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悪妻の定義とは?  作者: 尾木 愛結
本編
9/26

< 8 >

 翌日、姉たちは護衛騎士たちの拘束に抗った挙句、罵詈雑言を繰り返していたから騎士団の駐在所の地下にある牢屋へ入れられたらしい。


 私を起こしに来たユリアが笑いながら教えてくれた。


 クリスティアン様は夕食を取った後、再びシルヴォラ山での野営ポイントへ。

 本邸に戻ってきた時より血色がよく、気のせいかクリスティアン様の肌艶が良くなっているように見えた。



「奥様、本日のお召し物は如何なさいます?」


「そうね……今日も動きやすいものにするわ。明日はアーヴィッコ侯爵夫人が主催されるお茶会へ参加するのよね。紹介したい商品の準備があるから、軽くて動きやすい方が良いわね」


「またそう言って……奥様はいつも楽な服装をしておいでですよ?」



 ユリアに痛い所を突かれるも気にしてはいけない。



「良いじゃない。動きやすい方が料理とお菓子も作れるし、ユリアの好きなタコも捌けるのよ?」


「それは名案ですね! あのフリッターは本当に美味しかったです。またウイット漁港へ行きたいですね」


「ふふふ」



 ユリアと談笑をしながら着替えを済ませ。執務室へと向かう。

 午前中に執務を終わらせ、午後は明日の準備に取り掛かる予定だ。


 サルメラ大森林に茂っていた雑草のお茶、名前をグリーンティーと名付けて販売する。色が緑茶と同じなので、そのままパクってしまったけれど。

 誰かが商品名に食いついてきたら、私と同じ転生者に違いない。



「お姉様たちは解放されたのかしら?」


「いいえ、まだ地下牢にいるかと思います。そのまま地下牢に閉じ込めておけば、奥様への被害はなくなるかと」


「それは素敵ね!」


「はい」



 私とユリアがくすくすと笑みを零す。


 そんな和やかな空気の中で午前中の執務をこなしていく。

 執務机の上に乗っていた最後の書類に目を通すと、それは女性使用人からの嘆願書だった。



「ユリア、ちょっと聞きたい事があるのだけど」


「はい、奥様」


「貴方が着ている侍女服の質感はどう?」



 ユリアは公爵家へ来た当日から、この家の侍女が着ている制服を着用。侍女服は黒のシンプルなワンピースに、肩にフリルがついた白いエプロン。

 クラシカルな感じで個人的に好きな制服だ。



「質感……ですか?」


「そう。これから夏に入るじゃない? 冬場は厚手の下着で寒さは賄えるけど、夏場はどうなんだろう?」


「そういう事ですか。伯爵邸みたいに夏服があるんじゃないんですか?」



 ユリアの言葉に私は首を横に振る。

 伯爵邸は私が夏服と秋冬用の制服を考案しただけで、使用人は基本的に制服一種類のみだ。



「せめて薄手の生地になってくれたら助かりますね」


「そうよね。この嘆願書を見なかったら、わたくしも気づかなかったわ」



 ユリアにも嘆願書を見せる。



「伯爵領から生地を取り寄せましょう!」


「そうね」



 実家の伯爵領には絹糸みたいな糸を吐く魔獣がいるのだ。

 それはリスみたいな見た目で可愛く、人間にも懐く習性から愛玩動物として知られている。


 その魔獣が糸を吐く事だけは誰も知らなかった。

 伯爵領で飼育場所を作ってから繁殖が凄まじく、そのおかげで糸を大量に仕入れる事が可能となり、ドレス用の生地として量産し、私と祖母はその生地で作ったドレスを着て社交界に出ている。


