27話 "モンスターは美味しくない"
シュワコヴォ市に滞在し、十日間近くたった。
街に着いた次の日から依頼を受け、モンスターを倒してお金を稼ぎ続ける。
受けれる依頼の範囲が広がったので、Cランクの簡単な依頼を中心に受けていた。
依頼の内容は依然とあまり変わらない、ゴブリン討伐やオーク討伐だ。
前と変わらない内容、最初は楽勝だと思っていた。
「...あれってさ、本当にゴブリン?」
「うん」
「なんか体格が大きくない?」
ブルトヴァルト、濃密な魔力を内包する大森林。
魔力の濃い地帯に棲むモンスターは他の地域と比べ、強力な固体になる。
この十日間で倒したゴブリンやオークは、どれも体格が一回り程大きく強かった。
そうなると問題が一つ浮上する。
俺の攻撃手段がだいぶ限られることだ。
今ある俺の攻撃手段は魔術とクロスボウによる狙撃の二つ。
クロスボウによる狙撃はエンチャントの上達により、命中すれば一撃で確実に仕留めれるほどの威力がある。しかし速射は不可、毎分8発が限度だ。
一方で速射ができる魔術は微妙。今使える魔術がクラス2の無属性・火・水・風のみ、この中でいま通用する威力があるのに絞れば、2,3種ほどしかない。
攻撃手段がないとサーシャに依存することになってしまう。
それを避けるため、俺は今クラス3の魔術を練習していた。
「ブラッドモラスクってさ、どんなモンスターなの?」
「陸を走るタコみたいな感じ」
「...タコ?」
我々は内陸生まれ、サーシャはタコを知らなかった。
「えーっと、足がたくさんあってグニャグニャしてるのが陸を走ってる」
「きっしょいね、強いの?」
「森の中だと、木から降ってきたりして危険だから、おびき寄せて倒すよ。あと、水で攻撃してくるらしいから、いつでも回避できるようにね」
「水で?」
「うん、簡単な魔術攻撃をしてくるらしい」
今回の依頼はブラッドモラスクの討伐、Cランクの簡単な依頼だ。
狩場についたらまず、敵を森からおびき出さないといけない。
懐から用意しておいたものを取り出す。
「それって魔石?」
「うん、一番安い魔石だよ。これを、ライト!」
魔石を強く発光させて森に投げる。
ポトリ、と光の塊が地面に落ちた。
数秒置いて何かが光りに飛びつく。
子供ほどの大きさのある、焦げ茶色のタコ。
そんな化け物が3,4匹ほど光に飛びついている。
あれがブラッドモラスクだ。
「サーシャ、ちょっと俺の後ろに居て」
「え、大丈夫?」
「練習で魔術を撃つから、反撃された時に魔術で防ぐために」
「おっけー!」
サーシャが後ろに隠れたのを見て、魔術を用意する。
練習しているのはクラス3の水魔術、モニカさんが得意にしていた魔術だ。
「アクアサイス」
本来は水の鎌、のはずだ。
飛んでいったのはでかめの水の塊、到底切り裂けそうに見えない。
何体かのブラッドモラスクが水に当たってよろめく。
ブラッドモラスクは攻撃的だ。
こちらを見つけると、すぐにその漏斗をこちらに向けてきた。
魔力が蠢き、漏斗に向かって流れていく。
「プロテクト!」
ブラッドモラスクが赤黒い水弾を放つ。
直撃したら打撲や骨折する威力を持つが、魔力の障壁は簡単にそれを防いだ。
周囲に赤い水飛沫が飛び散る。
「えっ何あれ、血?」
「ただの色がついた水、血じゃないよ」
ブルトヴァルト、この森にある魔力は赤みを帯びている。
ブラッドモラスクは体内の魔核で赤い魔力を吸い込み、水弾として漏斗から放つ。
その水弾が血のように見えることから、ブラッドモラスクと呼ばれるようになったという。
所詮は軟体生物、そこまで硬い敵ではないので、今の俺の魔術でも簡単に倒せる。
氷の破片で切り裂き、まとめて狩ることができた。
近づいて魔核を剥ぎ取る。
漏斗にあるのでしっかり止めを刺さないと、手を持っていかれる。
「なんかきもいね、このモンスター」
「魔核のある場所が手を突っ込みたくな...、プロテクト!」
前方から魔力の流れを感じた。
ここら辺の森はどこも自然に漂う魔力が濃い。その中でも、魔力の流れを感じた。
後退しながらサーシャの前に立ち、障壁に魔力を込める。
何かが障壁にぶつかった。
赤黒い水の槍、クラス2のアクアスピアだ。
それを放った主が勢いよく森から飛び出てきた。
「なんかでっかいよあれ、しかもすごくキモイ!」
「多分メスかな...、ブツブツしたのは卵だと思う」
俺らと同じほどの大きさのブラッドモラスク。
最悪なことになんかブツブツした卵がついている、本当に気持ち悪い。
あまりに気持ち悪かったので、手当たり次第に魔術を撃ち込んで倒した。
魔核はじゃんけんで負けたサーシャが取り出した、すごく嫌そうな顔だ。
「たくさん狩れたね、どれくらい儲かったかな?」
「確か、討伐報酬が8000で、追加が一体ごとに500。メスは800くらいだったから、2万くらいになるかな」
「頑張った甲斐があったぁ」
「あっ、ちょっとここで待ってて」
「どうしたの?」
「トイレ!」
適当に嘘をついて見えないところまで行く。
ポケットに入れたソレを取り出し、火であぶる。
ブラッドモラスクの切り身、見た目はキモイが大体タコだ。
ワンチャン、ワンチャン食えるかもしれない。
そう思ってひとかけらを齧ってみる。
「ヴォエ!」
馬鹿みたいにまずい。
後から知ったが、おいしいモンスターは魔核がないタイプの一部くらいらしい。
ホーンボアは美味しいが、オークは豚肉と人肉の中間の味がするといわれている。
食べて確かめた人はかなりの狂人だ。




