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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第1章 旅立ちまで
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1話 "成長の眠り"

橋の下から拾われ、3年ほどが経った。

俺は「シュウ」、一緒に拾われたもう一人は「サーシャ」と名付けられて育てられていた。三歳児ともなれば少しずつ運動能力も成長してきており、少しずつ周りを探索することができている。


「こらサーシャ!危ないからそんなところに登らないの!」


サーシャはあまりにも活発すぎる。時折棚の上によじ登ったり、ものすごい勢いで走り回ったりしている、あまりにも運動能力の発達が早く驚いてしまう。


3年間で言語も大体聞き取れるようになり、会話を聞きながら情報を収集することができるようになった。

この施設はスクライラス孤児院というらしい。スクライラスという小さな都市にある元教会の孤児院で院長はイジナ・グレコロヴァ、俺ら二人を橋の下で拾ってくれたあの女性で、みんなに院長先生と呼ばれている。


孤児院にはイジナ先生の他に、数人の先生と町の教会から来たシスターたち、そして15人くらいの孤児がいるらしい。合計で何人いるかはまだ自由に動き回れないからわからないが、大体そのくらいの人数がいることはなんとなく推測できる。


この孤児院には俺ら以外の赤子もいる。

俺とサーシャが過ごすこの部屋の隣、そこにはボルコとルイザという二人の赤子がいる、二人とも同年代くらいで、時折四人で遊ぶことがある。


四人の中でサーシャが一番活発で、ルイザが一番臆病で、ボルコが一番好奇心が強く、俺が一番おとなしい。全員を同じ部屋で遊ばせると、サーシャとボルコが高いところにある積木や変わった置物を探し出し、ルイザと俺がそれを高く積み上げていく。孤児院で一番若いシスターであるモニカさんは、どんどん高くなる積み木に大笑いし、マトリョーシカの置物をてっぺんに飾ろうとしたところを院長先生のげんこつで制裁されていた。


赤子の部屋は二階にあり、時折下の階から年長の子たちが面倒を見にやってくる。

一階からはよく楽しそうな声が聞こえてくる。あと数年もすれば俺たちも下の階で生活できるのだろう、成長すればできることが広がるということを二度目の人生にして深く理解できている。


年長の子たちはたまに絵本を持ってきて読み聞かせをしてくれる。

騎士とドラゴンの物語や大魔法使いのおとぎ話、食いしん坊の芋虫がおなかを壊す絵本などいろいろな読み聞かせをしてくれる。サーシャは騎士の絵本が気に入ったようで、読み聞かせになると前のめりに座りながら目を輝かせて聞いている。ルイザは恐ろしいタイガの魔女の伝説で泣いてしまい、ボルゴは一つの石から大金持ちになった商人の物語に熱中している。


俺が最も興味を持った話は魔法使いの伝説だった。


この世界はただの中世ではない、魔法という不可思議な術で文明が発展している。

魔法は身近にある。天井からぶら下がった魔石入りランタンを点灯させるのはモニカさんの仕事だ。モニカさんはほかのシスターや先生がいないとき、光を操って光絵を見せてくれる、俺らがキャッキャするのを見てすごく得意げにしている。


町の外の平原や森林には物語に出てくるような化け物、モンスターがいる。

モンスターの出る物語では必ず勇敢で正義感の強い冒険者が出てくる、しかしドラゴンの出てくる物語では冒険者は強欲さで身を滅ぼす人として描かれている。天災のようなドラゴンは騎士や魔法使いに打ち倒され、魔女は騎士と魔法使いを惑わし恐ろしい結末に変えてしまう。


本当はもっといろいろな本を読んで情報を得たい、しかし3歳の体では自由に本を読むことはできない。

読書への欲求でもじもじしていると、熟練の先生であるマチルダ先生がなんとなく察したのか、四人に文字の勉強を始めてくれた。マチルダ先生はイジナ院長よりも年を取った熟練の先生だ、サーシャが勉強に集中できないのを見越し、騎士などの物語を交えながら勉強を進めていった。文字の勉強は次第に算数などが加わり、5歳になるころには幼稚園生ほどの知識が身についていた。


夜、モニカさんが寝ぼけながら歌う微妙に寝付けない子守唄を聞きながら考え事をしていた。

昼間の授業の際にマチルダ先生が言っていたこと。


「勉強は大事です。ここを出た後、どうやって生活するにしても勉強で知識を得ないと、悲しい絵本のような最後になってしまいます」


今まで見たことのある孤児で、一番の年長は高校生前くらいの年齢だった。

恐らく16歳が卒業の時だろう、それまでに自分の進路を決め、そのための知識や技術について勉強をしなければならない。


サーシャはどうするのだろうか、自分の将来より先にそっちが頭に浮かんでしまっていた。同じ橋の下に捨てられ、同じ部屋で過ごしたサーシャのことを、自分の姉や妹のように考えてしまう。

この世界は別に生きやすいわけでもないだろう、むしろその逆かもしれない。

あともう少しすれば、あともう少し成長できれば、図書室に入って本を読むことができる。

そうすればたくさんの知識を得て、自らの進路を考えることができるだろう。


「むにゅぬ....うん?シュウちゃんまだ起きてたんですかぁ?ちびは寝なきゃ成長できませんよ、はよねなさーい...」


いくら望んだって時間は早くならない。

いまはモニカさんの言う通り、寝て成長を待てばいいだろう。

雑な子守唄を聞きながら眠りに落ちた。

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