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悪妻の定義とは?  作者: 尾木 愛結
本編
8/26

< 7 >

 姉から手紙が届いた日から六日後、私の予感は的中した。


 本日も執務室で事務作業をこなしつつ、公爵領での事業の構想を立てていた時、扉を叩く音に気づいて顔を上げる。



「奥様、確認してきます」



 ユリアは来訪者を確認する為に、執務室のドアを開く。

 訪れたのはアールノだった。



「奥様の予感が当たりました」


「やっぱり」



 私は自分の耳につけている魔鉱石のイヤリングに魔力を注ぎ、クリスティアン様と通話状態にしておいた。こうしておけば、こちらの状況が伝わる。


 クリスティアン様には報告済みだ。

 姉から手紙が届いた事、断りの返事を送っても、それを無視して押しかけて来るといったもの。


 私だけでは対処が難しいので、誰か助っ人がいないと姉を抑え込めない。

 会話が通じない相手は面倒臭いのだ。


 姉が感情的になったら物にも当たるし、下手をすれば手が出る。



「応接室に通したのね?」


「はい……奥様の身内ですから無下にも出来ず、申し訳ありません」


「いいのよ。実家でもそうだったから。ここには姉たちを抑え込める祖母様がいないから問題なのよ。わたくし一人だと姉たちも強気に出て簡単には引き下がらない。妹を下僕としか見ていないのよね。本当に困った姉たちで申し訳なく思っているわ」


「まったく……同感です。アールノさんは悪くないですよ。あの頭の悪い双子のお嬢様たちが礼儀知らずなんです。昔から奥様の迷惑になる事しかしないのですから」


「ユリアは本当に辛辣ね」



 三人揃って執務室を出た。

 私が使用している執務室は、クリスティアン様の執務室の隣にあるが、実は部屋同士が繋がっている。

 クリスティアン様が多忙を極めているので、隣同士で執務をした事はない。


 公爵家のプライベートエリアは三階にある。

 そこには当主と夫人用の執務室に、閲覧禁止の資料室、二階からぶち抜かれた造りの広い図書室、そして夫婦用の部屋と子供部屋に家族団らん用の部屋という並びだ。


 夫婦の部屋はとても広い。

 扉を開けると二十畳くらいの広さのリビングがある。リビングの中央にあるドアの奥に寝室があり、リビングの左右にあるドアはそれぞれの個室となっていた。


 夫人の部屋は個人用の浴室にトイレ、更にドレスを保管しているクローゼットも完備。

 当主の部屋にも個人用の浴室とトイレ、そしてクローゼットがあるので夫婦ともに同じ造りの部屋だ。


 そして寝室には二人で入れる大きさの浴室とトイレ。

 この邸へ来た日から寝室にある方の広い浴室を利用している。


 個人部屋の浴室はシャワールームみたいに狭いのだ。寝室にある浴室の浴槽は足を伸ばせるのが良い。


 子供部屋は五部屋あるが、部屋の大きさは同じようだ。

 家族団らん用の部屋はリビングと同じ用途かもしれない。まだ立ち入った事がないので、いつか子供が産まれたら使う機会があるはず。

 

