30話 "散歩と短槍"
「あっちにも砦、向こうにも砦、それで目の前にはまた壁...、すごい景色だね」
「さすが王国最大の城塞都市、そこら中に砦があるね」
シュワコヴォ市内は無数の人が行き交い、活気に満ち溢れている。行商人に巡礼者、冒険者や衛兵、身綺麗な貴族から、遠路から来たであろう薄汚れた旅人まで。
多種多様な人々が大通りを賑わせている。
街に来て三週間ほど経った。
金がないからと必死に依頼をこなして稼ぎ、ついに10万グロスの資金が貯まった。
そして、今日は休日。
サーシャの提案で、中心街に散歩と買い物に来ていた。
「なんか、いままでの街は丸く広がってたけど、ここはなんか縦長だね」
「ブルトヴァルトの切れ目にある都市だから、横に広がれずに、縦に広がったらしいよ」
「そうなんだ。なら、この城壁の一番外はブルトヴァルトなの?」
「うん。森の中心部を貫くように都市と交易路があるんだって」
本来、ブルトヴァルトは北海から南エウレ山脈までにかけて広がっていたという。
しかし、大昔になんらかの影響によって、幅数十kmに及ぶ『切れ目』が発生。
現在ではその切れ目が、東西をつなぐ巨大な交易路になっている。
「見て、あそこの露店、たくさん武器が売ってる!」
サーシャが駆け寄った露店、そこには様々な武器が置かれていた。
「そこのお二人さん、うちが旅で買い集めた武器、よかったら見てきな!」
「なんかいろんな片刃の剣があるけど、これは何?」
「それは東方の曲刀、こっちにあるのがパルーシャの曲刀だよ」
そう言って商人が二種類の刀剣を見せる。
片方の曲刀は非常に見覚えのある形をしていた。
日本刀だ。
「おや、兄ちゃん。これが気になるのかい?」
「珍しい形だな、と思って」
「遥か東の刀剣だからね。東刀、というらしいよ」
この世界の日本刀は東刀と呼ぶらしい。
久しぶりに前世を思い出すものを見たので、少し欲しくなってしまった。
しかしあまりに値段が高いので諦めた、一振りで80万グロスはするらしい。
「シュウ、前に短弓が欲しいって言ってなかったっけ」
「うん、そのうちクロスボウから変えたいなって思ってるけど」
「あっちに短弓が売ってるよ、見に行こう!」
今度は別の露店に駆け出すサーシャ、人が多いので見失わないように追いかける。
この露店は各地の弓を取り扱っているらしく、短弓も何種類かおかれていた。
形はかなり違うが、性能などの違いはよくわからない。少し店主に聞いてみよう。
「この二つって何が違うんですか?」
「こっちは木から削り出した木弓、そしてこっちは骨や腱を使って作られた複合弓、らしいぞ」
「骨や腱?」
「ああ、なんでも威力がロングボウと同等だとか。値段は張るが、その分性能は高いってことだ」
値段は50万グロス、輸入品だから当然高い。
買うなら安い木弓だろうか...
「おじさん、この複合弓ってどこの地方の物なの?」
「東エウレとかパルーシャの方だな、遊牧民から買った物だ」
「ってことは、そっちに近いところならこんなに高くないってコト?」
「うちの商品が高いと...。まあ、そういうことになるな。」
サーシャがちょっと失礼なことを言っている。
ただ、東の方なら少し安く買えるかもしれないらしい。
買うのはまた後でもいいだろう。
露店の武器を見ていた流れで、武器屋に行くことになった。
交易都市ではあるが、軍都としても栄えてきたので、街に武器屋が多くある。
とりあえず入りやすそうな場所を探し、試しに入店してみる。
長剣や両手剣、斧や槌などいろいろな物が並んでいる。
サーシャは短槍をミハウおじいさんから教わっていたはず。
短槍を探して値段を見ると、意外と安い。
「サーシャ、短槍が意外と安いよ」
「どれどれ...、あっ本当だ。7万もあれば買えるんだね」
長さは1mほど、サーシャの長剣と同じくらいだ。
「短槍ってどう使うの?」
「投げたり突いたりとかかな、左手に持って薙ぎ払ったりもできるし」
サーシャ無双が始まるんだろうか。
今ある手持ちは10万、宿代などの生活費は別であるため、買うことはできる。
「どうせなら買おうか、そろそろ昇格も近いし」
「えっ?...でも、シュウの防具も武器も用意できてないよ?」
「俺は魔法があるから大丈夫。サーシャの方が危険が多いし、武器は多いほうがいいよ」
「...うん、分かった」
並んでいる短槍からちょうどいいのを見繕い購入。
価格は8万グロス、投げと切り払いができるタイプだ。
そんな風に散歩と買い物をしているうちに夕暮れ。
晩御飯は近くの雰囲気の明るい酒場で。
ソーセージ料理が安かったので何個か注文、思ったよりボリュームがあったので腹がパンパンになった。
宿に戻ったら風呂。
この宿の風呂は石の浴槽があるタイプで、久しぶりに湯船入ることができた。
蒸し風呂もあったので覗いてみたが、マッチョが無数にいたので入るのをやめた。
そんなこんなで休日は終わり、Cランクの昇格が間近に近づいてきた。