 レース糸は魔蜘蛛の糸が一番。

 私は蜘蛛が苦手なので養殖場へ立ち入る勇気がない。



「これは祖母様に相談案件ね」



 祖母にも通話用の魔道具を渡しているので、私は早速、祖母へ連絡を試みた。



「祖母様、リューディアです。ごきげんよう」



 祖母に公爵邸で働く使用人たちの制服事情を説明する。

 あの生地は軽くて通気性も良く、伯爵邸で働く使用人たちも同じ素材で制服を作っていた。



「ええ、仕立てはこちらの方で……来週あたり顔を出します。それと祖母様、木綿という生地は如何です? 麻の生地より上質な作業着が作れるますので、サンプルをお父様に預けますね」



 伯爵領の次なる特産は木綿。

 他の領地で作っているかもしれないが、私はお目にかかった事がない。木綿でシャツを作れば、領民たちの作業も捗るだろう。


 ついでに自分用の服も作りたい。



「祖母様が了承して下さったわ。来週にでも生地を受け取りに行きましょう」



 これで女性使用人たちの嘆願書もクリアだ。



「制服のデザインは変わらない方が良い? 夏服だけ変えた方が良いかしら?」


「わたくしは公爵家の侍女服のデザインを気に入っておりますが、他の方はどうなんでしょう? リサーチしておきますか?」


「ええ、お願い」



 午前中の執務を終えて、ユリアと昼食を楽しむ。



「奥様」



 執事頭のアールノに呼ばれて足を止める。



「どうしたの?」



 私の専属護衛騎士であるエーヴァから、アールノに話がきたようだ。

 昨日、駐在所の地下牢へ押し込められた姉たちが、牢の中で喚き散らしているらしい。それだけなら誰も気にしたりしないが、一晩中ずっとキャンキャンと甲高い声で喚かれ、見張り役をしていた騎士たちの頭痛の原因になっているとの事。


 祖母に姉たちの事を話すのを忘れていた。

 あの二人をどう対処しようか迷っていると、ユリアが物理的に黙らせようと言い出す。



「さすがにソレは……」



 仮にも伯爵令嬢である。

 犯罪を犯したわけじゃないが、あのまま放置しても二人のために良くない。他の高位貴族が相手だったら、即座に不敬罪で極刑も有り得る行動なのだ。


 あれでは嫁ぎ先が決まっても、即離婚だろう。

 父よりも年上ーー祖父くらいの年代であれば、それもまた可愛いと言うかもしれないが。


 願うなら早く嫁いで欲しい。



「様子を見に行く?」


「わたくし、あのバカを見たら殺意を抱く自信があります!」



 胸を張って答えるユリアに苦笑を漏らす。

 アールノも何とかして欲しそうだったので、仕方なく様子を見に行く事にした。



 騎士団の駐在所へ初めて入ったけど、こちらも公爵邸と同じく魔道具と付与がされている。

 これらを造った職人に会ってみたいものだ。



「ここから出しなさい! わたくし達を誰だと思っているのよ。アンタたちの主人の公爵夫人の姉なの。こんな場所に閉じ込めるなんて侮辱するにも程があるわ!」


「そうよ! 早く出しなさい!」



 一晩中ずっと喚いていたと聞いていたが、まだまだ元気そうである。

 地下牢は石造りで出来ている為、意外と声が響くのだと知った。これでは頭痛になるのも分かる。



「お姉様たち、ごきげんよう」


「ちょっと! 早く出しなさいよ!」


「リューディア、これが姉にする態度なの! 妹なら配慮すべきだわ!」



 どうして自分たちが地下牢へ入れられたのか分かっていないのか。

 三歳の私を池に落とすような姉たちだ、自分が悪い事をしている自覚がないのだろう。



「お姉様は仮に……高位貴族の方へ嫁がれたとします。そこへ伯爵家や子爵家の令嬢が、お姉様の邸を譲って欲しい。または仮住まいで宿泊させて欲しいと言われたらーーーどう答えられますか?」