 二階は主に賓客用と一般客用の客室が並んでいる。

 ほとんどここへは出入りをしないので、実は良く知らないのだ。

 魔道具と付与魔法の確認で覗き見たのみ。


 そして一階フロアは大小の応接室に、来客用のティールームとサロン。

 使用人が待機する待合室と、大小のダンスホール、そして厨房とダイニングルーム、リネン室と備品用の倉庫がある。


 こんなに広い邸なのに使用人たちの部屋がないのだ。

 使用人たちは二階から渡り廊下で続く別棟に部屋を設けている。部屋つき専属侍女とメイドは本邸内に部屋はあるが、下級メイドと呼ばれている使用人は別棟の部屋だ。


 部屋は個人部屋となっている上に、部屋の広さもそれなりに大きい。

 しかもトイレと家具付きである。


 浴室は男女別だが共同で使う。


 食事は厨房と続いている使用人専用のダイニングで済ます。

 休憩室はダイニングと兼ねているので、特に不便はなさそうだった。


 実家の伯爵邸より公爵邸は倍の大きさの建物だが、一つの部屋が広いので部屋数は変わらないかもしれない。


 そんな事を思いながら、姉が待つ応接室へ向かった。

 応接室の扉を叩いた後にドアを開く。


 そこにはカトリーナだけじゃなく、なぜかカタリーナも一緒にいた。

 一人は二人掛けのソファに座り、もう片方は一人用のソファに座っている。伯爵家よりも家格が上の公爵邸で偉そうな態度でいるのが不思議だ。


 テーブルの上には数種類の焼き菓子が乗った皿と、三人分のティーセットが乗っている。そのテーブルの横にはワゴンが置かれ、ワゴンの上にはティーポットと予備の皿などが乗っていた。



「遅いじゃない」



 私の姿を確認したカトリーナが不機嫌そうな顔を隠さずに告げる。



「ごきげんよう、お姉様たち」



 私と一緒に来たアールノは扉の前に立ち、ユリアは私の背後に立つ。



「アンタが招待してくれないから、こちらから出向く事にしたのよ」


「わざわざ来てあげたのだから感謝なさい」



 姉たちの態度にアールノが驚いている。

 さすがに表情に出していないが、いつものアールノとは違う。


 姉たちは公爵夫人に対する態度じゃない。



「それで? お断りの返事を出したのに、こうして押しかけて来るほどの用事があるのでしょうか?」


「相変わらず姉に対する態度じゃないわね」


「尊敬できるような姉なら、わたくしも敬いますが?」



 かろうじて今は伯爵令嬢の立場でいるが、今後の二人の行動で祖母から勘当される運命なのだ。



「本当に生意気ね」


「それで? 本題はないのでしょうか? わたくしこれでも忙しい身なのですよ。ただの暇つぶしに押しかけられたら迷惑なのですが?」


「わたくし達のどこを見て暇だと言うの?」


「ここに押しかけている時点で暇ですよね? わたくしは朝から午後まで執務をして、午後から備品の管理と発注、そして食事のメニューの考案。毎日スケジュールが決まっていて、余分な時間などないのです。それをいきなり押しかけてきて……お姉様たちは相手の迷惑も考えられないのですか?」



 私は一呼吸をする為に温かいお茶を飲む。

 いっきに捲し立てたら喉が渇いてしまった。



「それより、マルヴァレフト公爵様は?」



 カトリーナはクリスティアン様に会うのが目的らしい。

 カタリーナの目的は何だろう。


 この二人は似ているが、それぞれ狙う相手が違うのだ。


 姉のカタリーナは面食いで、顔が良ければ爵位が低くても構わないタイプ。

 妹のカトリーナは非常に面倒臭いタイプである。姉と同じく面食いなのは変わらないが、彼女が絶対に譲らないのは相手が高位貴族の嫡男であること。


 カトリーナは顔が良くて高位貴族の嫡男狙いなのだ。



「お姉様は他人様の旦那様に用事があるの?」


「他人じゃないわよ。妹の旦那様なのだから、わたくし達にとって義理の弟になるから身内じゃない」


「わたくしも旦那様も暇ではないと申し上げました。余程の事がない限り、旦那様は顔を出しませんよ」



 くすりと微笑を零すと、カトリーナがカッと顔を赤くする。



「そんな事より、王都の伯爵邸についてよ!」


「伯爵邸が如何なさいました?」


「誤魔化すんじゃないわよ! リューディアが嫌がらせで買い取ったのでしょう?」


「祖母様に吊り上げられましたが、なかなか良い買い物でしたわ」


 

