第六話 エルフの村
この世界のエルフは!
到着しました。エルフの村【モスグリーン】・・・。この村の名前付けたの、過去の勇者だろ!もうちょっといい名前付けてあげようよ!
「何者だ!」
村の入り口で、過去の勇者に苦情申し立てしていると、その行動に不信なものを感じたのか、入り口近くにいた村人が弓を構えていた。
「武器を向けるということは、武器を向けられる覚悟があるということだよ?」そう言って、その村人の後ろに回り込んでナイフを首に当てる。
「ひぃ!い、命ばかりは!」
「いや。別に襲いに来たわけじゃないから。それで、何があったの?村の入り口でちょっと考え事をしているだけなのに弓を構えるなんて、ただ事じゃないよね?エルフは人族と争ったことはないと聞いているんだけど?」そう言って、ナイフを納めて村人を解放した。
「死ぬかと思った・・・」村人はそう言って、地面にへたり込む。あ、おしっこ漏らしちゃっているみたいね。やり過ぎちゃった。てへぺろ。
「何事だ!」
あ、今度はなんか大勢来た。へたり込んでいる村人は、ようやく助かったと思ったら、緊張感あふれる場の丁度間に居る状態になる。あ、ガクガクと震えはじめた。
「え~っと。敵意は無いですよ?そこの村人が弓を構えてきたので、ちょっと世間の厳しさと礼儀を教えていただけで・・・」
「おい。モブ。本当か?」
「ほ、本当だよ。そ、それよりも余計な事をしないでくれ!この人に逆らったら、村が全滅してしまう!」モブさんはそういうと、限界を超えたのか気絶してしまう。あれ?そんなにビビらせてしまっていたのかな?
「お、おい!モブ!しっかり・・・くっさ!こいつクソ漏らしているぞ!」
「うっわ。マジで?引くわぁ」
「そいつどうすんの?誰が連れて行くわけ?」
「お前行けよ」
「え?嫌だよ。うんこ付いたらどうすんだよ」
「じゃあ。お前行けよ。そういうの好きだっただろ?」
「はぁ!?何そんなことこの場で言っちゃっているの?お前ばかなの?」
「え?お前。そんな趣味が・・・」
「いやいや。かわいい女の子限定だよ?」
「「「「「マジかよ・・・」」」」」
良くわからないが、かわいい女の子の汚物ならどんと来いという村人が気絶したモブさんを板の上に乗せて引きずって行った。
「それで、あなたはいったい何しにこの村に?」
「えっと。隣村のイナホ村から来たんですけど。村長さん居ます?」
「イナホ村の?使者なのか?」
「いえ。村長代理補佐です」
「村長代理補佐?なんだそれは?」
「おばば様の補佐役です」
「おばば様の!?それは失礼した。村長は家に居ると思います。こちらへどうぞ」
あれ?おばば様で通じる上になんか態度が変わったぞ?おばば様。村から出たことないんじゃないっけ?
