17話 "卒業"
本や珍しい人形が飾られていた俺とボルゴの部屋は、すっかり片付いていた。
昨日の卒業パーティーが終わった後、四人で一緒に同じ部屋で寝た。つい夜遅くまで話し込んでしまい、少し眠気が残っている。
荷物を背負い自室を後にして、サーシャとルイザの部屋に行く。
ちょうど準備が終わったらしく、向こうも廊下に出ていた。
四人並んで玄関に歩く。
早朝でほとんどの孤児は寝ている、ただ何人かは見送りに起きていた。
玄関に出ると、シスターと先生たち、ミハウおじいさんがいた。
院長先生が四人の顔を、優しく見渡す。
「昨日も言ったけど、改めてもう一度。サーシャ、シュウ、ボルゴ、ルイザ、卒業おめでとう、本当に大きくなったわね。
旅の中で、苦難や選択があるでしょう、自分の判断を信じなさい。
そして、気が向いた時に戻ってきなさい」
ルイザがボロボロ泣き出してしまった、泣いたルイザをシスター達が囲んで慰めている。ボルゴはマチルダ先生と何かを喋っている。確か、先生の知り合いの商人についていくんだったっけ。
ミハウおじいさんが俺ら二人に近づいてきた。
「サーシャ、準備はできたかい?」
「うん。おじいちゃん、剣を教えてくれてありがとう。私、いろんな人を助けてくる!」
カラカラと笑った後、ミハウおじいさんは俺の方を向いた。
「シュウ、この子をしっかり守るんだぞ。世界は一人で生きるには辛い、互いを信じなさい」
「わかりました。...次は、自分が物語を伝えにきます」
大人たちとのお別れを済ませた後、ボルゴとルイザの方を向く。
「じゃあね、二人とも」
「シュウ、サーシャ、元気でな」
「また四人で会おうね」
「必ず、またここで会おうね!」
孤児院を離れ、城門まで歩く。
モニカさんは俺とサーシャを門まで見送りについてきた。
名残惜しくて歩みが遅くなる、それでも城門までは近く、あっという間についてしまった。
「じゃあここまでですねぇ、お別れです」
「モニカさん、いろいろ教えてくれて、本当にありがとうございました」
「いえいえ、役立ったなら何よりですよ。これ、持って行ってください」
そう言ってモニカさんは、布に包まれた何かを差し出した。
「これ、なんですか?」
「お守りですよ、追い詰められたときとかに魔力を込めて投げてください」
触ると、中に何か入っているのがわかる。
「これ、何入ってるんですか...?」
「...秘密ですよ」
モニカさんが目をそらして苦笑いしている。
不安になりながら受け取り、懐にしまう。
「これからジェログルードまで歩くんでしたっけ?」
「はい、まず冒険者登録のためにそこまでいかなきゃいけないので」
「結構歩きますねぇ、サーシャちゃんは大丈夫だろうけど、シュウくんに歩ききれるかなぁ」
「大丈夫!シュウが疲れたら私が背負うから!」
二人して笑っている、一応ちゃんと体力はつけてきたので大丈夫...なはずである。
息を吐きだして、モニカさんを見る。
「それじゃあ、行ってきます」
「戻ってくるときはお土産持ってくるね、行ってきます!」
「いってらっしゃい、待ってるからねぇ」
城門に背を向けて歩き出す。
16年間の間、ずっと暮らしてきた街を離れ、長い旅が始まった。
城壁外の市街地を抜け、広がる畑の間を歩き続ける。
ふと振り返ると、街が小さく遠くに見えた。
時々商隊がすれ違う、サーシャはすべてが珍しく見えるのか、ずっとキョロキョロしている。
「これ、どれくらい歩くの?」
「大体二日くらいかな、食料はちゃんとあるし、道なりに進めば迷わないよ」
「遠いね...、早く冒険者になりたいなぁ」
雑談をしながら街道を進んでいく。
目指すはジェログルード、最初の目的地だ。




