11話 "準備はじめ"
「えっ、冒険者になるんですか?!」
浴室を掃除していたモニカさんが驚いてひっくり返った。すぐに立ち上がったが、あわあわしすぎてまたひっくり返りそうだ。
「院長さんは許可したんですか?危険ですよ冒険者って!」
「いま許可をもらってきたんだ、モニカおねえさんが旅に詳しいから教えてもらいなさいっていわれ来たんだよ」
「詳しい...まあここの大人たちの中じゃ詳しい方に入りますねぇ」
「じゃあモニカおねえさん、旅の仕方とかいろいろ教えて!」
「おっおぉん...わかった、じゃあ図書室で待っててね」
そうして旅に関する授業がモニカさんから行われることになった。
サーシャと二人で図書室に座って待つ。しばらくして掃除が終わったモニカさんが部屋に入ってくるが、何やらいろいろ持ってきた。
「モニカお姉さん、そのたくさん持ってきたのは...?」
「私が前に使ってた道具です、じゃあとりあえず軽く授業をしていきましょ~」
最初の授業は軽く道具について教わった。
魔力を注ぐだけで光る魔石ランタン、双眼鏡や着火具、テントなどの旅をするうえで必須なものについてを習った。
重要な道具について一通り教わった後、ふと気になったことを聞いてみる。
「これって値段はどのくらいするんですか?」
「うーん、望遠鏡と着火具はどっちも2000グロスあれば変えるんじゃないかなぁ。魔石ランタンは物によるけど、旅で使うなら1万は出した方がいいと思うよ。耐久性とか魔石の質が重要だからね。テントは安くても4万とか5万はすると思うかなぁ」
つまり金貨5,6枚は必要になるらしい。そんな大金は今は手元にない、となると稼ぐしかない。
12歳を過ぎれば町での日雇い労働に応募できるようになる、それでいくらか稼げるのである程度は大丈夫だろう。
「確かボルゴくんが公衆浴場の日雇いをやったりしてましたねぇ、あそこ人手が足りなくて来れるならいつでも!って言ってたんで、暇なときに行ってみるといいですよぉ。朝早いけど」
「どれくらい稼げるんですか?」
「一日で銀貨1枚って言ってたなぁ、武器とかも必要になるからそれ含めるとたくさん働かなきゃだねぇ」
「武器ってここになんかおいてないんですかー?地下倉庫にもしかしたら伝説の剣あるかも!」
「ただの孤児院にそんなのおいてないですよぉ、あるとしてもメイスとかじゃないかな」
旅道具は清掃バイトで稼ぎ、ついでで武器代もある程度で稼ぐ。
方針をなんとなく決めたところでもう一つの聞きたかったことを聞いてみる。
「モニカお姉さん、攻撃魔法を教えてくれませんか?」
「やっぱり?私あまり得意じゃないよ、簡単なのしか使えないもん」
「簡単なのでも大丈夫です、そこから先は自分で頑張ってみます」
「おっけー、なら水曜日を魔術練習日にしよっか。他はお仕事と体力づくりとかで、計画的にやってこう!」
そして、この日から俺とサーシャの冒険者への準備が始まった。
朝は早く起き、ボルゴとサーシャと一緒に公衆浴場にバイトへ向かう。浴場の管理人さんはいい人で、3人も来てくれたことに喜んでいた。ボルゴと俺は孤児院の浴室掃除で慣れていたため手早く、サーシャはあまり慣れていなさそうだったが持ち前の体力で解決していた。
掃除が終わって開店時間が来ると仕事は終了、その日の給料をもらって孤児院に戻る。そこからは筋トレや孤児院の手伝い、そして攻撃魔術の勉強をした。
魔術教本曰く、魔術は数段階のクラスに分かれる。
1から始まり数字が大きくなるごとに強くなる、現在使われる魔術はクラス6が最大とされていて、歴史に残る大魔術師はクラス10まで到達したといわれている。
今使えそうな攻撃魔術は無属性のマジックスピアくらいだろうか、ライトと同じクラス1なので難易度はあまり高くないはず。しかしこれだけじゃ足りないだろう、卒業までにクラス2の火属性を使えるようにはなりたい。
「サーシャはどうするの?戦う訓練とか」
「もちろん剣だよ!教えてくれそうな人も見つけたから、今から頼みに行ってくるの!」
剣術を教えてくれそうな人を見つけた?
俺が知ってる範囲では思い浮かばない、外を散歩したときに出会った人だろうか。そう思いながらついていくと、予想外の場所に着いた。
孤児院の横にあるそこそこ大きな古びた家、ミハウおじいさんの家だ。
ミハウおじいさんは家の横で昼寝をしていた、サーシャが近づくとこちらに気づき、ゆっくりと起き上がった。
「おやおや、サーシャにシュウ、どうしたんだい?」
「ミハウおじいちゃん、私に剣術教えて!」
サーシャはキラキラした目でミハウおじいさんを見ている、一方のおじいさんは驚きの表情だった。
「なぜ儂に剣術を?」
「おじいちゃん昔騎士だったんじゃないのかなって、座るときの動きとかが前に見た王領の騎士の人と同じだったからそう思ったんだ!」
自信満々にそう言い放つ。
おじいさんは目を丸くした後、ケラケラと笑い出した。
「はははっ...、騎士といってもああいう華々しいものではない、辺境にいただけだよ。今はもう足も悪くしてしまったから、教えれるものは少ししかない。それでもいいのかい?」
「うん!騎士さんに剣を教わるのが夢だったんだ。私、冒険者になっておじいちゃんの物語に出てきた騎士さんみたいに、いろんな人を助けたいんだ!」
「素敵な夢だね...、暇なときにここに来なさい。冒険者になるなら、他の準備も怠らないようにするんだぞ」
次の日からサーシャは暇さえあればミハウおじいさんのところへ行って剣を教えてもらうようになった。
俺も魔術だけじゃなく何か使えるようになった方がいいだろう、合間を見つけて探してみよう。