「そんなの決まっているわ! 下位貴族の分際で分不相応よ! 自分の立場を弁えるように躾て差し上げるわ!」


「そう……その逆をお姉様がしているのですよ」


「は?」



 きょとんとした顔は意外にも可愛らしい。



「わたくしは何度も申し上げました。お姉様は伯爵令嬢、わたくしは公爵夫人ですよと」


「それが何よ!」


「お姉様も言ったじゃない。下位貴族の分際で分不相応よって」


「どういう事?」



 姉に分かりやすく説明したつもりなのに、全く分かっていない。

 どうあっても自分中心でしか考えないのかと、私も頭が痛くなってきた。



「お姉様たちは自分より下位貴族の家に住みたくない。でも、高位貴族の家には間借りでも住みたいのよね?」


「それがどうだって言うのよ」


「それが分不相応だと申し上げているのです。自分たちは良くて、他人は駄目って……お姉様は学院に入学していない子供ですか?」


「わたくし達を馬鹿にしているでしょう?」


「実際に馬鹿ですわよね?」



 私は首を傾げて見せた。



「まずはーーー昔話でも始めましょうか?」



 私は姉たちの顔を見ながら告げる。



「昔話って何よ」



 姉の言葉を無視して、私は自分が六歳だった頃の話を始めた。


 王宮で開催された六歳以上の高位貴族の子女たちが招かれるお茶会。

 これは数が少なくなってきた高位貴族を増やす為に行われたもので、その場は友人関係を結んだり、婚約者を探している者は縁を繋ぐ場でもあった。


 当時まだ六歳という年齢で、あまり良く分からないまま参加したのである。

 一応、前世の記憶を持っていても、貴族として生活した事がないので分からない事だらけだ。


 この世界は六歳から学院に十年通うので、子供のお茶会も六歳以上という規定なのである。


 その時に四つ上のオリヴェル・ケラネン伯爵令息との初めての出会い。

 栗色の髪が日に当たってキラキラと輝いていた。優し気な琥珀色の瞳に見つめられて、幼心にときめきを感じたものである。

 理想の王子様像とでも言うのだろうか。


 十歳である彼は六歳の子供に対しても紳士的でスマートだった。


 そんな彼は親切にもお茶会の間、私の世話を焼いてくれたのである。

 優しいお兄ちゃんに懐いた私は、彼の婚約者となっていた。


 しかし、彼からの手紙やプレゼントは姉たちに奪われてしまう。

 子供の頃の二歳差は大きい。



「あれは……わたくしに贈って下さったものだから当然じゃない」



 これは双子の姉カタリーナの言葉である。

 オリヴェル・ケラネン伯爵令息の婚約者は私なのに、なぜか姉は自分が婚約者だと言い張るのだ。


 当然、婚約者同士の仲を深める定期的なお茶会でも、姉二人が乱入して私は追い出される事もしばしば。

 彼は女性に対してキツイ言葉を使わないので、姉はずっと誤解していたのかもしれない。



「オリヴェル・ケラネン伯爵令息と婚約を結んだのは、わたくしであってお姉様ではないですよ。婚約を結ぶ時に契約書が必要なのを知っていて? お姉様はそれにご自分の名前を記入したのかしら?」



 姉二人は誰とも婚約した事がないので、婚約の儀の事を知らないのだ。

 幼い子供の婚約といっても、契約書は公式なもの。



「そ、それは……でもケラネン伯爵令息様は優しかったわ!」


「彼は誰にでも優しいのよ。そうね……あくまでも紳士的で女性に強く言えない。でもね、お姉様は彼の名前を呼ぶ権利はあったかしら? オリヴェル様はお姉様に、ご自分の名前を呼ばれるのを断っていたわよね?」



