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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第1章 旅立ちまで
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16話 "準備"

卒業まで残り半年を切った。

道具などの準備をするため、サーシャとモニカさんと一緒に買い物に来ていた。

ただもうあらかた主要な道具は買い終わったので、今は防具屋を覗きに来ている。


「レザーアーマーって高いんだね...」

「最初の冒険者は防具の金がないってのは聞きますよぉ、プレートアーマーなんて上金貨数十枚じゃ足りないくらいするらしいですし」

「防具買うのは諦めますか、手持ちじゃ買えそうにないですし」

「あっちょっと待ってください、これとかは買っといたほうがいいです」


そう言ってモニカさんが指さしたのは、レザーブーツと手甲だった。


「長い距離を歩くだろうから靴はちゃんとしたのを買わないといけませんし、手甲も殴り合いとかで大切になりますよぉ」

「確かに...、でも靴って結構消耗しますよね」

「そうですよぉ。だから、街に入ったら必ず靴を一つ買っておいた方がいいです。サーシャちゃんとか殴る蹴るするだろうし、特に消耗しますね」


サーシャが恥ずかしそうにしている。

この前、いつもの森にサーシャを連れて練習に行った。その時サーシャは突進してきたホーンボアの顎を蹴り上げ、そのまま頭を刎ねた。ミハウおじいさんの剣術指南で教わったらしく、ほかにも短槍や斧なども習ったらしい。


そういえばロングソードも手入れが必要だ、砥石はすでに持っていたが他の道具も買わなきゃいけない。でももう金がない、1万グロスしかないのである。

これは冒険者になった後に考えよう、後回しにするしかない。


孤児院に帰って買った荷物を整理する。

バックパックと魔石ランタン、テントや毛布と衣服、あとは着火具やナイフなどの道具。旅道具が集まったことで、より卒業を意識してしまう。


荷物を自室に置いた後、図書室に行こうと廊下を歩いていると、ルイザがいた。

ここ最近は忙しそうにしていたので、全然話していなかった。


「あっシュウ、久しぶりだね」

「久しぶり、最近忙しそうだったね」

「うん、王領の孤児院で働くのにいろいろ手続きが必要だったから、それが忙しくて...。シュウたちはどう?」

「さっき旅に使う道具を買ってきたんだ、あんなに貯めたお金がすっからかんになっちゃった」


ルイザは俺らの準備の様子を聞いて面白そうに笑っている。

しばらく廊下で話していると、ボルゴも来た。


「ボルゴだ、どこ行ってたの?」

「市場を見に行ってたんだ。どんなものが売れるか見てたけど、やっぱり珍しいものとかはすぐ売れるんだね」

「卒業したらボルゴも王領に行くんだっけ?」

「うん、商人について行って、王領でしばらく勉強するんだ。ある程度金が貯まったら、行商人になっていろんなところを巡ろうと思う」


廊下の奥から軽快な足音が近づく。


「あっ、みんないるじゃん!」

「サーシャちゃんだ、これでみんな揃ったね」

「四人揃うの、なんだか久しぶりだね」


ルイザ、ボルゴ、サーシャ、最近は各々の進路に向けて忙しく、前のように四人で話すことも減ってきた。

久しぶりに四人がそろったことで話が弾み、しばらく笑いが絶えなかった。



次の日、俺は気分が沈んでいた。

数年前と比べ、使える魔術は大幅に増えた。無属性をクラス2まで覚え、火属性も目標だったクラス2攻撃魔術をある程度操れるようになった。

しかし、火属性魔術は森の中で使えば火災を引き起こしかねない。そうなると使える攻撃魔術が無属性だけになり、手札が少なくなってしまう。

攻撃手段は多いほうが良い、そのため俺は水属性の派生魔術を練習していた。


「アイスアロー、全然うまくいきませんねぇ」

「なにがダメなんですかね...」

「見た感じ、二次転換がうまくいってないみたいですねぇ。氷の生成から練習してみましょう」


しかし何度やっても失敗する、凍りかけの水塊がせいぜいのところである。

全然うまくいかずしょぼくれた俺を見て、モニカさんがもう一度手本を見せてくれた。


「よーく見ててくださいねぇ。アイスアロー」


鋭い氷の長矢が飛翔し、的に突き刺さり砕け散った。

今見た魔力の流れと転換をよく思い出しながら魔力を練る。

中途半端に凍った水が射出、そのまま地面に落ちた。

不貞腐れた俺は地面に座り込んだ。


「練習あるのみ、ですかねぇ。何度もやっていけばうまくいきますよ、それに今日は初日ですし」

「でも、もう半年もないですよ」

「冒険者やってるうちに覚えれますよ、私より上達するでしょうねぇ」


モニカさんに魔術を教わるのも、もうすぐ終わってしまう。

それならもっと教わりたい、限られた時間を有効に使いたい。

日が沈みはじめ、帰りの時間が来た。立ち上がってもう一度魔力を練る。


「アイスアロー」


小さい氷の矢が生まれた。

的に当たって砕けてしまったが、確かに撃ち出せた。

後ろから見てたモニカさんがケラケラ笑う。


「ほら、できるじゃないですかぁ」



そうして時間は流れ、16歳を迎えた。

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