25話 "次の旅出"
ジャラン、と音を出して小袋が置かれる。
「これが今回の依頼の報酬になります。基本報酬の6万と追加報酬の4万、合わせて10万グロスになります」
「追加で4万も...、そんなに?」
「十数体のモンスターを討伐、しかも予想外のトロールも倒したんですからね。依頼者の方達も感謝していましたよ」
本来、トロールはここよりも血色の森、ブルトヴァルトに近い森などで見られる。
ここまで来ることは早々ないことで、周囲の村落を襲い始める前に討伐できたのは最良だった。
「それと、依頼の達成数がある程度まで達したので、ここからはCランクの簡単な依頼を受けることができます。ここからさらに依頼をたくさんこなせば、Cランクに昇格することができますよ」
冒険者のランクは5段階に分かれているが、さらにランクは二段階で分けられる。
ギルドが名称を付けていない非公式の分類、上位と下位と呼ばれることが多い。
下位は成り立てほやほやを、上位はある程度依頼をこなし、一つ上のランクの依頼も受けれるようになった段階を示す。ただ、受付嬢の言うように簡単な依頼、つまり難しい依頼などは受けれない。
簡単に言えばDランクの折り返しまで来た、ということになる。
報酬も受け取ったので宿屋にもどる。
部屋に入ると、サーシャが剣の手入れをしていた。
「おかえりー、報酬どうだった?」
「10万ももらえちゃった...、頑張った甲斐があってよかった」
「そんなに!?なら、目標の旅代稼げたよ!」
ベッドの上に全財産が詰まった袋をひっくり返す。
全部で29万、目標の25万は突破している、かかった日数も大体1ヵ月、予定通りで完璧だ。
「それなら次の旅に出れるし、準備でも始めようか」
「旅の準備?...ってことは!」
「買い物、いこう!」
「やったー!」
必死にためたお金を使っての買い物。
必要最低限の物しか買えないとしても心は踊る。
まず最初に向かうのは防具屋、この前来た場所だ。
「レザーアーマーを一つください」
「あいよ。着るのはあんたかい?」
「私です!」
元気のいい声。
少女が防具を求めるのを見て店主は少し驚いたが、すぐに普通の表情に戻って採寸を始めた、冒険者を相手にしているとそういうことも多いのだろうか。
価格は16万グロス、性能は軽傷を防ぐ程度だが有無の差は大きい。
「硬化処理をしてあるやつだから、軽めの攻撃なら耐えられる。少し動いてみて、きつかったりしないか確かめてくれ」
「...うん、問題ないです!」
「よし。価格は16万グロスだ」
上金貨1枚に金貨6枚。
だいぶ高い買い物だが必要な物だ。そして、革鎧に長剣を身に着けた、サーシャはだいぶ剣士らしい見た目になった。前衛としてかなり頼れる。
次に買うのはブーツに旅の食糧、あとは衣服とか消耗品...
「こんなに買うの多いと、すぐにお金が無くなっちゃうね」
「次の街ではもうちょっと稼げるはずだから、そこでまた稼ごう。あっ、そういえば、Dランクの上位に入ったよ」
「ほんと?Cランクの依頼も少しできるんだよね、あとどのくらいで昇格できるのかな」
「次の街で多分昇格できるよ。ただ、ここよりも危険なところだから、今までより慎重にね」
次の旅程は2~3日ほど、スクライラスからジェログルードまでの距離よりは長い。
幸い道中の危険はあまりない。ただ、都市の立地が特殊なため、恐らく依頼などは難易度も報酬もかなり高くなるだろう。
そうなると問題が一つ、俺の魔術が通用しないかもしれないことだ。
トロールに攻撃魔術を放った時、効き目はそこそこだった。
Dランクの冒険者としてはクラス2の魔術が使えれば十分だろうが、次の都市ではおそらく不十分になる。
今使えるクラス3の魔術は補助魔術一つだけ、攻撃魔術も一つは覚えておきたい。
「店主さん、一か月間お世話になりました」
「料理もお風呂も最高でした、ありがとうございました!」
「おうよ、また街に寄った時はうちに泊まりな」
買い出しが終わり、荷物の整理も済んだ翌々日。
部屋を片付け、一階の店主に挨拶をしに行った。
一か月半も泊まったダニエルの酒場を離れるのは少し寂しく感じたが、旅をするならこれが普通になるのだろう。
「シュウ、次の街ってすごく大きいんだよね?」
「うん。王国の中だと三大都市とか言われてるんだって、この道をひたすら進めば着くよ」
そう言って道の上に立つ。
ジェログルード市を通る幅の広い舗装路、西エウレとラドガの遥か先をつなぐ交易路だ。
「じゃあ行こっか、ばいばいジェログルード!」
滞在日数は約6週間ほど、スクライラスを発った時は春だったが、この間に季節は初夏に入った。
次の目的地はシュワコヴォ市、初の大都市だ。