 そこだけはオリヴェル・ケラネン伯爵令息も譲らなかった。



「ケラネン伯爵令息様は、お名前を呼ばれるのが恥ずかしかったのでは?」


「あら、わたくしは名前を呼んでいましたよ」



 そんな彼は一足先に学院へ入学していた。


 私がお茶会の後に入学すると、彼は馬車で送り迎えをしてくれたのだが、当然邪魔が入る。

 彼が私と婚約した事で学院で人気のあった人と知り合い、姉二人は有頂天になったのだろう。


 二人が追いかけ回すようになったのは言うまでもない。

 特にカタリーナが夢中になっていて、妹のカトリーナはそこまで夢中になっていなかった。


 紳士な彼は女性に対して強く言えない。そこが彼の良さでもあるが、下手に期待してしまう令嬢が出てしまうので短所でもあった。


 彼は学院での学業と領地経営を学んでいた為、たまに睡眠不足になる事もあったらしい。

 たまたま学院の中庭のベンチで転寝をしていた所、双子の姉カタリーナに偶然見つけられてしまう。カタリーナは寝ているケラネン伯爵令息にキスをしたのだ。


 それを目撃してしまった他の生徒が騒ぎ出し、その声で目を覚ましたケラネン伯爵令息は自分を責めて、学院を自主退学した後、私との婚約を白紙にしたのである。

 ケラネン伯爵家から慰謝料が届けられ、その時に彼はナーリスヴァーラ王国へ留学すると教えてくれた。


 あのまま学院にいても姉に追いかけられるのと、婚約者の姉と不貞をしたと不名誉な噂が流れていたのも、彼が他国へ留学したいという気持ちに繋がったのかもしれない。



「オリヴェル様はお姉様から逃げたかったのよ」


「嘘よ!」


「嘘じゃないわ。そもそもですが、わたくしの婚約者だったのです。それをお姉様が破談に導いた」



 六歳で婚約して、たったの十歳で婚約白紙。

 私も婚約者を姉に寝取られたという噂も流れたが、ただの雑音だとスルーしていた。

 こういうのは気にしたら負け。



「そしてーーー私が十二歳の時、生徒会の合同親睦会でダニエル様と婚約したわね」


「違うわ! クレーモラ侯爵令息様と婚約したのは、わたくしよ!」



 今度はカトリーナが反応する。

 彼女は高位貴族の嫡男にターゲットを絞っているので、次男坊の彼でも許容範囲だったのだろう。


 クレーモラ侯爵家がバックにつく、将来は伯爵当主になるのだから。


 彼とは十二歳の時に知り合い、初めて会ったにもかかわらず意気投合したのだ。私と同じく個人で事業を起こしたいと、色んな分野の勉強に励んでいて話も楽しかったのである。


 クレーモラ侯爵家から正式に婚約の打診が来た時、姉二人は母と一緒に外出をしていた。

 おそらく祖母が邪魔になるからと、三人を追い出したのだと思う。


 婚約の立ち合いはクレーモラ侯爵夫妻とダニエル様の三人。

 伯爵家は祖母と父、そして兄と私の四人。

 姉二人がいなかったので、話し合いはスムーズに終わった。



「さきほどカタリーナお姉様に言いましたが、カトリーナお姉様は婚約の契約書にサインされました? 婚約は口約束のものではなく、公式な書類に名前を記入するのですよ。それをしていないのに、なぜ自分が婚約者だと勘違いされるのか、わたくしには理解できません」



 私とダニエル・クレーモラ侯爵令息の婚約は、瞬く間に学院中に広まったのである。

 彼とは二つの年齢差で姉と同級生。


 おそらくダニエル様も令嬢の間で人気が高い令息の一人。

 異国の血を引いているのか、この国では珍しい黒髪に赤紫色の瞳を持つ知的なイケメンだった。


 最初の婚約者と違うのは、彼は相手に「NO!」と言える。

 侯爵家の令息なので迂闊に近寄る令嬢はいないが、姉二人にとってターゲットと決めた相手は猛進するのみ。


 どんなに素っ気なくされても、誘いを断られてもめげない。

 ある意味メンタルが鋼並みである。


 ダニエル様は私には紳士的で優しいけれど、他の令嬢には必要最低限に接するか、下手に期待させないような態度を取るので、そこは前の婚約者より信用していた。



「クレーモラ侯爵令息様は、言葉足らずで女性の扱いに慣れていなかったのよ」


「ダニエル様ほど饒舌な方は知りません。彼は勉強家で知的好奇心の強い方ですよ? どこを見て言葉足らずなのでしょう? それに女性の扱いに慣れていない? 侯爵家の令息が?」



