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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第2章 新人冒険者
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29話 "合同依頼、達成"

「二人共、助かった」


廃村にいたモンスターとの戦闘後、バルシュさんにお礼を言われた。


「あそこで横やりを入れられていれば、俺らは無傷で帰れなかっただろう」

「いえ、少し支援をしただけです」

「謙遜するな。にしても、あのサーシャという少女はとんでもないな...、トロールを真っ二つにする剣士は初めて見た」


自慢げに胸を張るサーシャ。

その後ろには、体を斜めに両断されたトロールが倒れている。

剣にエンチャントをしていたとはいえ、あんなに分厚い体を真っ二つにするなんて、人間業とは思えない。


「シュウ君、ちゃんとクラス3使えるじゃない。綺麗な魔術で感心したわ」

「まだこれが限界なんです、もう少し使えるようになりたいんですけど...」

「練習あるのみ、ね」


ブラッドモラスクで練習したと比べ、アクアサイスはしっかりと形になった。

初のクラス3攻撃魔術、だがこれでも足りない。

今もトロールのとどめはサーシャ頼り、連携としてはそれでいいのかもしれない。


だが、これは俺が嫌だ。

任せっきりの戦い方、これじゃいざという時にサーシャを守れない。


トロールの死体を調べていたレオンさんとウェラさんが戻ってきた。


「廃屋にいたあの二体、あいつらがここの群れのリーダーだったみたいだ」

「あいつらを見逃していれば、レイドの核になったかもしれない、危なかったわ」

「...えっと、レイドの核ってなんですか?」


ボリャックの人たちがいろいろ話しているが、どういうことかよくわからない。

隣のサーシャもチンプンカンプンといった顔をしている。


「モンスターの集団襲撃はレイドと呼ばれる。ほとんどの場合、上位のモンスターが下位のモンスターや群れを率いて行うんだ。ここにいた群れは、おそらくあの二体が集めたんだろうな」

「この群れをあいつらが集めた...、結構大きな群れでしたね」

「これでも小さいほうだ。中規模なものだと百体前後、大規模になると千近くになるらしい。そこまで行くと、俺らより軍の仕事になるがな」


中規模で百体...

昔、孤児院にいた時にリザードフォークの襲撃があったが、その時は6体だった。

あれは本当に小さい襲撃だったんだなあと、今更ながら感じた。


「さて、と。もう戦闘が終わったがまだ昼だ、少し雑談でもしていこう」


廃村の残骸に腰を掛ける。

サーシャは剣の調子を気にしている、骨ごと叩き斬ったから刃こぼれが心配なようだ。幸い、丈夫な剣なので傷は特についていない。


「お前ら、Cランクの昇格が近いんだろう。聞きたいことはあるか?」

「昇格依頼があるって聞いたんですが、何をするんですか?」

「簡単だ。指定されたCランクのモンスターを討伐するだけだ」


すごく単純だ。

ただ、『指定された』の部分が気になる。


「どういうのが指定されるんですか?」

「そうだな...、俺らが受けたのはだいぶ前だ、今は変わっているかもしれない」

「だいぶ前?二年前だろ、熟練者面するにはまだ早いぞ、バルシュ」

「うるさいぞ、レオン。まあ、大体はオーガやミノタウロスあたりだ。Cランクの中でも上位の奴らが指定される」


オーガとミノタウロス、どちらも怪力頑強の象徴のような奴だ。

なおさら魔術を練習しなくてはいけない理由ができた。


「それと、オーガやミノタウロスと戦うとなったら、絶対にその場で仕留めろ」

「どうしてですか?」

「こいつらは執念深い。オーガはプライドが傷つけられたとなれば、地獄の果てまで追いかけてくる。ミノタウロスは残虐だ、獲物を追いつめてなぶり殺す」

「瀕死のオーガに小便をかけた男が翌年同じオーガに殺された、なんて噂話があるくらいなんだぞ」


怪力頑強で執念深い。これだけでだいぶ怖い、戦うなら入念に準備しておこう。

しばらくモンスターや依頼の話をした後、今度は旅の話になった。


ボリャックの人たちは王国南部の生まれらしい。

各地を旅した経験もあるらしく、ためになる話も多い。


「二人はどこを目指してるんだ?」

「王国を回って冒険者に慣れてきたら、外の国に行ってみたいなって思ってます」

「そうか。外国に行くときはしっかり情勢を確かめろよ、国に入れず引き返すことになるかもしれんからな」

「えっ、入れないなんてこともあるの?」

「紛争やレイドが起きると封鎖されるからな。東の方は特に不安定だ、旅に慣れるまではいかない方がいい」



気づけば日没が近づいていた。

ボリャックの人達はいい人で、時間を忘れて話し込んでしまった。


「シュウ。そのクロスボウ、補助として使っているのかい?」

「あっ、ウェラさん。そうです、基本は補助みたいに使ってます」

「それなら短弓に変えた方がいいだろう、資金が集まったら考えてみるといい」

「わかりました、ありがとうございます」


それだけ言ってまた離れていった。

寡黙なタイプなんだろうか。それと、やはり短弓の方がいいらしい。

暇なときに値段も見てみよう。


「依頼達成を確認しました、こちらのトロール2体の方は追加報酬になりますね」


冒険者ギルドのカウンター。

依頼達成の報告を行い、受付嬢が報酬の方を勘定している。

少し周囲を見ると、熟練の冒険者しかいない。やはり土地の危険度が高いからだろうか。


「基本報酬の10万に加え、追加の2万グロスになります」

「ああ、ありがとう」


バルシュさんが報酬を受け取り、横のメインホールに全員で集まる。

テーブルに置かれた12枚の金貨。8枚がボリャックに、2枚が俺らに置かれている。

中央に置かれた2枚が俺らに渡された。


「追加を倒したのはお前ら、この二枚はお前らの分だ」

「ありがとうございます!」

「お前らの獲物なんだから当たり前だ...、それとこれもだ」


レオンさんが1枚の金貨を弾く。

コロン、と音を立て金貨がこちらに置かれた。


「お二人さん、報酬に関してはもう少し貪欲になるべきぞ」

「この金貨は...?」

「お礼だよ。トロールの横やりを防いでくれた分のな」


「次は会えないかもしれない仕事なんだ。借りはすぐに返す、これが俺の信条だ」

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