28話 "合同依頼"
「合同依頼、ですか?」
親の顔より見た冒険者ギルド。
いつものように依頼を探していると、受付嬢に手招きをされた。
「はい。実は、とある依頼でCランクが六人ほど必要だったのですが...。生憎、あと二人ほど足りなくてですね」
「でも、俺らはDランクですよ?」
「ですが、Cランクの昇格条件をほとんど満たしています。それに、依頼を受けたパーティーの方はベテランなので、実力は十分と判断されたんです」
二つのパーティーの合同依頼、相手はベテランらしい。
冒険者歴三ヵ月の我々からしたらご指導をいただけるチャンスだ。
しかし重要なところが気になる。
「報酬はどうなるんですか?」
「当事者の間での対話によって決めていただくことになりますね」
問題が起きかねない決め方だな...
しかしこの依頼を達成すれば昇格に大きく近づくらしく、余程のことじゃない限り安全らしい。
「わかりました、受けてみます」
「ありがとうございます、では日程の方はこちらになりますので、よろしくお願いします」
依頼の内容は『小規模なレイドの防止』、トロールやオークの討伐だ。
相手が怖くないことを祈りつつ、当日の準備を進めた。
「お前らが『ガウェイン』か?」
合同依頼当日、集合場所に行くと四人の冒険者が居た。
ハルバードとファルシオンの前衛、弓と魔術師の後衛の四人パーティーだ。
「はい、シュウとサーシャです。よろしくお願いします」
「俺らは『ボリャック』だ」
ファルシオンと丸盾を持った男がリーダーのバルシュ、ハルバード使いがレオン、弓使いがウェラ、魔術師がリサルダというらしい。
前衛は屈強な男性、後衛は若い女性だが、かなりのベテランと感じる。
「時間が惜しい、歩きながら話すぞ」
「はっ、はい!」
バルシュさんは不愛想に歩き出した。
歩きながら情報共有をしていく。
「冒険者になってどのくらいだ?」
「三ヵ月ほどです」
「三ヵ月だと、本当にDランクの上位なのか?今まで倒したモンスターでCランクのは何がいる?」
「トロールとブラッドモラスクです」
冒険者歴を聞いてかなり訝しげにしていたが、モンスターの名前を聞いて幾らか納得したように見えた。
「報酬の方は合計10万になる。俺らで8万、お前らが2万、追加報酬の配分は別相談。これでいいか?」
「大丈夫です」
俺らが足を引っ張る側になるので、ここら辺は言う通りにしておこう。
ふと後ろを見ると、サーシャが後衛の人たちとのお喋りに花を咲かせていた。
「ところで、お前が後衛か?前衛はあっちの少女なのか?」
「はい、サーシャが前衛ですね」
「そうか、わかった」
簡単な情報共有が終わったので、俺は後衛陣の方に入った。
すると、魔術師のリサルダさんが話しかけてきた。
「えっと、シュウ君だっけ?君は魔術、どのくらい使えるのかしら?」
「クラス2の火と水と風です、クラス3はまだあまり...」
「まあ十分かな、そのクロスボウは?」
「狙撃用です。メインは魔術で、たまにクロスボウを使います」
「おっけ、じゃあお姉さんと一緒に戦おっか」
リサルダさんはクラス3の風属性が使えるらしい。
そんな風に話しながら歩いてると、目的の狩場についた。
廃村、村民はモンスターの襲撃から逃れるために移住したのだろう。
その跡地にトロールが5体、オークが15体ほど住み着いている。
依頼の内容通りの数、あれをすべて討伐で達成になる。
「ウェラ、リサルダ、シュウ。三人でまず奇襲し、数を減らせ。二射撃って術師は後退、俺とレオンでトロールを、サーシャはオークを狩れ」
リーダーのバルシュさんがメンバーに指示を出す。
サーシャがトロールと戦わせてもらえないのを不満そうにしているが、宥めて何とか納得してもらう。
「シュウ君、マジックミサイルはいける?」
「はい、自分は右側のオークを狙えばいいですか?」
「うんうん、じゃあ私は左側かな」
「二人共、用意はできたか?」
ウェラさんが弓を引く。
それに合わせて俺とリサルダさんも魔術の構築を始める。
合図はウェラさんだ、矢が放たれたのと同時に魔術を放つ。
「「マジックミサイル」」
1本の矢と13個の魔弾が集団を襲う。
オークのほとんどが吹き飛び、戦いが始まった。
二射目のマジックミサイル、対象はトロール。
集中攻撃を受けた一体が倒れ、残りは4体のトロールと5体のオークだ。
「ウェラ!トロールの足を潰せ!」
エンチャントされた矢がトロールの足に突き刺さり、そのまま体勢を崩す。
暴れようとするトロールの腕がバルシュさんのファルシオンで切り落とされ、頭をレオンさんのハルバードが叩き斬った。
その隙に近づく別のトロールがリサルダさんの魔術で足止めされる。
連携によって少しずつ、堅実にトロールが倒される。
これがベテランの実力、俺らにはこういう戦い方はできない。
四人が連携してトロールを倒している時、サーシャはオークを蹂躙していた。
近寄ってきた奴を切り伏せ、槍の突きを払いのけて蹴り飛ばす。
武器と武器の打ち合いは起きない、サーシャは相手の武器を体ごと切り裂く。
軽快なステップで攻撃を避け、カウンターの一撃で敵を両断する。
それがサーシャの戦い方だった。
ほとんどのモンスターが倒された時、廃村の方で何かが動いたように見えた。
目を凝らしてよく見ると、一つの廃屋からゆっくりと巨体が出てくるのが見える。
トロールが二体、周囲の死体に気づくと、すぐに仲間に加勢しようと走り出した。
バリャックの四人は戦闘中、このままだと二体に横やりを入れられる。
対応できるのは俺らだ。
「サーシャ、向こうの廃屋!」
「?...うわっ!シュウ、援護お願い!」
地面を駆けるサーシャ、加速しトロールに近づいていく。
俺らの様子に気づいたレオンさんが叫ぶ。
「おい二人、無理すんな!」
「大丈夫です、行けます!」
咆哮しながら突進するトロール。
照準は足元、とっさの防御魔術も準備万端。
「アクアサイス!」
鋭利な水の刃が足を切り落とし、トロールは地面に崩れ落ちる。
俺の役目は終了、あとはバインドで妨害し防御魔術を展開するだけ。
「シュウ、サンキュー!」
廃墟の壁を踏み台にサーシャが飛び出す。
崩れ落ちてるトロールの首を空中で刎ね、着地と同時にもう一体へと走る。
トロールの再生力は高く、皮膚は硬い。ほとんどの傷は数十秒で再生してしまう。
よって、足止めをして頭を潰すのが一般的な討伐手段だ。
サーシャがトロールの右脇腹から左肩にかけて切り上げる。
分厚い巨体が二つに両断された。