 祖母は孫娘でも容赦なく金額を釣り上げたが、それでも祖母との商談は楽しかった。

 互いにメリットデメリットをプレゼンし合ったり、希望価格や値引き交渉も。



「あの伯爵邸を譲って欲しいの。王都に邸がないなんて肩身が狭いわ。これから社交シーズンが始まるのに、王都に邸がないと不便なのよ」



 もうすぐ社交シーズンが始まるから、二人が王都に滞在するのに邸がないと不便なのだと理解した。

 祖母に期限が設けられているから、社交シーズン中に結婚相手を探さないと厳しいのだろう。


 しかし、それは姉の問題であって、私には関係のない話だ。



「それで?」


「え?」


「あの邸を譲ってとおっしゃいましたよね? 如何ほどでわたくしから買い取るの?」


「あれはマルヴァレフト公爵様がお金を出したんじゃないの?」


「いいえ。わたくしの個人資産で支払いました」



 私は姉と違って学院を卒業してから、本格的に動き出した。

 前世の記憶を思い出して以来、ずっと事業の構想を考えていたのである。


 最初は父に相談して、この世界にない野菜を量産すること。スキルの「創造」で野菜は魔法で簡単に作り出せるが、私ありきでは意味がないのだ。


 普通の農家でも作れる野菜が理想。

 それを現実にしてくれた父には感謝しかない。


 私の提案で父は野菜の研究を始め、それを研究レポートにして宮廷へ提出。

 その研究成果で父は有名となり、国王から褒賞を頂いた。そして量産化をして販促すれば、売り上げの一部が私の懐へ入るようにーーーそれを資金に工場を建て、石鹸とシャンプーの製造を開始。


 兄も土壌の研究をしていたので、肥料についてアドバイスをした。兄は土魔法が得意だが、付与スキルを持っていなかったのである。


 痩せた土壌に栄養をもたらす肥料の材料を教えただけで、兄は自己流で万能な肥料を作り上げた。そしてそれを販売したら当たったのである。その売り上げの一部も私の懐へ。


 祖母を始めーー父兄と私は伯爵家とは別に、それぞれ事業を立ち上げているので個人資産を蓄えている。

 父だけは個人事業というより、自分の研究レポートを宮廷に提出して褒賞を得ている形だ。

 王家からの名誉と有名税は有難い。

 褒賞も莫大な金額なので全員がホクホク。

 

 母は自分の予算の余った分を貯蓄に回していそうだがーー個人事業をしていない分、とても堅実ではある。


 アールトネン伯爵家で個人資産を持っていないのは、この双子の姉二人だけだろう。

 せめて伯爵家の利になる行動が出来れば、今の状況になっていなかったはずだ。



「嘘よ! あんな大金を小娘のアンタが支払うのは不可能だわ」


「あらあら」



 私は笑みを濃くする。



「わたくしが買い物をする時、いつも自分の個人資産で買っているのよ。公爵家から出ている予算は、あくまで公爵家の為に使うのが当たり前。なぜ公爵家の利にならない伯爵邸を、わざわざ公爵家の資産で買う必要があるの? 王都の伯爵邸は、わたくしと祖母様が話し合って決めた事よ。あの伯爵邸の権利は祖母様のものであって、お父様に権利はなかったはずだわ」