 この姉の自分の都合の良い解釈の仕方は、逆に潔いのだろうか。

 彼との婚約者同士のお茶会も姉が乱入し、私が追い出される事が多かった。手紙もプレゼントも、一緒に外出する予定も悉く奪われ邪魔される。


 この姉はダニエル様に、私が作ったと嘘を言って媚薬入りのクッキーを渡したのだ。

 更に、媚薬入りのお茶まで用意していたらしい。


 学院の侯爵家以上の子女が利用するサロンで事件は起こった。


 たまたま巡回していた警備員が目撃して未遂に終わったが、伯爵家の者が家格が上の侯爵家の令息に媚薬とはいえ、薬を盛るという学院始まって以来の醜聞である。


 そして彼も学院を自主退学したのち、私との婚約を撤回して他国へ留学。

 ちなみに留学したのは鉱物産業で有名なパロヘイモ帝国である。


 ダニエル様は供用語を始め、四ヶ国が堪能だった。

 それに鉱物に興味があった事も留学先に決めた理由かもしれない。鉱物は武器やアクセサリーにもなるが、生活用品に欠かせない素材なのだ。

 

 耐久性の優れた調理器具に、馬車の車輪の留め金にも使用されている。

 邸を建築する素材や道具だったり、多種多様の物が作れるのだ。


 ダニエル様が事業を立ち上げたら取引しても良い。



「彼もまたカトリーナお姉様から逃れる為に留学したのよ」



 それに尽きる話だ。



「嘘よ! 絶対に認めないわ!」


「お姉様が認めなくても、それが事実ですわ」



 ダニエル様との婚約期間は半年も続かなかった。

 この姉たちがいる限り、私は結婚できないんじゃないかと思っていたが、こうしてクリスティアン様という素晴らしい相手と出会えたのは奇跡に違いない。



「それでーーーわたくしの婚約を二度も破談にしただけじゃ治まらず、今度は離縁をさせたいのですか?」


「破談とか離縁って……大げさね」


「大袈裟じゃないですわよ?」



 この姉たちにお灸を据える方法はないのかと、しばし考えに耽る。

 傍若無人に振舞うのも、彼女たちの友人や取り巻きが下位貴族で固まっているのが原因かもしれない。


 しかし高位貴族の集まりに参加させても良いものかーーー。


 いっその事、周りを全員高位貴族に固めて、どんな態度をするのか荒療治してみるのも悪くない。

 私がお茶会を主催すると姉二人が調子に乗るので、知り合いに頼んでお茶会に招待して貰おう。


 知らない相手だと気を悪くするので、私の知人で固めようか。



「お姉様は伯爵位がどういった立場か理解されているかしら?」


「それくらい知っているわ!」


「では、侯爵位と公爵位は?」


「公爵家の端系が侯爵位で、公爵位の始祖は王族でしょう」


「少し違うけど……意味合いは合っているかも?」



 侯爵位は伯爵家が国に貢献した度合いで格上げされて受ける場合もある。

 公爵位は始祖が王族から始まるので、後継者がいなければ国に爵位が戻って領地は王領となるが、国王になれなかった王子が爵位を継ぐという流れだ。


 貴族は血統を第一と考えるが、侯爵位以下は後継者がいなければ縁戚の子息を養子に迎える事で、家の存続は可能だ。

 しかし公爵位だけは、始祖が王族というのは覆らない。



「お姉様たちは子爵家や男爵家、準男爵と騎士爵の令嬢しか知り合いはいないから分かりにくいのかも」


「どういう意味よ」


「言葉の通りです」


「高位貴族のお茶会に誘われたら、お姉様もご自分の立場が分かるかもしれませんね」



 私は意味深な笑みを浮かべると、話は終わったとばかりに地下牢を出た。

 無駄な時間を過ごしてしまった事に後悔しつつも、知り合いに手紙を送って相手から了承を得ないと。


 ちょっとワクワクしてきたのは内緒だ。






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