「村長!イナホ村のおばば様の補佐役が訪ねてまいりました。お通ししても?」村長の家らしきところに着いたら、案内してくれた村人は村長に取り次ぎまでしてくれている。
「客人。村長が会うそうです。どうぞ中へお入りください」
「失礼します」そう言って、村人が開けてくれたドアをくぐる。すると、すぐに応対室となっているようで、正面に村長らしき人物が椅子に座っていた。そして、その前にある椅子を手で進める。
「イナホ村から来ました。ユーロと申しま・・・」
「そんなことはよい。それよりも座って話を聞かせてくれ。おばば様の補佐役だそうだが、何用でこの村に参られた?」
ちなみに村長は女性で、金髪碧眼で尖がった耳に若い容姿。そして、残念ながら胸は平らだ。美人なので、モデル体型と思えばいいのだろうが、今までの世界とは大きく違う。主に胸が。
「実はイナホ村では、勇者の使者による徴兵で男たちが皆連れて行かれてしまいまして」
「なんと、イナホ村はあんな馬鹿げた要求を飲んだのか?」
「はい。まあ、私が村に来る1年も前の事なので、詳しい状況はわからないのですが、村には見事に男がいない状態です」
「ん?するとお主はいつから村に?」
「1ヶ月ほど前ですね」
「1ヶ月?どういうことじゃ?そんな新参者がおばば様の補佐役をしているなんて・・・」
「まあ、単純に村の外に出られるのが私くらいだったという事ですね」
「ああ、男手が無いんじゃったな。それならわかるが・・・。それで?何しにこの村に?」
「エルフを見たことが無いので、見たかったのと。村周辺の情報を集めておこうと思いまして」
「エルフを見たことが無い?・・・まさか、お主。勇者か!?」
「いえいえ。まあ、確かに異世界からこの世界に転移して来ましたけど、召喚はされてないはずですし。この世界に来たのは1ヶ月前なので、1年も前に召喚されている勇者たちとは関係ないと思いますよ?」
「なんと。勇者以外の異世界人じゃというのか・・・」
「おばば様にもそこの事は話してありますので。あの・・・ちょっと聞いても良いですか?」
「なんじゃ?年齢なら教えないぞ?」
「年齢は興味が無いと言えば嘘になりますが、それよりもおばば様の事をなぜ知っているんですか?確か、おばば様は村からは出たことが無いそうなんですけど・・・」
「ああ。それなら簡単じゃ。私の死んだ旦那がおばば様に一目惚れしてな。わしが乗り込んで行ってちょっと修羅場になっただけじゃよ」
「え?それはすでに結婚した後に村長さんの旦那さんがおばば様に一目惚れしちゃったんですか?」
「いや。その時はまだ親が勝手に決めた婚約者という立場じゃったが。わしというものがありながら、外の女に惚れたと聞いて頭に来てな」
「それはまた・・・。情熱的なんですね」
「ただ子供だっただけじゃよ。エルフというのは、外見は早熟するのに中身は年齢通りなものだから、あの頃は本当に若さゆえの過ちと言うしかないのぅ・・・」
「この世界のエルフは、不老不死とか不老長寿とかじゃないんですか?」
「外見だけは若いままじゃが、寿命は人族と変わらんよ。わしもおばば様と同じ年頃じゃから、いつお迎えが来てもおかしくないのぅ」
「外見だけですかぁ。それは色々と面倒そうな・・・」
「うむ。時々、ばあさんに騙された若者が泣きながら駆け込んで困るのぅ。俺の初めてをババアに奪われたから、何とかしてくれと言われてものぅ」
「そ、それは大変そうですね。若者が疑心暗鬼になりそうで」
「うむ。付き合う前の徹底した身元調査がエルフの基本じゃ」
「っと。話が反れちゃいましたね。それで、修羅場になったおばば様との関係は?」