「だったら! アンタの個人資産で買ったと言うなら、わたくしに邸をよこしなさい」


「なぜ?」


「アンタはわたくしの妹でしょう。妹が姉に差し出すのが道理じゃない」


「姉……ですか?」


「そうよ!」



 私はわざとらしく深いため息を零して見せる。



「お姉様、わたくしの今の立場は分かりますか?」


「なに分けの分からない事を。アンタはリューディア・アールトネン伯爵令嬢でしょう?」



 馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、姉は本当の馬鹿だった。

 アールトネン伯爵令嬢のままなら、この公爵邸で執務など出来ない。


 結婚式は挙げていないけど、公式な婚姻届けは出している。



「わたくしはリューディア・アールトネンではなく、リューディア・マルヴァレフト。この公爵家の女主人ですよ」


「どういう事よ。アンタ結婚式すら挙げていないじゃない。いくらマルヴァレフト公爵様の婚約者でも、公爵夫人って吹聴するのは止めた方が良いわよ」


「結婚式は挙げておりませんが、公式な婚姻届けは三か月前に提出済みです」



 私は姉の前に結婚指輪をかざす。



「は?」


「ーーですから、世間ではわたくしは正式に公爵夫人で通っているのです。だから最初にカトリーナお姉様へ、妹の旦那様に用事があるのですか?と尋ねたのよ。旦那様と義理の家族になったとしても、義理の姉でしかない立場のお姉様が、自分の妹の旦那様に会う理由はないですよね? 第三者に目撃されて誤解されたらどうします? もしくは旦那様が妻の姉と不貞したという噂が社交界に流れますよ?」



 まだカタリーナは信じていないようだ。

 馬鹿は頭の回転も悪い。



「先ほどからのお姉様たちの態度は、公爵夫人に対する侮辱……いえ、不敬罪かしら? これらを祖母様かお父様へ抗議文として送ったら、お姉様たちは二度と社交界へ出られないし、下手をすれば修道院? それとも爵位を剥奪されて平民落ちかしら?」



 ふふふと楽し気な笑みを零す。



「これは完全なる不敬罪だ。今すぐ謝罪の言葉を要求する」



 通話の魔道具で会話の内容を聞いていたが、我慢しきれずに来てしまったといった感じか。



「わざわざ来て下さったのね、旦那様」


「会話を聞いて居ても立っても居られなかった」



 私たち二人の会話を聞いて、姉二人がぎょっとした表情を浮かべる。



「わたくし達の会話を聞いていた?」


「どういう事?」



 急に挙動不審となった姉に、私はとても良い笑顔で答えた。



「この公爵邸はセキュリティが万全ですの。そして旦那様は不在中でも、わたくしの行動を把握していると言った方が早いわね。勿論、会話も筒抜けなのよ」


「うそ……」


「お前たちは本当に妻の姉なのか? 断りの文を返したにも拘わらず、相手の迷惑も考えずに押しかけて来る。伯爵令嬢という立場でしかないお前たちは、この公爵家の女主人に対し暴言を吐く。許しがたい行為だ」



