35話 "連携と鉈"
「野外会議を始めます!」
「いえぇーぃ!」
隣のサーシャがクソでかい声で返事をしてくれた。
耳がキーンとする。
冒険者五ヶ月目、夏は終わり秋が近づいてきた。
合同依頼の時、ボリャックの人達を見て感じたことがある。
戦闘での連携がもう少し必要なのではないだろうか。
今の戦い方は、俺が魔法を撃った後にサーシャが切る。
先制攻撃の後は基本サーシャ任せ。
それまでの敵はサーシャの一撃で倒し切れていたから、それで問題はなかった。
「今後、ミノタウロスみたいな強敵が相手になっていく。そうなると、ちゃんと正面から戦う連携が必須になってくる」
「あの時みたいな、私が撹乱してシュウが攻撃!って感じかな」
「最初に足を攻撃した方がいいかも」
ミノタウロス戦の反省点の一つ、焦ってしまったこと。
あの時落ち着いていれば、足を奪って機動力を落とし、反撃の隙を与えずに倒し切れていた。
もう一つの反省点は、
「俺の魔術が弱い」
「そんなことないと思うよ?」
「でも、決定的な一撃を与えることができてないんだよ」
ミノタウロスの外皮を貫通できる攻撃力がない。
貫通力ならスピア系の魔術二種で何とかなるが、体に小さな穴が開いたところであいつらの生命力じゃ大した傷にならない。
そうなると覚えるべきなのはランス系魔術。
貫通力も破壊力も十分、構築が少し複雑だが何とか覚えられそうな範囲だ。
「ホーミング系はないの?普段使っているマジックミサイルみたいな」
「あるけど、マジックミサイルとはまた違う種類だし、まだ覚えられそうにないんだよね」
「うーん...、魔術って複雑だね」
本当に複雑だ。
追尾型の魔術は特に複雑で、魔術の構造が他のものと違う。魔術を構築できたとしても、対象をしっかり目で捉えていないと追尾されない。
普通に魔術を使うだけで目をたくさん使うのに、追尾になるとさらに目を使う。
魔術師にとって目は心臓、一番重要な部位である。モニカさんはそう言っていた。
「前にオーク、四体、後ろの一体が弓!」
「弓持ち狙う、援護するから突撃して!」
クロスボウを構えて最後尾の弓持ちを撃つ。
サーシャが左に駆け出し、俺は右に走る。
マジックミサイルで横から吹き飛ばした後、サーシャが残党を切り捨てる。
「いい感じじゃない?」
「弱い群れならこんな感じかな。数が多くなったら混戦になるだろうし、誤爆しないように練習もしなきゃな」
そこらへんのオークで雑魚との戦いの練習、オーク程度ならだいぶ慣れてきた。
クロスボウの矢を回収、弓と比べれば矢の値段は安いが、それでもそこそこ高い。
「シュウさ、近づかれた時ってどうするの?」
「...クロスボウで殴る?」
呆れた目で見られた。
言われてみれば、今まで近接での対処法がなかった。
手持ちの近接武器は短剣だけ、あとはクロスボウで殴るか矢で刺すかだ。
「シュウも剣とか買ったら?」
「でも、使えるかな...」
「それか鉈とかどう?」
鉈、それなら普段使いもできる。
近接で戦いやすいし、便利で安い。
「鉈って武器屋?それとも道具屋?」
「武器屋の方が戦闘向きな気がするし、そっちから見てみよう」
森から戻って街、さっそく鉈を買いに来ていた。
サーシャの短槍を買った武器屋に入り、さっそく鉈を探してみる。
「鉈って結構置いてあるんだね」
「でも、思ってたより大きいな...」
「このくらいの大きさの方がいいんじゃない?」
刃渡り40cmほど、重さも結構ある。
威力は高いだろうが、正直俺の筋力で振り回すのは少しきついかもしれない。
価格は5万グロス、安いし丈夫そうなので結局この大鉈を買うことにした。
「近接の攻撃を避けてカウンター!ってシュウはできる?」
「できないかも...」
「じゃあ私が練習してあげるよ!ほら、森に行くよ!」
「うえぇ...」
その日からサーシャによる近接回避訓練が始まった。
ぼこぼこにされながら数日かけて練習し、まあまあ避けれるほどにはなってきた。
俺が鉈のために筋トレをしている横で、サーシャも短槍の投擲練習をしている。
あの剛腕で投げられる短槍、本人のコントロール力も高いので威力と命中精度両方がクロスボウの上位互換になっている。
鉈を武器として振ってみて気づいたことがある。
エンチャントでの威力強化は思ったより高いということだ。
一撃に集中させる形で付与すれば、小さい岩なら叩き斬れるほどの威力が出る。
剣と比べると小さいので、魔術と組み合わせての不意打ちもできる。
予備武器としてはかなりいいかもしれない。
「シュウ、なんかすごく重そうだね」
「荷物が思ったより重くなってきちゃったよ...」
クロスボウが重いのに加えて、大鉈も持つようになった。当然、荷物の重量が多くなるし、その分の体力消費も増える。
「次の街に行くまで、ひたすら筋トレだね!」
「いやだぁ...」




