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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第1章 旅立ちまで
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15話 "クロスボウ"

前も来た郊外の森、今日は魔術ではなく別の練習に来ていた。

ホーンボアの長牙を弓に使ったクロスボウ、魔術以外の攻撃手段を手に入れた。クロスボウはあまり訓練せずとも使えるとはいえ、しっかり狙いをつけて命中させるには練習がいる。


「ほらあそこ、木に鳥がいますよぉ」


今回もモニカさんが付き添いで来てくれた。

木の枝を集めて焚火をつけ、俺が仕留めた鳥を焼いて食べている。

そんな姿を尻目に、弦を引いて矢をつがえ、鳥に狙いを定める。

そこまで大きい鳥ではないので、体に当てると可食部が減ってしまう。可食部が減ると横のモニカさんからブーイングが飛んでくるので、できる限り頭を狙う。


バシュ、と矢が飛んでいく。

上手く頭に当たり、鳥は地面に落ちた。刺さった矢を抜きとってモニカさんに鳥を差し出す、矢は壊れてなさそうなので矢筒に戻した。


「クロスボウって対魔術師でよく使われるんですよねぇ、大体の魔術の射程が50mいかないので、射程外から倒せるんです」

「対魔術師なんて起きるんですか?」

「戦争とかではそりゃ起きますよぉ、それに山賊に魔術師がいてもおかしくないですし」


戦争と聞いて思い出した、軍で使われる戦争魔術というのがあるらしい。特殊なものだと弓よりも遠くを攻撃できるとか。


「クロスボウってモンスター相手にも使えるんですか?」

「微妙!でも、威力ならあげることができますよぉ。さぁ考えて、今日の課題です!」


鳥を素早く解体しながらモニカさんが言い放った。

威力を上げるなら弓の材質をより強力なものにするしかない、でもそれをするには金がないし、今すぐできるものではない。

ならできるのは矢の威力を上げることだろうか、それなら...


「エンチャント」


付与術を用いて矢に魔力を纏わせる。

淡い青色の光を放つ短矢をクロスボウにつがえ、適当な木に打つ。

速度と精度はそのまま、しかしより深く広い傷を残して突き刺さった。


「正解引くまで早いですねぇ。弓使いの冒険者とかは矢への付与術が重要になります、クロスボウもそうなんですけど、付与しにくいんですよねぇ」

「付与しにくい?」

「うん、手で触れないと付与ができないじゃないですか。弓は手で引っ張るけど、クロスボウはつがえる関係上やりにくいんです」


弓は速射と威力の長所があるが、クロスボウの長所は簡単さと矢の安さだ。ある程度稼げるようになったら短弓に変えるのもいいだろうが、その場合は訓練が大変になりそうだ。


「あっ、あとホーンボア狩ってきてください、動物を捌く練習をしなきゃいけないですから」

「捌くんですか?」

「旅の食糧を現地調達ってときもありますからね。できるだけきれいにとってきてくださいねぇ」


むしゃむしゃと焼いた鳥を食っている、この人さっきから食べてしかいない。

とりあえず慎重に森を歩き、ホーンボアを探す。地面を注意深く観察、糞が落ちていた、つまり近くにいるだろう。


離れた場所にいるホーンボアを見つけた。

距離的にマジックスピアも届かない、マジックミサイルなら命中するが大きな傷を与えてしまう。なので今手に持っているものを使おう。

矢筒から抜いた短矢にエンチャントで魔力を込め、慎重に矢をつがえる。

距離は十分、避けられても当たるような場所に狙いを定め、トリガーを引く。


青い軌跡を残して矢が突き刺さり、魔力が炸裂して一撃で仕留めた。

他の獣に気を付けながら近づき、持ち上げ...ようとして気づいた。

重くて持ち上がらない。大体90kgはあるのだから持ちあがるはずがない、サーシャならいけるだろうが俺はそこまで筋力がない。


解決法はすぐ見つかった。

さっきと同じようにエンチャントを行う、対象は自分自身の体。

強化された身体能力でホーンボアを担ぎ上げ、モニカさんのところへ持っていく。ちゃんと魔術を活用して課題をクリアした俺を見てご満悦だ。


「じゃあ解体していきましょ~。ほら、短剣をもって!」


モニカさんによる解体の授業が始まった。

どこが食べれてどこが売れるか、どういう手順でやれば短時間で解体できるかをわかりやすく教えてくれる。毛皮の薄い点や角の活用法など、役立つことを多く知ることができた。


いつも不思議だが、モニカさんはなぜそういうのに詳しいんだろう。

シスターとして孤児院にいるが、礼拝をしている様子はない。それに修道服もフードを脱いで動きやすいようにいじっている。

なにより、魔術に詳しい点が謎だ。この地域で広く信仰されるルテルナ教は魔術を使うことを嫌う、それなのにこのシスターは魔術の鍛錬を行うだけでなく、魔術の授業もしている。何者なんだろうか。


「モニカさんってシスターですよね、魔術の探求とかして怒られないんですか?」

「...もう怒られてるんですよねぇ」


街への帰り道、気になったので聞いてみた。

いつもの明るい声が少しだけ暗い。


「もともと私、王領で生まれたんですよ。で、親が司教だから私も教会に入ったんですけど、魔術が好きでこっそり勉強したり練習してたら、バレて追い出されたんですよねぇ」

「王領から追い出されたんですか?魔術を勉強しただけで?」

「いろいろな派があるんですよ、私の親はその中でも魔術嫌いなとこだったんですよね。だから16で王領からこっちまで一人旅、そのおかげで今好き勝手できますけどね!」


ぷんすかと怒りながら石を蹴っ飛ばす。

ここから王領までは200km以上はある、それを16歳、しかも一人で旅をした。本当にすごい人だと、改めて感じた。


「でも王領って面白いですよ、王都に行けばシュウくんはひっくり返るでしょうねぇ、スクライラスの百倍は大きくて人もいるんですよぉ。サーシャちゃんの大好きな騎士もたくさんいるし、いつか行ってみてくださいね」


いつもの明るい声でケラケラと笑っている。

ここでの生活もあと一年もせず終わってしまう、そう考えて少し寂しくなった。

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