12話 "金は足りない"
クラス1の無属性魔術はいくつかある。
周囲を照らすライト、物質に魔力を付与するエンチャント、魔力を圧縮し一点から射出するマジックスピア、そして魔力で身体能力を強化する身体強化などがある。
この数か月でエンチャントとマジックスピアは覚えることができた、マジックスピアの貫通力が思ったより高く、的に使っていた木を貫通してかなり驚いた。ただライトと比べてやはり疲れる、モニカさん曰くここら辺は完全な慣れと練習らしい。
サーシャは暇さえあればミハウおじいさんの指南の下、木剣を振るっている。
魔法もある程度使えた方がいいというアドバイスを受けて、最近は身体強化とエンチャントの練習をしている、もともと身体能力が高いのもあって強化時の動きが凄まじい。素手で城壁を半分まで登り切れるほどだ。
小遣い稼ぎもかなり資金がたまってきた。二人で貯めた分をまとめて銀貨50枚ほど、5万グロスくらいはある。最初は遠いことに思えていたが、二人分を合わせれば意外とすぐだった。一人分の旅道具が6万なので、あと数か月これを続ければ二人分は大体稼げそうだ。
しかしまだ足りない、武器の分がないのである。
武器屋を覗きに行ったところ、ロングソードは安くても上金貨1枚はする。上金貨が一枚10万グロスでここ数か月で稼げたのが5万グロス、あと約二年で十数万稼いだとしてもだいぶギリギリだ。しかも防具も必要になる、俺は最悪いらないとしてもサーシャはレザーアーマーくらいは必要だろうし、砥石やポーションやその他もろもろ...
この悩みは後回しにした。
「シュウくんでも使えそうな武器?うーん、石でも投げます?」
俺は今、モニカさんに武器について相談していた。
魔術だけじゃいざという時に危ないと思い、俺でも簡単に扱えそうな武器を探している。
「それ武器じゃないですよ...魔術以外の方法があるといいなって思って、簡単に扱えそうなのを探しているんです」
「大体どの武器も難しいですからねぇ、曲刀とか似合いそうですけど難しいですし。クロスボウとかどうです?」
「クロスボウ?」
「あれなら簡単に扱えますし、弓よりは安いですよ。ただ、腕の力がかなり強くないと戦いのときに弦が引ききれないんで、力をつけなきゃですね」
「値段ってどれくらいするんですか?」
「前に露店で上金貨3枚で売られてるの見ましたねぇ、相場は分からないですけどまあ値段はしますよ」
高い、武器って本当に高い。
この問題も後回しにした。
いつもは公衆浴場の清掃バイトが終われば日課の鍛錬だったが、今日は珍しく雨が降っていたので図書室での勉強をしている。モンスター図鑑を読んで勉強をしていたが、読み進めるうちに面白くなってしまい、ページをすっ飛ばし特に危険なモンスターのページを読んでいた。
読み進めていると、とあるページで目が留まった、書かれている内容はドラゴンについてだ。
小山のように大きく、強固な鱗と天災のような破壊力、そして知恵と威厳を持つ凶暴な存在。多くの物語に現れ、傲慢への罰や邪悪な災害のように描かれている。ワイバーンやシーサーペントが竜と呼ばれるのに対し、ドラゴンたちは龍と呼ばれる。
龍は冒険者が太刀打ちできる存在ではなく、一つの国家が軍団をもって討伐するような、まさしく天災らしい。数百年前、はるか南から襲来した龍の大群は、いくつもの国家が連合軍を組んでなお撃退できなかったらしい。
読んでいて震えてしまうほど恐ろしいが、ドラゴンは憧れの一つでもある、一度は目にしたい。
憧れで思い出したことがあるので図鑑をしまい本を探す。
棚から引っ張り出した本の題名は『亜人について』だ。この大陸には普通の人間と違う特徴を持つ人々がいる、エルフやドワーフも亜人に分類される。
美少女エルフや猫耳少女は絶対に一度は目にしたい。が、エルフは深い森の中にしかいないらしいのであきらめるしかない。亜人をこの町で一度も見たことがなかったので珍しいのかと思ったが、大きな都市に行くとそこそこいるらしい。そしてイメージ通り差別対象になっていたりする、ただそこまで強い差別ではないようだ。
「シュウ!一緒に運動しよ!」
ものすごい勢いでサーシャが入ってきた、雨の日でも元気である。
「雨降ってるし、中でやるのは迷惑になるよ」
「腕立て伏せならできるよ、やろうよ!」
椅子から引き釣り下ろされ、しぶしぶ図書室で筋トレをする。
ここに来る前から何かしらを運動していたのだろう、すでにサーシャは少し汗ばんでいる。
サーシャの勢いに押されて2時間筋トレをした俺は、力尽きて床にへばっていた。
体力がまだまだ足りないのであった。




