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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第1章 旅立ちまで
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4話 "魔術概論と散歩"

『これまでに記したとおり、魔術は魔法の一つに過ぎず、世界を探せばよりたくさんの術法があるだろう。

魔術とは魔力=マナを操り事象を引き起こす術法である。自然界に無数に存在する魔力は意思を持たず自発的な運動を行わない、周囲の高度な魔力の流れに従って運動する性質を持っている。魔力を誘導し圧縮、圧縮されたものを術者の有する魔力によって精密に操作することで望む事象を引き起こす、というのが魔術の基本となる。魔力を何に転換するかによっていくつかの系統に分かれ、転換した魔術を二次転換することでさらなる事象を引き起こす派生術式も存在する。

魔術の歴史については諸説あり...』


わけがわからない。

図書室を出て昼飯を食べた後、サーシャたちに鬼ごっこに誘われ、日が沈むまで庭中を走り回っていた。ボルゴと二人がかりで追いかけても捕まえられず、へとへとになりながら夕飯と入浴を終えた夜中、就寝までの時間を使って魔術概論を読んでいた。

何とか理解するために、夜更かしして読もうと消灯時間を息をひそめて隠れていたが、モニカさんにバレてしまった。


朝になってまた読んでみるがよく理解できない。

とりあえず、魔法が何種類かに分かれることは理解できた。魔術や錬成術、祈祷術などに分かれ、魔術はさらにそこから属性系統に分かれている。そこまでは理解できたが、そこから先がわからない。

わからないなら聞いてみるべきだ、そう思い立った俺は部屋を出て風呂場へ向かった。


孤児院の風呂場にある浴槽は石を使って作られた大きなもので、一度に何人も入ることができる。

浴槽の中で綺麗な銀髪があわただしく動いているのが見える、風呂場ではブラシを片手にモニカさんが掃除をしていた。数日前に掃除の雑さで怒られたばかりなため、いつもより熱心に洗っている。

思っていたより忙しそうなので声をかけるか迷っていると、こちらに気づいたモニカさんが声をかけてくれた。


「あっシュウくん、本はどう?ちゃんと読めそう?」

「むずかしいところが多くてよくわからなくて...、モニカお姉さんに教えてもらえないかなと思って」

「いいよ~、もう少しでお掃除が終わるからちょっとそこで待っててねぇ」


ブラシで落とした汚れを水魔法を使って洗い流すと、適当な風呂桶に座って解説を始めてくれた。


「魔術ってのはね~、魔力を使って火とか水とか光とかを作る技なんだよ。魔力ってそこら中にたくさんあるんだけど、自分からは動かない子たちなんだよ。だから私たちが自分の魔力を使ってこっちだよー!って、みんなを動かしてあげなきゃいけないの」

「そうやって集めたのを火にかえたり水にかえたりできるってこと?」

「うん、これが転換っていう段階。転換したのを操ったりする以外に、もう一度別のものに変えたりするのもできるんだよ。これが二次転換ってやつ、例えば水を氷にするとか、風を雷にするとか」


一通りわからなかったところを解説してもらい、お礼を言って自室に戻ろうとすると、再び真剣な声色で忠告をされた。


「魔術概論には魔力を操る方法が書いてあるけど、危ないから絶対にやっちゃだめだからね。読むだけにして待ってるんだよ、あと2年たったらお姉さんが教えてあげるから、それまでしっかり待ってるんだよ」

「モニカお姉さんが教えてくれるの?わかった、それまでまってるね!」


モニカさんと約束をした後、何か月かかけて魔術概論を読みこんだ。

朝は勉強、昼はサーシャたちと鬼ごっこ、夜は読書の健全な児童の生活を繰り返し、知識と体力の両方がだいぶ育ってきた。

さらに時間が経過し、7歳になるとマチルダ先生の授業には孤児院の外での散策が加わった。


「はい、じゃあしっかりと先生についてきてね。みんな、互いに手を握って離さないように、迷子にならないようしっかり握るんだよ」

「マチルダせんせー!今日はどこに行くの?」

「今日は城壁の外にある丘に行きますよ、少し遠いからしっかりついてきてね」


いままでは城壁内の市場や城の外周などだったが、今日は初めて城壁の外まででれることになった。

城壁に囲まれた都市なため外の景色を見ることは今までできず、初の外の景色ということでかなりワクワクしている。

城壁にはいくつかの門があり、大きな門は数人の兵士が警備のために常駐している。警備兵に挨拶をして門をくぐると、城壁内とあまり変わらないような市街地が見えた。すぐにどこかへ行こうとするサーシャの手を強く握り、マチルダ先生とはぐれないように追いかける。


市街地を通り抜けると、木々が生えた小さな丘にたどり着いた。

人気が無い小高い丘を登ると、町を一望することができた。城壁の外まで続いてた市街地は、壁から遠ざかるにつれてだんだんと農村に変わっていく。遠くまで続く街道を荷馬車の商隊が進み、広大な平原の奥には森がみえた。


「マチルダせんせー、あの森はなに?」

「あの森はブルトヴァルトの一部だね、血色の森と呼ばれていて、奥に行くと恐ろしいモンスターが沸き出てくるんだよ」

「その奥はなにがあるの?」

「大きな帝国があって、そのさらに奥には海が広がっているのよ」

「世界ってどこまで続いてるの?」

「先生もわからないよ、あまりに大きいから誰も果てを見れていないの」


答えを聞いたサーシャは平原を眺めている。

いま住んでいる孤児院は都市の一部に過ぎない。その都市も王国に無数にある都市の一部であり、王国すらも大陸の一部でしかない。


「向こうのほうまで行っちゃだめなの?」

「だめよ、今日はこの丘だけね。でも、いつかあなた達もこの都市を出て自分の道に行くことになるのよ。そのためにもちゃんと勉強していっぱい遊んで、たくさんの力を身につけなさい」


「たくさんの知識と力、それがこの世界で生き延びるのに必ず必要になる力なのよ」

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