22話 "休日"
冒険者になって一週間がたった。
ゴブリン狩りの依頼を毎日受け、合計で5万グロス近く稼ぐことができた。
しかし、一つ問題が起きている。この一週間で50体近いゴブリンを狩ったことで周囲に出没していたゴブリンの数は激減、ジェログルード市の周りからゴブリンはほとんど消えた。
依頼は当然、モンスターに困る人が居なければ出されない。ゴブリンが出没しなくなったことで依頼が消え、俺らは別の依頼を探さなければならなくなった。
「ゴブリン狩りつくしちゃったねえ...」
「受付の人に『ゴブリン狩りのプロですね』って言われちゃったね、私たち」
「ちょっと馬鹿にされてたような気がする、あれ」
サーシャはベッドの上でだらけている。
この一週間、連続で依頼を受け続けていたので、二人とも疲労がたまっている。
そんな状態でモンスターと戦うのは危ない、たまには休暇が必要だ。
「今日は休日ってことにして、街でも見て周らない?」
「いいね!私、交易市見てみたい!」
「とりあえず、朝ご飯食べよう。もう干し肉も黒パンもないし、一階で何か食べなきゃ」
「いいの?!やっと冷たいご飯から解放されるんだ...、あったかいご飯を食べれる...」
同じ食事からの解放の宣言を聞いて、サーシャがベッドから飛び起きた。
旅の前に買い込んだ食料はもう底を尽きた。幸いお金は稼げているので、外食をする余裕がある。
一階の酒場は朝なのもあって静かだ、隅の方に浴びるように酒を飲んでいる人がいるが気にしない方がいいだろう。
席についてメニューを見る、大体の料理は銅貨5枚で意外と安い。
俺はボルシチと芋の団子を、サーシャは肉入りのスープとパンケーキを頼んだ。
久しぶりの温かい食事だ。スクライラスを出発してから冷たいパンと干し肉しか食べてなかったからか、本当においしく感じる。
四品で2000グロス、財布にはだいぶ痛い。
一週間で5万グロスほど稼いだものの、それでも宿代で半分近く使っている。手持ちは約1万、金欠に変わりはない。
金欠に悩んでいても金は増えない。朝食を食べ終えたので、交易市を覗きに行く。
交易市に行く途中、冒険者ギルドを覗いてみた。
Dランクの俺らが受けれる依頼を見に行くと、ゴブリン討伐とは別の新しい依頼が出ていた。
内容はオーク討伐、ゴブリンより報酬が高い。こちらは森林ではなく丘陵やその周辺なので、森で使えなかった魔術も使える。
明日はこれを受けよう、多く稼がないと次の旅代が貯められない。
少し歩いて、交易市に着いた。
いろいろな地方の物品が売られていて、見ているだけで面白い。
サーシャが面白そうに露店を覗いている。綺麗なアクセサリを見て楽しそうだが、値段を見てのけぞっている。
「高いなぁ...、あれ一つで一か月は遊んでられちゃうよ」
「やっぱり遠くの物とかは値が張るね。ああいうのも買えるようになりたいけど、今は最低限の物すらないし」
「今の私たち、足りないものが多すぎるよ。防具に回復薬、あとシュウの矢もない!」
「優先度はサーシャの防具かな、俺は魔法があるから矢が無くても何とかなるし」
防具もつけず剣一本の生身で突撃するのは、見てる側からしても心臓に悪い。
ちなみに、俺のクロスボウの矢はまだあと10本はある。回収して使ってはいるが、時折破損するのでそのうち補充したい。ただ優先順位的には最後だろう。
防具の値段が気になるということで、次は防具屋を覗きに行った。
いくつか店があったが、冒険者を客層にしているところを覗いてみる。
レザーアーマーやチェーンメイル、ラメラアーマーなどが売られている。魔法が付与された胸甲や竜の鱗鎧といった特殊なものもある、素材を持ってくれば安く作ってもらえるサービスもあるようだ。
「レザーアーマーが16万グロス、チェーンメイルはその3倍はするね...」
「次の旅はレザーアーマーを装備してからにしようか。ここよりちょっと危険な場所になるし」
「明日から全力で稼がなきゃだね。必要なものを全部合わせて大体25万くらい、来月頃に出発できるいいね!」
オークだけじゃ25万をためるのは難しい。
ゴブリンよりは強いモンスターだし、怪我の可能性を考えてもあまり強引には動きたくない。
討伐依頼も無限ではない、付近が安全になったら依頼は出されない。それ以外の依頼もこなして稼ぐとして、大体一か月くらいはかかるだろう。
その後もしばらく街を歩き、気づけば教会や城の立つ中央部に来ていた。
「ここの教会、スクライラスのよりずっと大きいね」
「あれは教会っていうより小さな礼拝堂だったからね、ここはちゃんとした教会みたい」
二人ともあまり教会に興味はないので、軽く見て素通りする。
サーシャは城に騎士がいるかもしれないと、そっちの方に興味があるようだ。
「待ってシュウ、教会に騎士がいる!」
急に立ち止まったと思えば、教会の方に駆け出して行った。
慌ててついていくと、教会の中に本当に騎士がいた。
白銀のプレートアーマーに身を包み、長柄のメイスとルテルナ教の紋章が描かれたカイトシールド。前にモニカさんが教えてくれたはず。
「聖騎士、だったっけ。初めて見たよ」
「かっこいいなぁ...、王国の騎士と結構見た目が違うんだね」
「ルテルナ教の騎士で、聖都から派遣されてるんだって。装備とかは全部祝福されてるらしいよ」
「祝福された鎧の聖騎士...、めちゃくちゃかっこいい!握手とかしてもらえないかな!」
「そんな理由で教会に入ったら怒られるよ。ほら、早くいくよ!」
教会の聖騎士は頭が固いのが多い、モニカさんから教わったことの一つだ。
くだらない理由で教会に入るなとお説教されるかもしれない、駄々をこねるサーシャを引っ張って宿屋に戻る。時間はすでに夕暮れ、かなり歩いたので腹ペコだ。
夕飯は朝と変わらず酒場のメインホール、ホーンボアのグリルを二人で食べた。
クラヴィスア王国は塩や香辛料が比較的安い、なので料理も香辛料が使われているものが多い。ホーンボアの肉は脂身が少なく、スパイシーな味付けでかなりおいしかった。今まで干し肉でしか食べていなかったが、今度からは焼いて食べてもいいかもしれない。
おいしい夕飯を食べて満足し、風呂に入って部屋に戻る。
久しぶりの温かい食事にのんびりとした一日、連続で依頼を続けていた疲れもだいぶ取れた。
「楽しかったぁ。たまには、こういう一日でもいいね」
「明日からまたモンスター狩りだよ。たくさん稼いで疲れたら、今日みたいに一日休もっか」
「いいね、今度は買い物できるくらいお金貯めて、服とか買おうよ!」
ゆったり喋りながら眠りにつく。
すごく充実した休日だった。




