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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第1章 旅立ちまで
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14話 "ロングソード"

「アントニくん見っけ!」

「みつかっちゃったぁ、シュウおにいちゃん探すのすごい!」


鍛錬や掃除バイトだけじゃなくほかの孤児の世話もしなくてはならない、俺は小さい子達と一緒にかくれんぼをしていた。元気の塊のような子達なので、たくさん遊んで疲れさせないと夜にシスターや先生たちが苦労することになる。


「じゃあみんな、もうそろそろご飯の時間だし食堂に行きなよー」


卒業まであと大体1年、武器調達の資金は全然足りていない。

現在手持ちは21万グロス、旅道具を買えば残りは9万で武器を買うには全然足りない。どうしたものかと悩んでいると、院長先生が準備の進捗を聞いてきた。

武器代のことを話すと、地下倉庫から好きに持って行っていいと言われた。

孤児院になる前、教会として使われてた際のメイスなどが残っているらしい。それを聞いた俺は、いつも通りモニカさんに手伝いをお願いして一緒に倉庫を漁っていた。


「武器ってあの一番奥にある棚ですよね?だいぶ物に埋もれてますよ」

「大仕事になっちゃいそうですね。一応サーシャも呼んでおいたので、剣の鍛錬が終わったら来ると思います」


モニカさんは倉庫整理も任されたらしく、片っ端から棚に整頓して並べている。手際よく片付けられ、武器が置かれている棚にはすぐたどり着いた。

古びたメイスが数本、刃が欠けた戦斧に折れた長槍、ほとんどが壊れて使い物にならなさそうだ。

欲しかったものが見つからず落胆していると、後ろで片づけをしていたモニカさんが声を上げた。


「ん?これなんですかね?」

「どうしたんですか?」

「なんか布に包まれたやけに重いのが...」


棚の上の方からそれは見つかった。

布でぐるぐる巻きにされた1mほどの何か、持ってみるとしっかりと重く、金属でできているのがわかる。布をほどいて取り出すと、中から出てきたのは一本のロングソードだった。


「まじで剣出てきましたねぇ...、他のやつよりマシな状態ですけど、詳しくないからわかりませんね」

「鍛冶屋とか武器屋に持って行ってみます?」

「いやぁ、その前に詳しそうな人いるんで、そっちに聞きましょう」


「ミハウさん、ちょっといいですか?」

「おやモニカ嬢、なにか?」

「これ、倉庫で見つけたんですけど、私たちじゃ状態とかわからないんで見てほしいんです」


モニカさんが剣を布から取り出す、装飾もなく十字型で金属の刀身がそのままにされている。

ミハウおじいさんが剣を調べていると、いつの間にか木剣を振っていたサーシャも寄ってきて、剣をじっと見つめている。


「だいぶ放置されていたみたいじゃが、状態は良い。このままでも少しくらいなら斬れるだろう」

「誰の剣なんですかね?聖騎士の剣とも違いますし、王国騎士とも違いそうです」

「昔の戦争のときに誰かが置き忘れたんだろう、これなら打ち直して使えるぞ」

「ほんとですか?なら、これをサーシャちゃんの剣にしちゃいましょう」


ぼーっと見ていたサーシャが嬉しそうに顔を上げる。


「この剣、私が使っていいの?!」

「院長先生は好きに持って行っていいって言ってたんで、大丈夫ですよぉ」


急に自分の剣が手に入ったサーシャは飛び跳ねてはしゃいでいる。

鍛冶屋での打ち直しは高いらしく、とりあえず全部の金を持っていくことにした。

城壁外を三人で歩く。大通りの脇に入ると、屈強な男の集まる路地が現れた。

場所にそぐわないような若い女性と子供が気になるのか、ジロジロと見られている。


「嬢ちゃんたち、職人街に何か用かい?」

「鍛冶屋ってどこにあります?」

「...鍛冶屋なら俺だ、ついてこい」


大柄な男に連れられ、石造りの鍜治場にたどり着いた。

サーシャは嬉しそうに抱えていた剣を布から取り出し、鍛冶屋に差し出した。


「この剣、打ち直して使えるようにしてください!」

「剣?誰かのおつかいか?それとも嬢ちゃんが使うのか?」


鍛冶屋が小馬鹿にしたように言う。


「そうだよ!私、冒険者になるから剣が必要なんだ」

「ずいぶん立派な夢を見る嬢ちゃんだな。なら、そっちで少し振ってみろ」


ニヤニヤとした鍛冶屋の馬鹿にした態度、モニカさんはニコニコしながら青筋を立てて魔力を練っている。


そんな二人に目もくれず、サーシャは剣をもって空き地へ立つ。

落ちていた薪を蹴り上げ、両手で剣を構える。

くるくると昇った薪が重力に従って落ち始めた。目の前を通ったと同時に剣が振るわれ、薪が二つに両断された。

自慢げにサーシャは振り返る、鍛冶屋は目を見開いて驚いてた。


「ほら、どう?」

「...馬鹿にしてすまなかったな。剣を出してくれ」


鍛冶屋は剣を受け取ると、燃え盛る炉に突っ込んで打ち直しを始めた。

カンッカンッと槌が振るわれる、さすが職人といった手際の良さだった。

焼き入れをした刃を研ぎ、柄に革を巻くと、さっきまでと見違えるように立派な長剣ができた。


「鞘はなかったのか?」

「ないんですよねぇ、作るならいくらします?」

「4万、打ち直しの代金含めて6万だ」

「なら鞘もお願いします」


厳重にしまっておいた小袋から金貨を6枚取り出す、新しく買うよりだいぶ安く済んだ。


「来週の月曜までに作っておく、また来てくれ」

「ありがとう、鍛冶屋のおじさん!」


サーシャは上機嫌、モニカさんも意外と安く済んだと嬉しそうにしていた、しかし急に何かを思い出したかのように、別の工房へと入っていく。手をつかまれた俺はそのまま引っ張られていった。


「すいませーん、クロスボウって作ってもらえます?」

「だいぶ高くなるが、大丈夫かい?」

「これを弓に使ってもらえば安くなりません?」


そう言って何かを取り出す、前に俺が狩ったホーンボアの長牙だ。


「ならそうだな...ちょうど余った部品もあるし、10万グロスで作ろう」

「ならこれで、また完成したら取りに来ますねぇ」


代金を払おうとした手を止められ、モニカさんが上金貨を取り出して払った。

職人街を出た帰り道、モニカさんに聞いてみる。


「ああ、あのお金です?ほら、魔術の練習でたくさんホーンボア狩ったじゃないですか。あの牙とか角って全部売っぱらって貯めてたんですよねぇ。なので、あれはシュウくんのお金ですよぉ」


確かに倒したやつの角と牙を片っ端からもいでいた。納得しながら歩くと、帰り道に市場があった。

ホーンボアの角と牙が1セット6000グロスで売られてる、買取価格は4000くらいのはず、おそらく全部売っても足りないだろう。

本当に優しい人だ。

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