19話 "冒険者登録"
朝、黒パンと干し肉を食べて宿屋を出る。
サーシャは布に包んだ剣を、俺は布で包んだクロスボウを背負う、懐には全財産の2万2千グロス。
冒険者登録に金が必要、サーシャが冒険者の人から聞いたという話だ。いくら必要かは覚えてないらしいが、金が要るというだけでかなり深刻な事態だった。
とりあえず行ってみないとわからない。ギルドまでの道を聞いておいたらしく、軽快な足取りでサーシャが先導してくれる。
行き交う旅人が、次第に剣や弓を帯びた冒険者たちに変わっていく。冒険者ギルドに近づいてきたことを感じる。
「着いた、ここが冒険者ギルドかな」
しばらく歩いてたどり着いたのは、酒場のような雰囲気の建物だった。
看板には『冒険者ギルド ジェログルード支部』と書かれている。
少しドキドキしながら、扉を開けて中に入る。
酒場のようなメインホールが広がり、たくさんの冒険者が雑談や酒を飲んだりしている。これだけ見ればただの酒場のようだ。
メインホールの横には受付がある、サーシャも少し緊張しているのか、俺の背後に回って押してくる。
そんな挙動不審な俺らに、受付の女性が声をかけてきた。
「どうかしましたか?」
「えっと、冒険者の登録をしたいんですけど」
「登録ですね、二名様でよろしいですか?」
「はい、二人でお願いします」
「わかりました、ではそちらにおかけになってお待ちください」
言われた通り椅子に座り、少し周囲を観察する。
いろんな冒険者がいる、屈強な男や若い女性、猫耳の生えた亜人や全身甲冑バケツヘルメットのやばいやつ。何人かが新人の俺らを興味深そうに見ているが、大半は酒とおしゃべりに夢中だ。
しばらくして受付の女性が戻ってきた。
「お待たせしました、手続きの方を始めさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「あっえっと、お金ってかかるんですよね?どのくらいかかります...?」
「一人当たり1万グロスとなっておりますが、お手持ちの方大丈夫でしょうか?」
手持ちは2万2千、ギリギリセーフだ。
問題は払ったら2千、ほとんど無一文になることだ。
「はい、大丈夫です」
「では、手続きの方始めさせていただきますね。こちらの書類の方をご記入お願いします」
そう言って書類が渡される。
内容は注意事項と種族や年齢などの個人情報、そんなに項目は多くないので、すぐに記入が終わった。
受付嬢は書類を受け取ると軽く眺め、そのまま机にしまった。
「ありがとうございます。では、簡単な質問の方させていただきます。冒険者になるには武器の方が必要ですが、お二人はお持ちですか?」
「はい!剣があります!」
「俺は魔法が少し、あとクロスボウがあります」
サーシャが自信満々に剣を出そうとしたので全力で止めた。
苦笑しながら受付嬢が質問を続ける、戦闘経験の有無や出身についてなど。いくつか質問をした後、今度は冒険者についての説明が始まった。
「基本的には、依頼の方を達成していただくことでお金を稼げます。そちらのボードに依頼の方が乗っているので、あとでご確認ください。依頼にはランクがあり、冒険者は自分のランクに対応したものを受けることができます。ランクは上から、S、A、B、C、Dに分かれていて、最初はDからスタートします」
前世でもゲームとかで聞くような制度、すぐ理解できた。
ランクはある程度依頼をこなした後、一つ上のランクの依頼を達成することで上がるらしい。
やってはいけないことはいくつかあるが、特に守らなくてはならないのが三つ。
一つ目は戦争への加担行為や軍との敵対、二つ目は殺人や強奪の犯罪行為、三つ目が危険なものには手を出さない、この三つはやらかしたらギルドじゃ手に負えないことになるらしい。
そしてパーティー制度、多くの冒険者は数人のパーティーを組んで依頼を行うらしい。ソロの冒険者はとんでもない狂人が強者、それか訳ありとのこと。
「お二人はパーティーを組まれますよね?」
「はい、手続きが必要ですか?」
「こちらの書類に記入をお願いします。パーティーの名前が必要ですが、何になさいますか?」
サーシャと顔を見合わせる。
小声で話し合うが、何も案は出ない。
しばらく話し合って、ようやく名前が決まった。
「ガウェインでお願いします」
「ガウェイン、ですね」
アーサー王伝説の円卓の騎士から名前をとった。
サーシャは由来を知らないが、「語感がいい!」と同意してくれた。
受付嬢が書類にいろいろ書いた後、石板のようなものと針を机に置いた。
「では最後に、こちらに血を一滴垂らしてください」
言われたとおりに血を垂らす、いろんな紋様が浮かび上がり、石板に刻まれた魔法陣が回転する。
魔法陣から薄いカードが生まれた。
「こちらのカードは、冒険者としての身分を表すものになります、なくさないように気を付けてくださいね。これで登録は以上です、お疲れさまでした」
「ありがとうございました!」
元気よくサーシャが立ち上がり、そのまま横にある依頼ボードを見に行った。
受付の人にお礼を言って、俺も依頼ボードを見に行く。様々な依頼が書かれた木札が掛けられている、上の方ほどランクが高いようだ。
とりあえず今は何か受けよう。とにかく稼がないと、手持ちが銀貨2枚なのは非常にまずい。
「これ、最初にちょうどいいんじゃない?」
そう言って指さした木札に書かれているのは、
『ゴブリン討伐 最低5体 5000グロス』
ゴブリン5体で5000、6体目からは300ずつ報酬が出るらしい。
単価は安いが、確かに最初に受けるものとしてはちょうどいい。
木札を取って受付に渡す。
「ゴブリン討伐ですね、場所は西門を出た先にある森です。迷わないように気を付けてください」
「倒した印って何を出せばいいですか?」
「ゴブリンは心臓に核と呼ばれる魔石があるので、そちらを抉り出してください」
魔石が心臓にある...
猪の亜種的なホーンボアは魔石がなかったから、魔石の有無がモンスターと動物の差なんだろうか。
ともかく依頼を受けれたので、あとは達成すればいい。
俺とサーシャは西の森に向けて歩き出した。