「2人で旦那をぼこぼこにした後、仲良しになってな。それ以来、手紙でやり取りしておる仲じゃ」
「そうだったんですかぁ。そう言えば、この村で何かあったんですか?村に来た早々。弓を構えた村人に遭遇したんですけど」
「なんと!?そんなことをした馬鹿が居たのか!?誰じゃ!」
「えっと。モブさんと言う人ですけど、怒らないであげてくださいね。ちょっと、やり過ぎちゃったみたいで、糞尿漏らして気絶しちゃいましたので・・・」
「・・・お主。何をしたんじゃ・・・」
「いやぁ~。ちょっと、後ろに回り込んでナイフを首に当てただけなんですけどねぇ?」
「・・・お主が友好的で良かったわい」
「それで、何で村はそんな緊張状態に?」
「うむ。それがのぅ。勇者の使者を追い返したら、しばらくして勇者がやって来てな・・・」
「命令を無視したから、村を襲いに来たんですか?」
「いや。お主と同じようにエルフを見たかったから来たらしいんじゃが、来て早々に村の娘を襲おうとしてな・・・」
「そ、それは・・・。その娘さんも気の毒に・・・」
「いや。気の毒なのは勇者のほうでな。返り討ちにあって、瀕死の状態で牢に入っておる」
「え?」
「たまたま勇者が襲った村の娘がわしの孫で、この村最強の戦士だったのじゃよ」
「・・・それって、1年前のことです?」
「いや。1ヶ月前じゃな」
「じゃあ、その勇者。まだ生きているんですね?」
「うむ。植物状態じゃがな」
「生きていたら何とかなりそうですけど、つまり・・・。勇者を瀕死にしてしまったから、報復されるんじゃないかと警戒していたと?」
「その通りじゃ。じゃが、この1ヶ月間。何もなかったからの。恐らくあの勇者はこの村に行くことを誰にも言わずに来たのじゃろう」
「でも、ばれた時は色々まずそうですよねぇ」
「そうじゃな。他の勇者たちは大丈夫じゃろうが、王国の動きが心配じゃな」
「王国?」
「うむ。この白の国はいくつかの王国や独立した村や街があってな。一枚岩じゃないのじゃよ」
「白の国というのは国の名前じゃなくて、総称ということですか」
「そういうことになるな。まあ、黒の国も似たようなもんじゃと思うが」
「え?何でわかるんです?行ったことあるんですか?」
「いや。勇者たちの決着が今までついていないのがその証拠じゃよ。向こうが一枚岩なら、とっくにこっちの国は負けておる」
「ああ。なるほど。確かに引き分けているなら、条件が同じという可能性が高いですね」
「そういう事じゃ。それで、もしかして勇者を何とかしてくれるのか?」
「良かったら、うちで引き取りましょうか?傷も治せると思いますし」
「ほう。それはありがたい。じゃが、それをしてもらっても、こちらの村でお返しをしてやれるものが・・・」
「別にかまいませんよ?まあ、同じ異世界人として馬鹿な同胞の後始末くらいは・・・。ということで」
「いや。それでも、さすがに何も礼をしないのはまずい」
「そういうものですか?」
「そういうものじゃ」
「それでしたら、男手は少し欲しいですけど・・・。さすがに無理ですよね?」
「うむ。そうじゃな。エルフは基本的に森を離れるということがないからのぅ」
「あれ?旦那さんは?」
「あれは変人じゃったからのぅ」
「そうですかぁ・・・。じゃあ、どうしようかな?」
「話は聞かせてもらった!そういう事ならば、仕方がない。私がお主について行こう!」突然、そう言って隣の部屋らしきドアを開けて現れたのは、若い娘だった。と言っても、エルフの見た目はみんな若いのだけれども。
「なんじゃ?キャス。盗み聞きしておったのか!?」
「チッチッチッ。おばあちゃん。甘いな。この家の壁は薄いんだよ!部屋で何することも出来ないくらいに!」
何って何だろう?
