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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第2章 新人冒険者
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36話 "連携勝利"

シュワコヴォ市郊外からしばらく離れた農村、ラズ村。

俺とサーシャはこの村に依頼をしにきていた。


「結構歩いたね、二時間くらい?」

「迷わないか心配だったけど、大丈夫だったね」

「村に入ったら村長さんに話を聞けばいいんだよね」

「うん。...あそこにいる人、村長っぽくない?」


村の真ん中、小高い丘の上に一人の男性がいる。

歳は中年ほど、顔つきがいかにも村長感に溢れている。


村に近づくこちらを見ると、丘を降りて近寄ってきた。


「依頼を受けてくれた冒険者かい?」

「はい。『ガウェイン』です、よろしくお願いします」

「わざわざありがとう、私がラズ村の村長だ。来てすぐで申し訳ないが、依頼の内容を説明するから、ついてきてくれ」


そう言って丘に向かう村長。

村は人口二百人ほどで、三つの集落が集まってラズ村になっている。

丘の上から見ると他の集落がよく見える。家が十数軒に風車が建っている。


「向こうの林の先に、屋根見えるでしょう」

「...あっ、ほんとだ。なんか小さな集落みたいだね」

「そうです。昔は、四つの集落が集まった村だったんですが、火事やモンスターの出没で捨てざるを得なくなってしまったんです」


木々の間からいくつかの屋根が見え、牧場らしきものも見える。

廃墟ではあるが完全に崩壊しておらず、修理すれば住めそうだ。


「ブルトヴァルトが下がったことでモンスターも減ったので、あの集落を復興させようとしたんです。それで集落を覗いてみると、モンスターが住み着いていて...」


廃墟に住み着くモンスターは珍しくない。

放棄された城砦が、いつの間にかモンスターの巣窟になっていることもある。


「依頼は、あの集落に住み着いているモンスターを取り除くことです」

「どんなモンスターかはわかりますか?」

「オークやゴブリンが十体ほど、確認できたのはそれがすべてです」

「わかりました。早速行ってきます」

「お願いします、どうか集落を取り戻してください」



民家が七軒、厩舎が一軒。

周辺にいるのはオーク九体、ゴブリンの姿は見当たらない。

恐らく廃墟にあと何体か潜んでいるが、合計で考えれば多くて二十ほどだろう。


「ねえねえ」

「うん、どうしたの?」

「さっき村長さんが言ってた『ブルトヴァルトが下がった』ってどういうこと?」

「俺もよくわからないけど、ブルトヴァルトは森が動くらしいよ」


詳しい原理は知らないが、ブルトヴァルトは範囲が縮んだり拡大したりする。

そこまで急拡大をするわけではないが、数十mほど森が近づいてきたり、後ろに下がったりが起きる。



偵察の結果、オークは合計で十五体見つかった。

作戦はいつも通りの魔術で先制攻撃、そのあとは臨機応変に殲滅だ。


「サーシャ、準備は大丈夫?」

「おっけー!いつでも行けるよ!」

「それじゃあ...、マジックミサイル」


練度が上がったことで一度に七発を安定して射出できるようになった。

命中は五発、先制攻撃が終わったので乱戦の開始だ。


サーシャが先頭のオークを切り伏せ、近くにいる奴らから倒していく。

俺は誤爆をしないように離れた奴を狙って戦う。


「シュウ、後ろ!」


振り返ると、一体のオークがまっすぐ突っ込んできていた。

攻撃魔術はギリギリ発動が間に合いそうにない、小さな範囲でプロテクトを展開し、鉈を抜く。


「うるぁあ!」

「おっ、ナイス!」


オークの手斧を障壁で防ぎ、空いた脇腹に鉈を叩き込む。

体の半分ほどで刃が止まった、これを両断できるサーシャはやっぱりオーガみたいな怪力だ。


ゼロ距離でファイアボルトを撃ち込んで止めを刺し、鉈を体から引き抜く。

すでにほかのオークはサーシャによって仕留められていた。


民家を確認するサーシャのもとに駆け寄り、周囲の状況を確かめる。


「もう敵は居ない?」

「うーん、民家にはいなさそう...。待って、前の厩舎からオークが...」


サーシャが一瞬、言葉に詰まった。



三体のオークの後ろ、のそりのそりと巨体が歩く。

筋肉の鎧に包まれた体にぎょろりとした目、3mはあるだろうか。


「オーク三体とオーガ一体、来るよ!」

「先にオークをやる、シュウはオーガを叩いて!」


先頭のオークに向けて突撃するサーシャ。

俺も前へ走り、オーガの足を狙って魔術を放つ。


「アイスランス!」


氷の大槍が音を立てて放たれる。

オーガの左足を大きく抉り、行動力を大幅に削いだ。


「ナイス!」


オークを倒し終わったサーシャがオーガの背後に回る。

右足の付け根を切りつけ、完全に身動きをとれないようにする。


しかしオーガも弱くはない。

近くにあったオークの死体を掴むと、ちょうど目に入った俺に向けて投げてきた。


全力で横に跳び、障壁を展開して伏せる。


凄まじい速度で投げられた死体は地面にぶつかって弾けた。

骨肉が破片となって飛び散り、障壁に突き刺さった。

心配そうにこっちを見るサーシャに親指を立てて無事を知らせておく。


再び突撃したサーシャによって、武器を持っていた手が手首から切り落とされる。

俺も前進し腹めがけてもう一度氷の大槍を放つ。


体からボロボロと臓器をこぼすオーガ、動く力が残っているようには見えない。


止めはいつも通りサーシャ。

一太刀でオーガの首を切り落とした。



「連携、バッチリじゃない?」


サーシャとハイタッチ。

Cランクの中でも高い危険度のオーガ、危なげなく討伐した。


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