VS強盗
行きつけのパン屋で大好物のカレーパンを購入した星野天使は近くの悲鳴を聞いて外へ出た。
これからカレーパンを味わおうと考えていたが、天使の使命として見逃すわけにはいかないと現場へ急行すると、コンビニに強盗が入っている。
警官隊も駆けつけているが人質を取られているので近づけないようだ。
「僕が助けますよ」
感情のない淡々とした口調で星野は警官隊に行ってカレーパンを預けてからスーパーへ入っていく。
無防備で入ってきた星野に強盗は困惑した。茶色の艶のある髪に半開きの瞳。
整った顔立ちだが無表情なのがどこか作り物めいた不気味さを与えている。
白いシャツに灰色の長ズボンというラフな格好で首にはヘッドフォンをかけている。
「小僧、状況が見えてねぇのか」
「僕は人質のみなさんを救出にきました」
「お前が? 笑わせるぜ」
店員のこめかみにつきつけた銃口を星野に向ける。おもちゃではなく本物だ。
「これが見えねぇのか。ケガしない間に失せやがれ」
「見えていますが、僕でよければ遠慮なく撃ってください」
「なんだと」
星野の言葉に強盗は目を見開いた。平坦な声からは微塵の恐怖の色はない。
愚弄しているのかと思い銃口を向け引き金に手をかける。
「お前の望みどおりにしてやるぜぇッ」
子供だからといって容赦をするような強盗ではなかった。
店内に響く銃撃音。女性の悲鳴。
撃たれた星野は胸から血を流しているが立っている。
「もっと撃ってください。あなたが満足するまで」
星野は手を広げた。逃げる姿勢はない。
「てめぇッ」
苛立った強盗は銃弾を撃つ。星野は額に命中し血が噴き出るが、星野は無表情だ。
やがてカチカチという虚しい音が響いた。
「ち、畜生。弾切れか……」
強盗の手が小刻みに震えてきた。胸ならば防弾チョッキがあるかもしれない。だが額を撃ち抜かれて生きている人間など聞いたことがない。つまり目の前の子供は化け物だ。
全身からドッと冷たい汗が流れる。震えが止まらず銃を落とす。隙を突いて人質が逃げてしまった。
武器を失い、人質にも逃げられ万事休すとなった強盗に突撃した警官隊が身柄を拘束する。
見ると星野の血は止まり、スーパーに入ってきたときと変わらない無傷となっていた。
身柄を拘束された男が星野を見る。彼の色素の薄い瞳には何の感情もない。
「てめぇ何者なんだ」
「僕の名前は星野天使。その名の通り天使です。それ以外の何者でもありません」
星野は冷静に告げて事件現場をあとにした。預けていたカレーパンを受け取って紙袋から中身を取り出して食べる。時間の経過でちょっとだけ冷めていた。
次はギャング団が登場します。




