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翌朝。リシアヌル学園きっての職員会議が開かれた。頭を抱えるのは、シトリ先生だった。学園長のサーベル先生はニコニコといつも通り朗らかに笑っている。しかし、問題はその隣で煩く話し続けるメガネを掛けた、黒髪の女だった。雰囲気的にもインテリ的で優等生そのものに似ていた。髪は長いが丁寧に左側で一つにまとめ左肩から前に出している。シトリ先生が返事に困っているのを横目にチクチクと彼女は攻め立てた。
「今回のような事件は本学園以来始まっての事件ですわ。生徒がこの学園から逃げだすなんて。この学園長の秘書をしているワタクシ、一度も経験した事はありませんわ。しかも武器を持って、ですのよ?3年生ならば、まだしも1年生とは。特殊警察の何たるかを教え出したところです。外に出れば誰もが学園を卒業した警察だと思い、夢の世界からの住人を倒すという仕事を頼む事でしょう。もし生徒が死んでしまったら、大事ですわ」
シトリ先生はそうですね、と答えた。
いくら死地に出向く実践があると言っても主にそれは3年生からだ。1年生から向かわせれば、何と無責任な学園だと思われ世間からの信頼も無くなる。
シトリ先生がどうしようかと、考え出したところに1人の男性教師が話に割って入った。
頭は薄い黄色の様な優しい色の髪を天パなのか、くりんくりんと遊ばせている。しかし目つきはキッとしており、途端に厳しく見えるのだった。(主に髪に柔らかさを取られたのだとシトリは思っている)彼は生徒指導も担当しているヒイラギ先生だった。
もちろん、先生も皆コードネームな為。誰しも本名は知らない。
「とりあえず、一刻も早く見つけ出し連れ戻しましょう。説教はそれから。その時課す罰も考えましょう。そうですね、シトリ先生は彼女達を捕獲して連れ戻して下さい。あぁ、あなたがやる授業は俺が代わりに面倒をみます」
シトリ先生はうな垂れた。眉を下げようと思ったが、自分にはそれが無いことを思い出し。ゆっくり頷く。学園長の秘書は、それで納得したのか何も言わなくなり学園長もシトリ先生に今までの事を踏まえ捕まえに行く事を許可した。
そして、1限目のチャイムが鳴り職員会議はお開きになったのである。
「ふおおぉおお!!!」
と、大声をあげたのはナズナである。
街だ!街だ!と騒いでいる。
リリィもキラキラと目を輝かせてあちこちを見渡し、ネキアも空を見て「学園と違ってビルが多いから吸い込まれそう」と笑った。
3人は夜ふけに学園を抜け出す事に見事成功していたのだ。
学園は木々に囲まれ外から見れないようになっている。塀も高いが木に登り超えていけば問題なかった。3人は段々太陽が昇るのを感じつつ街に辿り着いたのだった。
もちろん、一般人は武器を持った少女たち3人をじろじろ見て歩いていく。しかし、3人はそんな事など諸共せずに道をどんどんと歩いていった。
とりあえず、3人でプリクラを撮った。アルカロイドになってプリクラを撮るのは初めてで進化している機能に感動し思い出にした。
次に服を見た。新しいブランド。新しいデザイン。3人は自分達が普通の女の子に戻ったような気がした。服を見た後、雑貨にアクセサリーに見てつけて買って楽しんだ。
お昼も過ぎ、お腹が空いたので近くにあった可愛いデザインのお店でクレープを買って食べた。チョコレートに生クリーム。イチゴにバナナ。それは学園の中でも中々食べられないものだ。
そうして、楽しんでいると背後から3人は呼び止められる。
高い、でも決して女性の声ではない。
「おい、特殊警察だろ?止まれ!」
3人が振り向くと、そこには右頬に絆創膏を貼った短髪の男の子が立っていた。
3人が顔を見合わせると男の子は言った。
「頼む!友達を助けてくれ」
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