13話 "初めてのモンスター"
森、森、森。
転生して大体14年、今までで一番ビビっていた。
「冒険者目指すっていうなら、一回モンスターと戦う経験が必要です!」
ある日急にモニカさんが言い出した言葉だ。
その言葉に院長先生は同意、魔術練習中の俺はスクライラス市郊外の小さな森に来ていた。小さな森ではあるが、王国の国境沿いに広がる広大な大森林、ブルトヴァルトの端に近い場所だ。そのためモンスターも僅かにおり、付近には伐採小屋がいくつかある程度で人気はあまりない。
「ここ、本当に大丈夫なんですか?」
「出てくるとしてもゴブリンとかホーンボアとかです、危険だったら連れてきませんよぉ。あっいつでも魔術を打ち出せるようにねぇ、危険じゃないけど油断したら死んじゃうから」
「危険じゃないですか...、マジックスピアで大丈夫ですか?」
「うん。ファイアボルトとか使っちゃだめだからね、火事が起きたらとんでもないし」
しばらく森を歩く、モンスターがいる雰囲気はなく、ただの散歩に思えるほど静かだった。
しかし急にモニカさんが立ち止まり、少し離れた地面を指さした。
「あそこの地面、分かります?」
「なんか少し掘り返されてる...?猪でもいるんじゃ」
「そうです、ホーンボアは木みたいな外皮をして鋭い角が生えた猪で、あんな感じで掘り返して虫を食うんです」
「じゃあ近くにいるんですか?」
「うーん...、魔力練って、すぐに」
珍しい真剣な声色、疑問より早く魔力を練り準備をする。
4,50m離れた茂みから何かが現れる、俺の知ってる猪より一回りでかく、明らかに殺意を感じる一本角がこちらに向けられていた。
「まだ撃たないでね、届かないから。15mまで引き付けて」
ホーンボアが駆けだす。
僅か数秒で距離が縮まり、後ろに逃げだしそうになってしまう。
目測30m、どんどん加速する、20を切った、もうすぐ。
「マジックスピア!」
悲鳴のように唱える。
圧縮された魔力が一点から打ち出される、しかし狙いがずれ、ホーンボアの左目を貫通した。一撃で仕留めきれなかった獣はなおも加速し迫る。
「プロテクト、バインド」
眼前の魔力が障壁を形成し、魔力で練られた縄がホーンボアを縛り付けた。
モニカさんは素早く的確に防御と拘束を行うと、地面にへたり込んだ俺にとどめを促した。
今度はずれず、放った魔術は頭蓋骨を打ち砕いて脳を破壊した。
「うん。まあ上出来ですね」
「ねっ...狙い、ずれちゃいました」
「撃てただけで偉いですよぉ、対応できなかったら私がちゃんと守ってますし」
死んだホーンボアに近づき角をナイフで切り取るモニカさん。
プロテクトとバインド、どちらもクラス2の無属性魔術だ。俺もすでに覚えているが、とっさに連続で打ち出せはしない。ニコニコしながら死体を調べているモニカさんが、すごくかっこよく見えていた。
「じゃあもう一回いきましょー、近くにもう一体いると思うんで、次はバインドを使って拘束した後にしましょう!」
「もう一回ですね、わかりました...」
「そんな落ち込んじゃってぇ。まあホーンボアなのが悪かったですね、ゴブリンの方がどんくさいし楽なんだけどなぁ」
「でもゴブリンって群れでいるんじゃないんですか?群れで動くなら大変なんじゃ」
「まあマジックスピアだけならきついですねぇ、マジックミサイルを使えたら楽なんですけど、まだ覚えきれてないですし」
クラス2の無属性魔術の代表的な魔法『マジックミサイル』、同時に多目標を攻撃できる追尾弾で非常に便利な魔術だ。しかし俺はまだ覚えれていない、攻撃方法が速射慣れしていないマジックスピアと火災誘発の危険があるファイアボルトしか使えないのである。
「あっほら、向こうにまたホーンボアですよ。今度はバインドを使ってから行きましょう」
奥にまたホーンボア、しかしさっきよりでかいし気性が荒そうである。こっちに気づくやいなやすぐに突進してきた、迫力が凄まじく怖気づくが、同じ轍は踏まない。
「バインド!」
魔力で練られた縄がホーンボアを抑え込み、縛り付ける。しかしモニカさんのより細い縄では気性の荒い獣を止めきれず、今にも振りほどかれそうだ。
「早く止めを!」
「マジックスピア!」
しっかりと頭を捉え貫く、藻掻いていた獣はすぐに息絶えた。
「完璧~!外皮も堅そうだから貫けないかと思ったけど、しっかりと中まで届くじゃないですかぁ!」
「かんぺき...、本当ですか?」
「うん、しっかり一人で倒せてますよ!じゃあそうですね、あと2匹、やっちゃいましょう!」
たった今倒した獣から顔を上げて森の奥を見る。
小さいのが1匹、中くらいが1匹こちらに近づいていた、振り返るとモニカさんはニコニコしながら離れていく。
すぐに大地を蹴って走る獣の音が聞こえてきた。
その後も何度かホーンボアを倒し、疲れ果てた俺はモニカさんにおんぶされて孤児院へ帰った。




