29話 "合同依頼、達成"
「二人共、助かった」
廃村にいたモンスターとの戦闘後、バルシュさんにお礼を言われた。
「あそこで横やりを入れられていれば、俺らは無傷で帰れなかっただろう」
「いえ、少し支援をしただけです」
「謙遜するな。にしても、あのサーシャという少女はとんでもないな...、トロールを真っ二つにする剣士は初めて見た」
自慢げに胸を張るサーシャ。
その後ろには、体を斜めに両断されたトロールが倒れている。
剣にエンチャントをしていたとはいえ、あんなに分厚い体を真っ二つにするなんて、人間業とは思えない。
「シュウ君、ちゃんとクラス3使えるじゃない。綺麗な魔術で感心したわ」
「まだこれが限界なんです、もう少し使えるようになりたいんですけど...」
「練習あるのみ、ね」
ブラッドモラスクで練習したと比べ、アクアサイスはしっかりと形になった。
初のクラス3攻撃魔術、だがこれでも足りない。
今もトロールのとどめはサーシャ頼り、連携としてはそれでいいのかもしれない。
だが、これは俺が嫌だ。
任せっきりの戦い方、これじゃいざという時にサーシャを守れない。
トロールの死体を調べていたレオンさんとウェラさんが戻ってきた。
「廃屋にいたあの二体、あいつらがここの群れのリーダーだったみたいだ」
「あいつらを見逃していれば、レイドの核になったかもしれない、危なかったわ」
「...えっと、レイドの核ってなんですか?」
ボリャックの人たちがいろいろ話しているが、どういうことかよくわからない。
隣のサーシャもチンプンカンプンといった顔をしている。
「モンスターの集団襲撃はレイドと呼ばれる。ほとんどの場合、上位のモンスターが下位のモンスターや群れを率いて行うんだ。ここにいた群れは、おそらくあの二体が集めたんだろうな」
「この群れをあいつらが集めた...、結構大きな群れでしたね」
「これでも小さいほうだ。中規模なものだと百体前後、大規模になると千近くになるらしい。そこまで行くと、俺らより軍の仕事になるがな」
中規模で百体...
昔、孤児院にいた時にリザードフォークの襲撃があったが、その時は6体だった。
あれは本当に小さい襲撃だったんだなあと、今更ながら感じた。
「さて、と。もう戦闘が終わったがまだ昼だ、少し雑談でもしていこう」
廃村の残骸に腰を掛ける。
サーシャは剣の調子を気にしている、骨ごと叩き斬ったから刃こぼれが心配なようだ。幸い、丈夫な剣なので傷は特についていない。
「お前ら、Cランクの昇格が近いんだろう。聞きたいことはあるか?」
「昇格依頼があるって聞いたんですが、何をするんですか?」
「簡単だ。指定されたCランクのモンスターを討伐するだけだ」
すごく単純だ。
ただ、『指定された』の部分が気になる。
「どういうのが指定されるんですか?」
「そうだな...、俺らが受けたのはだいぶ前だ、今は変わっているかもしれない」
「だいぶ前?二年前だろ、熟練者面するにはまだ早いぞ、バルシュ」
「うるさいぞ、レオン。まあ、大体はオーガやミノタウロスあたりだ。Cランクの中でも上位の奴らが指定される」
オーガとミノタウロス、どちらも怪力頑強の象徴のような奴だ。
なおさら魔術を練習しなくてはいけない理由ができた。
「それと、オーガやミノタウロスと戦うとなったら、絶対にその場で仕留めろ」
「どうしてですか?」
「こいつらは執念深い。オーガはプライドが傷つけられたとなれば、地獄の果てまで追いかけてくる。ミノタウロスは残虐だ、獲物を追いつめてなぶり殺す」
「瀕死のオーガに小便をかけた男が翌年同じオーガに殺された、なんて噂話があるくらいなんだぞ」
怪力頑強で執念深い。これだけでだいぶ怖い、戦うなら入念に準備しておこう。
しばらくモンスターや依頼の話をした後、今度は旅の話になった。
ボリャックの人たちは王国南部の生まれらしい。
各地を旅した経験もあるらしく、ためになる話も多い。
「二人はどこを目指してるんだ?」
「王国を回って冒険者に慣れてきたら、外の国に行ってみたいなって思ってます」
「そうか。外国に行くときはしっかり情勢を確かめろよ、国に入れず引き返すことになるかもしれんからな」
「えっ、入れないなんてこともあるの?」
「紛争やレイドが起きると封鎖されるからな。東の方は特に不安定だ、旅に慣れるまではいかない方がいい」
気づけば日没が近づいていた。
ボリャックの人達はいい人で、時間を忘れて話し込んでしまった。
「シュウ。そのクロスボウ、補助として使っているのかい?」
「あっ、ウェラさん。そうです、基本は補助みたいに使ってます」
「それなら短弓に変えた方がいいだろう、資金が集まったら考えてみるといい」
「わかりました、ありがとうございます」
それだけ言ってまた離れていった。
寡黙なタイプなんだろうか。それと、やはり短弓の方がいいらしい。
暇なときに値段も見てみよう。
「依頼達成を確認しました、こちらのトロール2体の方は追加報酬になりますね」
冒険者ギルドのカウンター。
依頼達成の報告を行い、受付嬢が報酬の方を勘定している。
少し周囲を見ると、熟練の冒険者しかいない。やはり土地の危険度が高いからだろうか。
「基本報酬の10万に加え、追加の2万グロスになります」
「ああ、ありがとう」
バルシュさんが報酬を受け取り、横のメインホールに全員で集まる。
テーブルに置かれた12枚の金貨。8枚がボリャックに、2枚が俺らに置かれている。
中央に置かれた2枚が俺らに渡された。
「追加を倒したのはお前ら、この二枚はお前らの分だ」
「ありがとうございます!」
「お前らの獲物なんだから当たり前だ...、それとこれもだ」
レオンさんが1枚の金貨を弾く。
コロン、と音を立て金貨がこちらに置かれた。
「お二人さん、報酬に関してはもう少し貪欲になるべきぞ」
「この金貨は...?」
「お礼だよ。トロールの横やりを防いでくれた分のな」
「次は会えないかもしれない仕事なんだ。借りはすぐに返す、これが俺の信条だ」