「まあ、確かに壁が薄くて、隣の部屋の音くらいなら丸聴こえじゃが・・・」
「もとはと言えば、私がちょっとやり過ぎちゃったせいで、村がいつ襲撃されるかわからない緊張感に包まれてしまっているわけだし。ここは私が責任を取るという意味でも、そちらの御仁について行かなければならないと思うのだよ!」
「あれは、ちょっととは言わんがの。まあ、確かに筋は通っておるが。じゃがダメじゃ」
「えー!なんでー!?」
「お主が次期村長候補だからじゃよ」
「それは無理だって言ったじゃん!いとこのキャロライン辺りにすればいいよ!」
「キャロラインはまだ5歳じゃろ」
「その間は、おばあちゃんに長生きしてもらえば問題ないって!」
「無茶言うな。天命は変えられんよ」
「なんなら、キャロラインが成人するまでの間、叔父さんに代理をしてもらえば!」
「あー。確かに、あの子なら真面目に勤めてくれるとは思うが・・・」
「と、言うわけで。よろしくお願いします!」そう言って、キャスさんは私の手を取り、ぶんぶんと振る。
「は、はあ」
「・・・仕方がないのぅ。というわけで、その子の体はお主が好きにしても良いという事でお礼とさせてもらっても良いかのぅ?」
「「えっ!?」」村長の言葉で固まる私とキャス。
「ど、ど、どういうこと?わ、私の体を好きにって!?」
「えっと・・・。それって、嫁にということですか?」
「いや。奴隷じゃよ」
「奴隷?何それ?」
「あ・・・。そんな言葉。こっちの世界にもあるんだ・・・」
「キャス。立派に仕えるんじゃぞ!」
「え?奴隷って何?なんなのおばあちゃん?」
「詳しくは、お主のご主人様になるユーロ殿に聞くがよい」
「え?私に振るんですか?」
「頼んだ」
「えっと。ユーロ殿?」
「こら、お主はユーロ様と言うのじゃ!」
「え?え?なんで?ユーロ様?」
「えっとね・・・。奴隷というのは・・・」
私の知る限りの奴隷の情報を教えてあげた。簡単に説明すると、永久に労働を無償でし続けなければならない身分という事なのだが。性的なことも強要されていたのかは良く知らないので、その辺は説明しないでおいた。それにしても、なんで奴隷?別に主従関係でもいいんじゃないの?あ、村長さんが不敵な笑みを・・・。これは、村を離れようとする孫娘への最後の嫌がらせということなのだろうか?
「嫌ならやめても良いんじゃぞ?」
「・・・い、いいもん!ユーロ様の奴隷になるもん!」
「ほう。それは、夜伽を要求されても答えるのじゃな?」
「え?夜伽・・・?え?それってあの?」村長の一言で、色々察したのか顔が真っ赤になるキャス。
「やめても良いんじゃぞ?」
「・・・い、いいもん!べ、別にだ、大丈夫だもん!」
「なんでじゃ?そうまでして村を出たいのか?」
「・・・うん。だって、この村の外にも世界は広がっているんでしょ?」
「まあ、そうじゃが・・・」
「・・・なら。見てみたい。自分の目で自分が住む世界はどんなのか見てみたい!」
「・・・似なくて良い所を似よって、あの人の血じゃな・・・」
あの人というのは旦那さんの事だろう。そういや、今どうしているのだろう?
「キャスぅぅぅぅぅぅ!!ど、ど、どういうことじゃぁぁぁぁぁぁ!!!わしから離れて行ってしまうのかぁぁぁぁぁぁぁぁ???」突然、別の隣の部屋のドアから現れたのはエルフの男性だった。もしかして、村長の旦那さんかな?
「え?じいちゃん。いつ帰って来たの?」
「1週間前からおるけど?」
「え?聞いてないし、家の中に居たの?」
「う、うむ。それは、そのぅ・・・」
「え?おばあちゃんも知っていたの?」
「え?ああ。うむ。そうじゃの。わしの部屋にいたのぅ・・・」
「え?おばあちゃんの部屋にずっと籠っていたって事?」
「え?ああ。まあ、その。うん。そうだのぅ」
「ああ。つまり、帰ってから1週間。部屋に籠って、村長さんと愛し合っていたんですね」と、思わず思ったことを口に出してしまった。
「え?」
「ちょっ!それいっちゃうかなぁ~」
「わ、わしは知らん!」村長は顔を真っ赤にして、横を向く。わかりやすいなおい。
「え?でも、壁薄いのに?愛し合っていた?どういうこと?」
「えっとね。たぶんだけど。エルフの体って基本若いじゃん?」
「「説明しなくてよろしい!」」なんか、顔を真っ赤にした村長と旦那さんに止められた。しょうがない。あとで教えてあげよう。
そんなこんなで、瀕死の勇者と村長の孫娘キャスを連れて、イナホ村に戻る事にした。
王道の貧乳でした!