 クリスティアン様が眉間に皺を寄せながら言葉を吐き捨てる。

 余程腹に据えかねているのか、握りしめた拳が怒りで震えていた。



「これは伯爵家に抗議文を送るだけじゃ済まされない。妻に対する不敬罪で訴えても良い案件だ」


「そ、それだけは……」


「マルヴァレフト公爵様、お許し下さいまし」


「私にではなく、妻に謝罪するのが筋だろう。お前たちは学院へ通っていないのか? 最低限の礼儀すら出来ていない」



 クリスティアン様にきつい口調で言われ、姉たちは既に涙目になっている。



「それにーー王都の伯爵邸だが、既に妻名義となっているものを取り上げようとしていたな?」


「取り上げようだなんて……」


「事実であろう? それも下らない理由で、だ。社交シーズン中が不便になると言っていたようだが、お前たちの都合など私たちには関係ない」



 クリスティアン様の視線が鋭くなる。

 ただでさえ怜悧な美貌なのに、怒りで余計に鋭さが増していく。



「わたくし達は次の社交シーズンまでに、結婚相手を見つけなければならないのです。王都に邸がなければ滞在も難しく……せめて間借りでも出来れば」


「無理ね」


「そんな冷たい事を言わないで」


「王都に伯爵邸がなくても、叔母様の家があるじゃない」



 叔母様はキーヴェリ子爵に離婚されたけど、マティアスとマリアンネは従兄妹同士なのだから、社交シーズン中の滞在は許可してくれるだろう。


 子爵邸にはマリアンネしか残っていないと聞く。

 当主の子爵様と息子のマティアスは、王宮内に用意された部屋を持っているのだ。宮廷で働いている者のほとんどは、宿舎みたいな寮に住むのが一般的である。


 しかし役職を持つと王宮内に部屋を用意して貰えるのだ。

 宿舎の部屋は二人か三人部屋なのに、王宮の部屋は完全個室となる。部屋つきの侍女か侍従も付くので、身支度から食事まで世話を焼いて貰えるのだ。


 父親と兄が王宮に住んでいるので、子爵邸に残されたマリアンネは寂しい思いをしているだろう。



「マリアンネも寂しがっているわよ」


「わたくし達は伯爵令嬢よ。子爵邸に滞在なんてイヤだわ」


「そうよ。子爵邸に滞在するくらいなら、アンタが譲歩してくれれば済む話じゃない」



 再び元気を取り戻した姉たちが、口々に不満の声を漏らす。



「いい加減に黙らないか。妻に暴言を吐くとはーーー」



 クリスティアン様も怒りが再発する。



「アールノ、サムエルとダーヴィドを呼べ。扉の向こうに控えている。それとパーヴァリを連れてくるように、マイニオに伝言を頼む」


「かしこまりました、旦那様」



 ずっと無言のままだったアールノが、恭しくお辞儀をすると応接室から姿を消した。



「公爵夫人にアンタとは、自分の立場が分からないか? 妻よりも年上のはずなのに、貴族の爵位について無知なのは恥ずべきことだ。お前たちは自分が伯爵令嬢だから、それより格下の子爵邸へ滞在するのは気に入らない。しかし、格上である公爵邸、もしくは公爵夫人が購入した別邸とも呼ぶ邸へ滞在を願うとはーーー身分不相応な上に、自分の立場を弁えない愚か者の暴言だ」


「リューディアと結婚しているなら、わたくし達とは義理の家族じゃない。身内なのだから滞在するのに理由など必要ないわ」


「そうよ。リューディアも何か言いなさいよ」



 このまま姉たちと話を続けていたら、ストレスで胃がおかしくなりそう。



「旦那様」



 護衛騎士のサムエルとダーヴィドが応接室の中へ入ってきた。



「この者たちはお帰りだ。抵抗するなら騎士団の駐在所にある牢屋にぶちこんで構わん」


「かしこまりました」


「ちょっと!」


「わたくし達は伯爵令嬢よ! そこにいるリューディアの姉なの」



 喚き散らす姉たちを素早く拘束し、応接室から去って行く。

 姉たちの姿が見えなくなるとホッとする。



「クリスティアン様、助かりました。来て下さりありがとうございます。わたくしだけでは対処が不可能で、いつも祖母様に助けて貰っていたのです」


「旦那様、あのバカ達に奥様への接触禁止を申し付けて下さいませ」



 私とユリアに言われ、クリスティアン様が険しい顔で頷いた。



「久しぶりに姉たちと対峙したせいか、精神的ストレスで胃が痛いです」


「それは大事だ」



 クリスティアン様が私をお姫様抱っこをすると、そのまま三階にある部屋へ運んだ。

 部屋まで来ると迷わず寝室へ向かう。


 私の体をそっとベッドの上に寝かせる。



「クリスティアン様」



 私は両手を広げてクリスティアン様に抱きついた。



「リューディア?」


「少しだけ不足していたクリスティアン様を補充させて下さい」



 ほんのり薫るオーデコロン。

 これはクリスティアン様の為に調合したもの。


 前世でのムスクに似たような香りを作るのは大変だったけど、私はこの香りが好きで彼につけて欲しかった。



「そんな可愛い事を言えば歯止めが利かなくなる」


「今なら止めないですよ」



 再びクリスティアン様に強く抱き着き、彼の胸に顔を埋める。


 クリスティアン様の長い指が私の顎をひと撫でしたあと、顔を上向きにさせて唇にキスを落とす。唇同士の軽い触れ合いを何度か繰り返し、徐々にそれが深いものへと変わっていく。


 私はクリスティアン様の熱と香りに包まれ、彼に身を委ねた。


 



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