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塀の上から

作者: 海苔鳥

処女作。

ここは日本の住宅街。


今日も黒猫は塀の上を歩く、歩く。

冬の終わりと共に気温をあげはじめた世界は、暖かくてとても気持ち良い。


ブロック塀の上を歩く猫の名はメフィスト3世、黒猫の中の由緒正しき血を持つ貴族。

貴族だからというわけでは無いが、彼女には二つ名がある。

それは「クロ」…人間に付けられた名だ。

今は二丁目の斉藤さん家で飼われていて、赤い首輪もつけられている。


しかし、彼女は誇りを忘れたりはしない。

たとえ人間が作りしこの居心地の良い街で、人間の作りしブロック塀の上を歩こうとも…。


なぜなら彼女には自慢の体があるから。

彼女の四肢はしなやかで柔らかい筋肉で覆われており、跳躍でも徒競争でも誰にも負けない、運動神経ばつぐんの体をもっているのだ。

たまに仲間の猫が塀や木から落ちて、間一髪のところで身をひねり着地するのを目撃するが、そもそも落ちるなんてことは間抜けがやることだと思っている。


いままでの人生において落ちたことなんて一度たりとも無かった。


そんな彼女は今日も塀の上を歩き、恋人のもとへ足を運ぶ。

通いなられた道よりも近道に出来そうな新しい道があったので、今日はいつもと違う塀の上を通っている。


もう少しだ。


興奮を抑えられずに走りだす。


狭い塀の道を思いきり後ろ足で蹴りだす。


そこに春一番の突風が吹いた。

突風は横殴りでかなりの風速。


彼女の体を強烈な衝撃が襲い、空中でバランスを崩した黒猫が塀の外へ押し出される。

次の瞬間には猫が地面に落ちる音がした。


ドサッ!


…彼女は受け身をとることが出来なかった。


バランスを崩した体はそのまま反転して、頭から落ちた。


頭から地面に突っ込んだ黒猫は起き上がらない。


…彼女は知らなかった…落ちるという恐怖を、自分でも足を踏み外すことがあるということを…。


走馬灯…………そして思うことは「あぁ、早く恋人に会いたいな」

そして彼女はおもむろに立ち上がり、恋人の元へと走り出した。


まだ製作途中で一段しか積み上がっていないブロック塀の上を慎重に蹴りながら…。

「そうだ。今日はまず、頭をなめてもらうことにしよう」

最後までお読み頂きありがとうございました。


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