、1台だけぽつんと置かれたトルソーに順繰りに新しく作った服を着せていく。


「何種類か作ってみたんだけど、どうかな~?」


 まずは、アルが御所望のパーカーとデニムパンツ。

中にはロンT。

うんうん、これこれ。って感じでアルが頷く。


 次に、パーカーをジャケットに変更してみると、小首を傾げた。

イマイチって事かな。


 お次はデニムパンツを、デニムのサロペットに変更。ついでに鍔付きのキャップを被らせる。

パーカーを羽織らせると、むむむむむっと言う感じで考え込む。

耳がね、ぐぐぐーっと下に降りて行くんだけど、落ち込んだ時と違って力が入ってる感じ。

なんだか面白可愛い。


 他にも何種類か見せた結果、アルが選んだのは3個目に見せたデニムのサロペットのセットだった。

ぶっちゃけて言うなら、メチャクチャ似合わない。

だけど本人はご満悦なのだ。

デニムのサロペットを着て、なんだか得意げに上下する感情表現豊かなお耳に、とうとう笑いがこらえきれずに大笑いしちゃったら、アルはへそを曲げちゃった。

だけど、背中に抱きついて「ごめんね」と囁いたらあっという間に機嫌が直る。

こういうチョロさは、とっても可愛らしくて宜しいと思います!

2018/6/15 加筆・修正を行いました

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